コロナ禍の影響による損失発生の経理処理事例を確認

2020年3月以降のコロナ感染拡大により、各社の決算においてコロナ禍の影響による損失計上が増えています。

そして、現在においてもオミクロン株感染拡大により、まん延防止等重点措置が実施されており、その影響を受ける企業では、継続的にコロナ禍の影響による損失が計上されている状況にあります。

そこで今回は、コロナ禍の影響による損失計上の内容と経理処理について解説します。

コロナ禍の影響による損失発生について

このコロナ禍の影響による損失発生の原因ですが、大きく分けて2つの影響があります。

①コロナ感染拡大防止を目的として、政府・地方自治体が企業店舗の営業停止、イベントの開催中止を要請したことによる損失。

②コロナ感染拡大防止を目的として、工場の操業を停止・縮小したことによる損失。

上記の損失は、

・営業停止による固定費発生

・イベント中止のために直接要した費用

・工場の操業度低下による原価増加

などの臨時的な原因で発生します。

またこれらがキッカケとなり、固定資産の減損や在庫の評価損が計上される場合もあります。

実際にコロナ禍の影響により損失計上した際の内容ですが、昨年度の調査では次のようになっております。

(2021年3月期 有価証券報告書提出会社の状況)

・操業、営業停止中の固定費等の損失計上 181件
・固定資産の減損損失計上 80件
・期末在庫評価 4件
・構造改革による損失 8件
・その他 15件

出典:EY新日本有限責任監査法人:第11回:新型コロナウイルス感染症に関する特別損失より

そして、圧倒的に多いのが、操業、営業停止中の固定費等の損失計上となっております。

こうしたコロナ禍の影響による臨時的な損失ですが、経理処理上「特別損失」として計上が認められおり、実際に特別損失として計上している企業が多くあります。

コロナ禍の影響による臨時的な損失の経理処理

このコロナ禍の影響による臨時的な損失ですが、各社ではどのように経理処理されているのでしょうか。

損失金額の大小によって処理方法が変わってきますが、各社において金額的重要性が高い場合は「特別損失」として計上している事例が多くみられます。

また、特別損失として計上する科目名については、各社の事情に合わせた名称が付されている状況にあります。

コロナ禍の影響による臨時的な特別損失の事例

ここでは、各社が行ったコロナ禍の影響による臨時的な損失の経理処理方法を確認していきます。

今回のコロナ禍による臨時的損失について、多くの企業では「新型コロナ」や「感染症」といった言葉を用いた勘定科目を使って特別損失を計上しているようです。

例えば、

・新型コロナウイルス感染症による損失
・新型感染症対応による損失
・新型コロナウイルス感染症による操業停止に伴う損失

などといったように、一目でコロナ禍の影響による損失だということがわかるような勘定科目の名称を使用しています。

ただし、特殊な勘定科目であるので、会計システムや決算開示システム上で、新たに勘定科目を設定・登録するといった作業が必要となります。

※上場企業では決算開示を行う際、開示用のシステムに、英語表記も含めた勘定科目設定しなければなりません。

「新型コロナ」や「感染症」といった言葉を使わない特別損失の事例

「新型コロナ」や「感染症」といった言葉を使わないで、コロナ禍による影響の損失を計上している企業もあります。

例えば、

・公演中止損失
・災害による損失
・臨時休業による損失
などといった、勘定科目の名称を使用しています。
しかしこの場合、コロナ禍の影響による損失かどうかがよくわかりません。

その代わりに、損益計算書関係の注記に「新型コロナに係る損失であることを記載する」といった場合が多く、この注記によりコロナ禍の影響による臨時的な損失であることを明示しています。

コロナ禍の影響による損失を、営業外損失で計上している事例

コロナ禍による損失について、特別損失として計上せず、営業外損失で計上している事例もあります。

その理由としては、

・金額が大きくない(金額的重要性が高くない)
・コロナ関連の給付金が営業外収入で計上されているので、それに合わせて営業外費用計上としている
・コロナ禍による損失ではなく、コロナを予防する費用であるため

などといった理由により、営業外損失で計上している事例もあります。

このように、コロナ禍の影響による損失でも、各社において内容が異なっています。

損失の内容次第では、営業外損失への計上が適当であるという場合もありえますので、損失の計上については事前に監査人など関係者と確認する必要があります。

まとめ

今回は、コロナ禍の影響で発生した損失で、営業ができなかった場合の損失処理方法について、事例を用いて解説してきました。

今後もコロナ禍の影響は継続することが見込まれ、その影響を受ける企業では引き続きコロナ禍による損失計上も必要と思われます。

そして、実際に自社でコロナ禍の影響で損失が発生した場合、他社事例も確認しながら、監査人と調整のうえ経理処理をどうするか検討しなければなりません。

実際にコロナ禍の影響による損失が発生している場合には、今回の記事でご紹介した具体的事例も参考に、経理処理を検討していただければと思います。

執筆者情報/経理部IS
数十年間、上場企業とその子会社で経理業務に従事している現役経理マン
転職6回・複数の上場企業での中途採用経験も活かし、経理の転職エージェントを紹介するサイトを運営中

ブログ名:経理の転職エージェント比較専門サイト:https://www.keiri-jobchange-agent.com/

 

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