2022年改正電子帳簿保存法|具体的な対応実例【大企業編】

令和3年度(2021年度)の税制改正により、電子帳簿保存法の見直しが行われました。

この改正で、各社が喫緊の対応が必要なのが、電子取引データの保存対応かと思われます。

これまでは、電子取引データを出力して書面等で保存することが可能でしたが、今回の改正により紙での保存が認められなくなります。

さらに、電子取引データは、一定の保存要件に従って保存しなければならないことにも留意する必要があります。

加えて、取引データについて電子での保存を選択した者に限られず、基本すべての会社が対象となるため、非常に重要度が高い改正となっています。

そこで今回は、電子帳簿保存法の改正の中でも、電子取引データの対応についてスポットを当てて、大企業の対応事例なども交えて、詳しく解説していきます。

各社においては、他社動向を踏まえながら、手探りの状況で対応を進められているかと思います。

今回ご紹介する事例も参考にしながら、電子帳簿保存法の電子取引データの保存方法について、検討を進めましょう。

電子帳簿保存法の改正

電子帳簿保存法では、税法により書面で保存が義務付けられている帳簿や書類を、データで保存する場合の「システムの要件」や「保存要件」を定めています。

また、電子で授受する取引データの保存義務を定めた法律でもあります。

この法律について、令和3年度(2021年度)の税制改正において、大きな見直しが行われました。

見直しの中でも、「国税関係帳簿書類の特例の要件緩和」「電子取引の保存義務」については、各社の経理実務にも大きな影響を与えるものとなっています。

国税関係帳簿書類の特例の要件緩和

以前は、国税関係帳簿書類を電子データで保存する場合、所轄税務署長の事前承認が必要でしたが、これが不要となりました。

これにより、要件さえ満たせばすぐに電子データを保存することができるようになります。

また、以前は要件が厳しかったスキャナ保存についても、要件が緩和され、国税関係の帳簿書類の電子化がしやすい状況になっています。

電子取引の保存義務

一方、今回の改正で問題となっているのが、電子取引の保存義務化です。

これは、電子取引に該当するものはすべて一定の保存要件に従って、電子でデータを保存することが義務付けらるというものです。

さらに届出など関係なく、基本すべての法人が対象となっている点にも注意が必要です。

この改正は、令和4年(2022年)1月1日以降に発生する、電子取引データから保存の義務が発生することになります。

電子データ保存の対象書類と対象法令

ここでは、電子帳簿保存法の対象書類となる電子データを確認していきます。

電子帳簿保存法の対象となる書類は、次の4つに分けることができます。

1.国税関係帳簿

2.国税関係書類

3.国税関係書類スキャナ保存

4.電子取引データ

1.国税関係帳簿

これは、経理業務で発生する、仕訳帳、総勘定元帳、各種台帳といった帳簿が該当します。

(電帳法第4条1項で規定されています)

実際は、会計システムで出力できる帳簿で、既に電子保存対象とされている会社も多いと思われます。

2.国税関係書類

これは、貸借対照表や損益計算書といった決算書類が該当します。また、自社の請求書や領収書の控えなどを電子化している場合もこれに含まれます。

(電帳法第4条2項で規定されています)

3.国税関係書類スキャナ保存

これは、紙で保存している自社の請求書や領収書控えや、取引先から受領した紙の請求書や領収書をスキャナで読み込み保存する場合が該当します。

(電帳法第4条3項で規定されています)

4.電子取引データ

これは、最初から電子データとしてやり取りしているもの(例えば、EDIデータ、FAX、電子メールなど)が該当します。

紙がなく、電子データだけでやり取りされているものであれば、請求書や領収書もこの電子取引に該当します。

(電帳法第7条で規定されています)

今回の改正では、この電子取引データを一定の要件に従い、すべて保存をしなければならないというのが、最大の目玉であり、各社が対応に悩んでいるというのが実情です。

保存が必要な電子取引の範囲

電子取引データ保存の対象書類の中でも、各社で悩まれているのが電子取引データの範囲についてです。

電子取引データといっても、実際のところ、どこまでを電子取引データとするのか疑問に思う方も多いようです。

結論をいうと、見積りや納品、発注、請求に関する取引内容が記載されているデータはすべて電子取引データということになります。

一般的な電子取引データの事例では、

・EDI取引データ

・FAX

・電子メール

などが挙げられています。

EDI取引データとは、電子データ交換という意味であり、ネットワーク経由で取引先と、発注書、納品書、請求書などの書類を電子的に交換するものです。

FAXと言えば、紙を想像するかもしれませんが、現在はFAXで送信されたデータがそのまま、PDFなどのデータに変換されて自動保存される場合もあります。(ペーパレスFAX)

このようなFAXを使って発注したり、見積りを出す場合、このFAXは電子取引データに該当します。

また、電子メールの添付ファイルで請求書や発注書、見積書などをやり取りしている場合、そのファイルも電子取引データとなります。

さらには、

・インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引
(各社のホームページにアクセスして、請求書データをダウンロードするなど)・電子メールやLINE、その他SNSを使った、発注や見積りといった取引

これらも電子取引に該当し、そこで発生するデータはすべて電子取引データに該当することになります。

電子取引データについては、国税庁が公表している「電子帳簿保存法Q&A~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~」でも解説されていますが、思っている以上に電子取引データの範囲が広くなる可能性がある、ということを認識しておく必要があります。

電子取引のデータ保存要件

今回の改正の目玉ともいえる、電子取引のデータ保存ですが、保存に関して一定の要件が定められています。

その要件には、複数の要件から選択できる「選択的保存要件」と、必ず従わなければならない「必須的保存要件」があります。

選択的保存要件

選択的保存要件とは、次の4つのいずれかを選択して、電子データを保存するということです。

①タイムスタンプ付与済みのデータを受領

②電子取引データ受領後にタイムスタンプを付与する

③電子取引データの訂正や削除ができないシステムを利用して、電子データを保存する

④電子取引データの訂正や削除に関する事務処理規程を備え付けし、社内で運用する

実務上は、すべての取引データについて①の「タイムスタンプ付与済みデータを受領」することは難しいかもしれません。

また、②の「タイプスタンプを付与する方法」も、既にシステム導入がされていて運用が構築されていない限りは、すぐに対応することは厳しいと思われます。

よって、直近で対応ができそうなのが③の「取引データの訂正や削除ができないシステムの利用」、または④の「取引データの訂正や削除に関する事務処理規程を制定し、それを運用していく方法」を選択するのが現実的と思われます。

必須的保存要件

必須的保存要件とは、次の3つの要件をすべて満たして、電子データを保存しなければならないということです。

①関係書類の備え付け

②見読可能性の確保

③検索機能の確保

①の「関係書類の備え付け」とは、電子データ保存のシステムの概要書やマニュアルを準備しておくということです。

②の「見読可能性の確保」とは、パソコンのディスプレイや印刷していつでもデータを見ることができるようにしておくということです。

③の「検索機能の確保」とは、電子取引データを「取引先」、「取引年月日」、「金額」といった3つの項目から、いつでも検索できるようにしておくというものです。

実務上で悩むのが、おそらく③の「検索機能の確保」ではないかと思われます。

電子取引データに、この3つの項目が付与されているなら問題ありません。

しかし、すべての電子取引データに、最初からこの3つの項目が付与されているようなことは稀です。

(例えば、PDFで受領した請求書ファイル名に、この3つの項目のデータが付与されており、ファイル名検索ができる状態にしておくなどの対応は難しい)

やはり今回の改正での一番の悩みどころは、検索機能の確保となりそうです。

これに対処する方法としては、新たに検索できるシステムを導入する、ファイル名を工夫して検索できるようにするなどの方法が考えられます。

各社それぞれの実情に応じて、検索方法を検討する必要があります。

電子取引データ保存の運用方法

電子取引データの運用方法で一番重要なのが、必須的条件となっている「検索機能の確保」です。

この検索機能をどうするかで、運用方法も大きく変わってきます。

運用方法としては、

・検索機能が付与されている、電子取引データファイル管理ツールを導入

・電子取引データファイルを検索できるよう、エクセルで台帳管理する

といったことが、直近での対応策と考えられます。

電子取引データファイルの管理ツールについては、市販のパッケージソフトやクラウドサービスなどのツールを活用し、そのツールに合わせて、自社の運用を構築していきます。

ツールを利用すれば、手作業によるファイルの管理作業も減るでしょう。

一方、電子取引データなど月数件くらいしかないような場合(得意先は紙でのやり取りがほとんど)については、電子取引データのファイルを、ファイルサーバーの決められた箇所に保存して管理するのが良いでしょう。

そして保存したファイルの内容を、エクセルで作成した管理台帳に、都度入力しておくことで、エクセルの台帳で検索が可能となります。

電子取引データファイルの発生件数によって、ツールを導入するか、エクセルなどで台帳管理するか、各社の実情に合わせた運用方法を検討していく必要があります。

電子取引データ範囲に関する運用事例

電子取引データの範囲については、EDI取引データ、FAX、電子メールなどが一般事例として取り上げられています。

その他には、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引や、LINE、その他SNSを使った、発注や見積りといった取引なども電子取引の範囲に含まれると考えられます。

今回の電子帳簿保存法の改正では、このような電子取引データがすべて対象範囲となります。

しかしながら、令和4年(2022年)1月1日から適用という準備期間が短い中において、適用となる電子取引データすべてを一定の条件に従って管理保存することは、極めて困難と考えられます。

すでにあらゆる帳票類の電子化を進め、ほぼ完ぺきなペーパーレスを実現しているような、会社も一部あるようですが、実際のところそこまで進んでる会社は少ないでしょう。

今回の改正による電子取引データの保存は会社規模の大小にかかわらず、基本すべての会社が対応しなければなりません。

そうした中、特に取引数が多い大企業はどのように電子取引データの範囲を決めて、運用を行うのか気になるところです。

大企業においては、相当数の電子取引データが日々発生していますが、これを今回の改正に合わせてすべて管理保存することは困難です。

そのため、特に重要と考える電子取引データに範囲を絞って、対応するところもあると考えられます。

例えば、電子メールに添付されている、各社の様式で発行される請求書や見積書などは電子取引データとする。
一方、担当者間でやり取りされるメールやSNSを利用した、簡便的な連絡手段での取引は除く。

といったように、各社で一定のルールを決めて、電子取引データの管理保存をすることも検討しておいた方がいいでしょう。

※特に営業担当とその得意先の担当者間でやり取りされている、メールやSNSのデータをすべて電子取引データとして管理するには、現実的にかなり厳しいと思われます。

すでにこうした電子取引データを管理できるシステムが導入されていれば別ですが、一般的にはそうした対応をされている会社は少ないでしょう。

だからと言ってそのまま放置しておくことは問題です。

可能であれば、メールやSNSなどの電子取引データも管理できるよう、今後の課題として、検討を継続していくことをオススメします。

今回の改正では、電子取引データの管理保存は必須ですが、それぞれ各社の実情に合わせて電子取引データの範囲を決めて運用することを検討するのも、1つの手段だと思われます。

電子取引データの保存方法事例

電子取引データの保存については、

①検索機能が付与されている、電子取引データファイルの管理ツールを導入

②電子取引データファイルを検索できるよう、エクセルで台帳管理する

といったことが考えられます(詳細は、上述している電子取引データ保存の運用方法をご参照ください)

この電子取引データの保存についても、各社の実情に合わせて運用を決定する必要があります。

中小企業で電子取引データの発生自体が少ない場合は、②方法を採用し、電子取引データをファイルサーバーなどに保存して、エクセル台帳でファイル管理すれば対応可能と考えられます。

一方、大企業で多数の電子取引データが発生するような場合は、エクセル台帳でデータをすべて管理するのは困難かと思われます。

部署数が多く、各部署で電子取引データを処理しているような場合は、データを一元管理するためにも、①のように新たにツールなどを導入して、より管理しやすい環境を構築する必要もあります。

電子取引データを管理するようなツールは、本格的なものは相当高額な投資金額となってしまう可能性もありますが、直近の改正に対応する場合は、数百万円程度のツールを導入することでの対応も可能でしょう。

いずれにせよ、令和4年(2022年)1月1日から対応しなければならないという、準備期間が短い中において、対応可能な現実的な電子取引データの保存方法の検討が必要です。

まとめ

今回は、令和3年度(2021年度)の税制改正により見直された、電子帳簿保存法についての内容と、それに対応するための運用方法について解説してきました。

電子帳簿保存法改正での大きな注目点は、やはり「電子取引の保存義務化」です。

これに対し、各社はそれぞれの実情に即した対応が求められます。

特に、電子取引データが多く発生している大企業は、社内において一定の運用ルールを定めるなどして、短期間での導入準備ができるよう工夫されているところもあるようです。

これからは、大企業・中小企業に関わらず、準備期間が短い状況を考慮して、令和4年(2022年)1月1日からの適用に向けの、現実的な対応が求められます。

執筆者情報/経理部IS
数十年間、上場企業とその子会社で経理業務に従事。
転職6回・複数の上場企業での経験を活かし、経理の転職エージェントを紹介するサイトを運営中

ブログ名:経理の転職エージェント比較専門サイト:https://www.keiri-jobchange-agent.com/

 

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