予算管理は正しい経営判断を下すうえで欠かすことのできないものです。しかし、実際にどのようなことをしているのかは、予算管理に携わったことのない方にとってはイメージしづらい業務でしょう。
本記事では予算管理とは何か、予算とは何かについて解説します。合わせて、予算の作成方法や予算作成時の注意点についても解説していきますので「予算管理って何?」と疑問に感じていらっしゃる方はぜひ参考にしてください。
予算管理とは
予算管理とは、企業の予算を作成・分析し経営に生かしていくことです。予算管理は「予算の作成」と「予実の分析」という二つの側面を持っています。
予算を作成する(Plan)→実行する(Do)→予実分析を行う(Check)→改善を行う(Action)
このようにPDCAを回し、予実分析により判明した改善点を次回の予算作成に折り込んでいきます。PDCAを繰り返すことによってより高い精度の予算の作成が可能となるのです。
予算は最低1年に一度は作成されます。四半期決算や半期決算を行っている会社では、それぞれの決算に合わせて予算の見直しを再度行い、予算精度を高めていきます。
予算は経営管理上重要な情報となるものです。そのため、予算の作成には高い精度が求められます。より実績に近い予算を元に今後の経営計画を立てた方が、より実態に即した対応が可能だからです。
予算って何?
予算管理の対象となっている「予算」とは、企業があらかじめ定めた数値目標のこと。具体的にはこのような事柄が該当します。
- 10月は〇百万円売り上げることが目標
- 商品の原価は〇百万円までに抑えたい
- 交際費は月額〇万円を目指そう
- 10月の利益は〇百万円欲しい
予算には大きく分けて4つの種類があります。売上高予算・原価予算・経費予算・利益予算です。
売上高予算:売上目標となるもの
原価予算:商品やサービスの原価がいくら必要か・いくらに収めたいかという目標
経費予算:企業に関わる費用がいくら必要か・いくらに収めたいかという目標
利益予算:利益目標となるもの
上記の例ではそれぞれこのような予算に該当しています。
- 10月は〇百万円売り上げることが目標→売上高予算
- 商品の原価は〇百万円までに抑えたい→原価予算
- 交際費は月額〇万円を目指そう→経費予算
- 10月の利益は〇百万円欲しい→利益予算
予算作成の2つの方法
予算の作成方法は2つあります。一つ目は企業に属する各人が主体となり部門単位で予算を作成していく方法。2つ目は、企業の経営者が利益予算や売上予算を決め、それに合わせるように他の予算を組んでいく方法です。
個人・部門単位で作成する(ボトムアップ型)
個人単位または部門単位など小規模な単位で予算を作成し、その小規模な予算をすべて合算することで企業全体の予算とする作成方法です。
小規模な単位で従業員が予算を作成していくため、より現場からみた実績に則した予算が出来上がります。
その反面、予算作成者ごとに作成に癖が出たり、全社予算を作る作業が煩雑であったりするといったデメリットもあります。
社長・経営陣が目標を決める(トップダウン型)
社長や経営陣といったトップが利益目標や売上目標などを決め、それに合わせる形で他の予算を決めていく方法です。
トップの目標がダイレクトに予算に反映されるため、高い理想のもとに予算を作成してしまうと、実績と大きく乖離した予算になってしまう危険性をはらんでいます。
しかし「なぜその目標なのか」といった意思統一が全社で図れている場合には、組織として高い一体感を生み出せるメリットもあります。
予算作成時に注意すべきポイント
予算を作るときには「季節要因を加味する」「算出根拠を明確にする」という2つのポイントに注意しましょう。
季節によって変動する要因も組み込むこと
予算の中には季節要因の影響を受けるものがあります。
例えば豪雪地帯に工場や研究所があるとすると、気温の下がる冬の季節には光熱費が上がってしまうでしょう。また、中国から部品を仕入れている場合には、中国の旧正月になると仕入が止まってしまいます。そのためその月の原価は低くなり、代わりに他の月の原価が増すことになるでしょう。
このような季節要因を加味せずに予算を作ってしまうと、実績との乖離が大きくなってしまいます。毎年季節によって左右される要因があるのであれば、あらかじめ予算に盛り込んでおくようにしましょう。
数値の算出根拠をはっきりさせること
予算を作成する際には「何を根拠にその予算にしたのか」が重要なポイントになってきます。例えば出張の予算を立てる場合、これらの金額を調べなければなりません。
- 出発地点から出張先への交通費
- 社内規程に沿った宿泊費
- 社内規程に沿った日当
交通費はネットで調べて実績に近い金額を利用する、宿泊費や日当は社内規程で正確な金額を調べるなど、予算の元となった数値の根拠を明確にしなければ、精度の高い予算は作成できません。
上の例えでみてみると、飛行機代は多分1万円くらいだろう、宿泊費は8,000円くらいかなと担当者の予測で予算を決めてしまったところ、実際には飛行機代5万円、宿泊費は7,000円だったというケースも大いにあり得ます。
今回はわかりやすくするため出張の費用という小さな単位で算出根拠についてみていきましたが、これはすべての予算作成においていえることです。
原価や売上高を決める場合にも「なぜその予算にしたのか」という根拠は明確なものでなければなりません。「なんとなく」「多分このくらい」といった勘で予算の作成はできないのです。
明確な根拠に基づいて予算を作成しなければ実績と乖離した数値になってしまい、経営管理にまったく役立たない予算が出来上がってしまうでしょう。
まとめ
予算管理とは、企業の予算を作成・分析し経営に生かしていくこと。予算管理のPDCAを繰り返していくことで、より精度の高い予算作成を目指していきます。
予算の作成方法にはボトムアップ型とトップダウン型の2種類があります。どちらの方法にもメリット・デメリットがありますので、実際の作成方法を検討する際にはその点理解しておきましょう。
また、予算の作成には季節によって変動する事柄を組み込む必要があります。その方がより実績に則した予算が完成するからです。
同じ理由で、作成する予算の根拠は明確に示すようにしましょう。実態や前年実績から実績に近くなるであろう数値を導き出し、予算を作成してください。
精度の高い予算は、経営判断を下す上で重要な判断材料となるでしょう。