企業が一定のルールに沿って行っている会計のことを企業会計と呼びます。この企業会計は企業会計原則に基づいて行われています。本記事では企業会計の目的と種類、そして企業会計の根幹となる企業会計原則について解説していきます。
企業会計の目的と種類
企業会計とは企業において実施される会計のこと。企業は一定のルールに則って経営活動を記録し利害関係者に開示すると同時に、自社の経営改善のために会計情報の分析を行います。
財務会計と管理会計
企業会計は目的ごとに「財務会計」と「管理会計」の2つの種類に分けられます。
財務会計:社外の利害関係者に経営状態を開示する目的で行われる会計
管理会計:会社を管理する目的で行われる会計
財務会計では会社法や金融商品取引法に則った会計処理を行い、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を作成します。財務諸表を投資家や税務署、金融機関に開示し利害関係者に自社の経営状況を伝えます。
一方、管理会計は会社の内部の人間に向けて行われる会計です。予実管理や原価管理を行い問題点や改善点を見つけ、経営改善につなげていきます。
財務会計・管理会計についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
企業会計の仕組みと企業会計原則
企業会計は「企業会計原則」に則って行われます。企業会計原則とは長年日本で会計の基準として守られてきた慣習のこと。企業規模に関わらず、企業会計原則はどこの会社でも遵守すべき原則です。すべての企業で同じ原則に従って会計処理を行うことで、会計処理の公平性を保っています。
企業会計原則には一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則があります。中でも特に重要視されているのは一般原則の下記7つです。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本取引・損益取引区分の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
1.真実性の原則
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。
ここでは適切な会計基準に則って会計処理を行い、不正や間違いのない会計情報を報告することが求めらています。
会計処理には複数の処理方法が認められている場合があります。例えば減価償却では定額法と定率法の二つの処理方法があり、そのとちらもが正しい会計処理として認められています。
定額法・定率法のどちらを選ぶかで会計処理すべき金額は変わってきますが、どちらも適切な会計処理であると認められているものであるため、どちらの処理方法を選択しても「真実な」報告として認められます。
2.正規の簿記の原則
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
正規の簿記の原則では下記3つの要件を満たした会計処理を行うことが求められています。
- 網羅性:企業の経済活動のすべてが網羅的に記録されていること
- 立証性:会計記録が検証可能な証拠資料に基づいていること
- 秩序性:すべての会計記録が継続的・組織的に行われていること
複式簿記はこれらの要件を満たしています。そのため複式簿記を行うことで正規の簿記の原則を守っていると解釈できます。
3.資本取引・損益取引区分の原則
資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。
資本取引とは増資や減資など会社の資本を増減させる取引を指します。一方、損益取引とは費用や売上の発生など資本取引以外の取引のことです。資本取引・損益取引区分の原則では、仕訳計上の際にこの2つの取引内容を明確にして仕訳を計上することが義務付けられています。
合わせて、資本取引・損益取引区分の原則では資本剰余金と利益剰余金を明確に区分することも求められています。
4.明瞭性の原則
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。
明瞭性の原則とは、利害関係者に誤った判断をさせないような財務諸表を作成しなければならないという内容です。総額表示を行ったり分かりやすい勘定科目を使用したりして、利害関係者にとって見やすい財務諸表を作成する必要があります。
また、財務諸表の内容だけでは不足していると考えられる場合には、注記や付属明細表を作成しなければなりません。
5.継続性の原則
企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
勘定科目の選択や減価償却の方法など、選択肢のある会計処理を行う場合に一度決めた会計処理をみだりに変更してはならないとする原則です。
例えば同じ内容に対する支払いでも、毎期勘定科目が変更されていては、本当は何の勘定科目に計上すべき費用なのかわからなくなってしまいますよね。このような事態を防ぎ、利害関係者が財務諸表の比較を毎期継続して行えるようにする原則です。
6.保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。
保守主義の原則では取引先の倒産など自社に不利な影響を及ぼす可能性に備えて保守的に準備をしておくことが求められています。例えば貸倒引当金の計上が該当します。
7.単一性の原則
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。
単一性の原則では目的ごとに財務諸表の数値を変更しないことと定められています。投資家にみせる利益は多く、税務署にみせる利益は少なくするなど意図的に会計記録を変え真実をゆがめる行為は禁止されています。
まとめ
企業会計には管理会計と財務会計の2つの種類があり、それぞれ会計を行う目的が異なっています。管理会計は会計情報を分析し経営改善につなげる目的で行われます。一方、財務会計は利害関係者に経営状態を伝えるために行われる会計です。
企業会計は企業会計原則に従って行わなければなりません。企業会計原則とは、日本で長年守られている会計の慣習のようなもの。どの企業でもこの企業会計原則に基づいて会計処理を行う必要があります。
企業会計原則の中で特に大事な原則は下記7つです。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本取引・損益取引区分の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
これらを遵守した企業会計を行うよう心掛けましょう。