持続化給付金と雇用調整助成金の収益を計上する方法

今回のコロナ禍において、国からさまざまな手当の支援が行われました。

その中でも、

持続化給付金
雇用調整助成金

についての申請をされる企業が多くありました。

この持続化給付金と雇用調整助成金は、収益として認識する必要がありますが、経理処理上注意すべき点がいくつかあります。

そこで今回は、持続化給付金と雇用調整助成金の収益計上の経理処理方法について解説していきます。

持続化給付金の内容と収益計上について

持続化給付金とは、

コロナ感染症拡大により、営業自粛等で大きな影響を受ける事業者に対して、事業の継続や再起のために支給される給付金です。

事業全般に広く使える給付金であるのが特徴です。

この持続化給付金の支給対象法人ですが、

資本金の額又は出資の総額が10億円未満

資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、常時使用する従業員の数が2,000人以下

といった制限が設けられています。

なお、この持続化給付金ですが、現時点では新規受け付けが終了しています。

代わりに、新たな給付制度として、中堅・中小・小規模事業者・フリーランスを含む個人事業主を対象に、コロナの影響を受けた事業の継続・回復を支援することを目的とした「事業復活支援金」制度の申請受付が開始されています。

「事業復活支援金」については、こちらで詳しく解説していますので、参考にしてください。

⇒事業復活支援金ポータルサイト(※1月31日より申請受付開始)

持続化給付金の収益計上時期とその経理処理方法

持続化給付金を計上するにあたって注意すべき点は、その計上時期と経理処理方法です。

①収益計上時期

持続化給付金の収益計上時期ですが、「支給決定日」の属する事業年度となります。

一般的な給付金の収益計上の時期は、あらかじめ「経費支出の補填」を目的に給付された給付金であるかどうかで、計上時期が異なります。

例えば、「休業手当、賃金、職業訓練費等の経費を補填するため給付金」は、給付の原因の事実があった日の属する事業年度で収益計上することが原則です。
(法人税法基本通達2-1-42を参照)

しかし、今回の持続化給付金は、

事業の継続や再起のために支給される給付金

であり、「経費支出の補填」を目的に給付された給付金ではありません。

このため、持続化給付金は、給付の原因の事実といったことを考えず、

「支給決定日」に収益計上すればよいことになります。

なお、実際には支給決定の通知書が届く前に、持続化給付金の入金がなされることが多いようです。

実態としては、入金=支給が決定していると言えますので、入金時に収益計上しても問題はないと考えられます。

②経理処理について

一般的には「雑収入」の勘定科目で計上することで問題ありません。

なお、持続化給付金は、サービスの提供や商品販売等の対価として支払われるものではないため、消費税は課税対象外です。

法人税法の扱いについて

雑収入である持続化給付金は、法人税法上の益金として取り扱われます。

法人税法上、持続化給付金は課税の対象となります。

雇用調整助成金の内容と収益計上について

雇用調整助成金とは、

コロナ等により、企業が事情により事業を縮小せざる得なくなり、一時的に従業員を休業させて休業手当を支払った場合に、その手当の一部を国が補助するもの

といった趣旨の助成金です。

なお、雇用調整助成金を受けられる金額は、大企業と中小企業で異なります。

さらに、期間による違いや、地域特例や業況特例などがあり、随時助成の金額が変更となっておりますので、厚生労働省のホームページなどで最新情報を確認してください。

雇用調整助成金の収益計上時期とその経理処理方法

雇用調整助成金の計上は、持続化給付金同様、計上時期と経理処理方法に注意してください。

①収益計上時期

持続化給付金は、賃金負担額に一定の割合を乗じた額を助成するとして、経費を補填する性格を有しています。

こうした休業手当、賃金、職業訓練費等の経費を補填するための助成金は、給付原因の事実があった日の属する事業年度において収益計上することになります。
(法人税法基本通達2-1-42を参照)

しかし、今回の雇用調整助成金は、特例措置により事前の休業等計画届の提出が不要とされているとの理由から、原則として交付決定があった日の属する事業年度に収益計上することになります。

一方、

・すでに雇用調整助成金の交付申請を行い、

・助成金の交付を受けることが確実で、

・経費が発生した日の属する事業年度に会計上収益計上しているときは、

税務上も経費が発生した事業年度に収益として計上してよいとされています。

具体的な処理については、以下の図解を用いて説明します。

出典:国税庁ホームページより

この事例では、雇用調整助成金を受給するする原因となった経費(休業手当)が11/1に発生しています。

それに合わせて、すでに雇用調整助成金の交付申請を行い、交付を受けることが確実で、受給される金額が確定している場合は、経費が発生した事業年度(この例では12/31)において助成金を収益計上しています。

なお、収益計上時には未だ入金がないため、一旦未収金を計上をし、翌事業年度に入金された際に未収金を取り崩すという処理を行います。

今回のコロナ禍における雇用調整助成金の収益計上時期をまとめますと、

・特例措置により事前の休業等計画届の提出が不要とされているとの理由から、原則として交付決定があった日の属する事業年度に収益計上

・ただし、すでに雇用調整助成金の交付申請を行い、助成金の交付を受けることが確実で、経費が発生した日の属する事業年度に会計上収益計上しているときは、その時期に収益計上が認められる

といったように、収益計上時期をどちらで行うべきかの確認が必要となります。

②経理処理について

経理処理は、持続化給付金と同様に「雑収入」の勘定科目で計上することで問題ありません。

なお、雇用調整助成金は補助金・助成金であるため、消費税は課税対象外です。

③法人税法の扱いについて

雑収入である雇用調整助成金は、法人税法上の益金として取り扱われます。

そして法人税法上は課税の対象となります。

まとめ

今回は、コロナ禍対応として「持続化給付金」と「雇用調整助成金の収益計上方法」について解説しました。

オミクロン株の拡大に伴い、まだまだ油断できない状況が続いております。

この影響によって事業活動が縮小せざるを得ない企業にとっては給付金・助成金の受給は必要不可欠なものとなっています。

そして給付金・助成金の受給の際には、収益として計上する時期、経理処理方法、法人税法での扱いなどを理解していないと、処理を間違ってしまう場合もありますので、十分注意してください。

 

執筆者情報/経理部IS
数十年間、上場企業とその子会社で経理業務に従事している現役経理マン
転職6回・複数の上場企業での中途採用経験も活かし、経理の転職エージェントを紹介するサイトを運営中

ブログ名:経理の転職エージェント比較専門サイト:https://www.keiri-jobchange-agent.com/

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