会計には管理会計と財務会計の2つの種類があります。管理会計は内部向けの会計、財務会計は外部向けの会計といわれています。
本記事では管理会計・財務会計のそれぞれの目的と機能について、また管理会計と財務会計の違いについて解説します。あわせて管理会計を導入するメリットについてもみていきましょう。
管理会計の目的と機能
管理会計は会社を管理する目的で行われる会計です。経営者や管理職など会社の人に向けて会計情報を発信します。管理会計には予実管理と原価計算の2つの機能があります。
予実管理:予算と実績を比較し、差異から今後の対策を立てます。どうしてその差異が発生したのか・しなかったのかを分析し、改善点を探していきます。
原価計算:達成したい原価と実際の原価を比較し、改善点を探していきます。どこを改善すれば目標とする原価に届くのか分析します。
管理会計はこれら2つの情報を社内に向けて発信し、経営状態を改善するために行われる会計です。
法律で会計処理の方法が決まっている財務会計とは違い、管理会計には法的な決まりはありません。あくまで「社内向け」の会計であるため、どのように処理を行うのか会社で自由に決めることができます。
また、管理会計を行うかどうかの判断も会社に任されており、小規模な企業や設立したばかりの企業では行われていない場合もあります。
財務会計の目的と機能
財務会計は社外の利害関係者に向けて行われる会計です。株主や税務署、取引先へ向けて会計情報を発信する目的で行われます。
管理会計とは違い、財務会計はどこの会社でも必ず行わなければならない会計です。処理方法も法律で決められており、会社で自由に変更することはできません。「会計」と聞いて多くの方が思い浮かべるのはこちらの財務会計でしょう。
財務会計では会社法や金融商品取引法に則った会計処理を行い、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を作成します。この財務諸表は税金の算出元になったり、金融機関や投資家の判断材料になったりします。このように財務諸表を公開することで財務会計は外部への情報公開の機能を果たしているのです。
財務会計の機能はもう一つあります。財務諸表を外部に公開することで利害調整機能が働きます。利害関係者はそれぞれ配当や税金、役員報酬などを会社に求めます。各人が納得のいく配分にするためには、法律に則って公正に作成された財務諸表が算出基準として必要不可欠。財務諸表を確認することによって利害関係者は各々利害を調整します。
管理会計と財務会計の異なる点
以下に管理会計と財務会計の違いをまとめました。
管理会計 | 財務会計 | |
目的 | 社内向けの会計 | 社外向けの会計 |
要・不要 | 行うかどうかは会社の自由 | 必ず行う必要がある |
書類 | 会社独自のレポート | 財務諸表 |
機能 | 予実管理・原価計算 | 情報公開・利害調整 |
管理会計と財務会計の一番の違いは社内向けの会計か、社外向けの会計かという点にあります。財務会計は社外の利害関係者に会社の会計情報を伝えるために法律に則って行われます。そのため、どこの会社でも必ず行わなければなりません。
一方、管理会計は社内の関係者に向けて行われる会計です。行うかどうかは会社で自由に決めてよく、そのため作成される書類も会社ごとに異なっています。
管理会計を行うメリット
財務会計は会社にとってなくてはならない会計です。一方、管理会計を行うかどうかの判断は会社にゆだねられています。
やらなくてもよい会計であるのなら管理会計はなぜ行う必要があるのでしょうか?「余計な費用がかかるだけでは?」と感じる方もいらっしゃることでしょう。ここでは管理会計を行うメリットについてご紹介します。
管理会計を行うメリット1:コスト改善できる
管理会計では予算と実績を比較し、改善点を探していきます。予算通りの費用に収めるためにはどうすればよいのか。また、予算をオーバーしてしまった原因は何なのかを探っていき、その結果を次回の予算作成の際に反映させていきます。このようにして分析と改善を繰り返していくことでコスト改善につなげていきます。
管理会計を行うメリット2:社員の会計知識の向上、情報共有が図れる
管理会計を行うには、詳細な予算を作成する必要があります。部門ごとや商品ごとの予算を作成するには、経営者だけでなく現場の管理職や担当者の力も必要になってきます。そのため、管理会計を行うには多数の人の協力が必要不可欠です。
関与する人は予算を作成するために、予算に関する知識が必要になります。また、作成した予算を実績と比較し、分析する力も必要になってきます。管理会計を取り入れることで社員の会計に関する知識力の向上と実績の情報共有が図れるでしょう。
管理会計を行うメリット3:業績の管理がしやすい
管理会計を行うと、財務会計より詳細な情報が取得できます。商品ごとに原価がいくらかかっているのかや部門ごとに費用がいくら必要なのかなどが把握できます。詳細に業績を管理したい会社には管理会計の導入がおすすめです。
管理会計を行うデメリット
管理会計を導入することは会社にとって上記のようなメリットをもたらしてくれますが、同時に下記のようなデメリットもあります。
管理会計を行うデメリット1:費用がかかる
管理会計を行うには費用が必要になります。管理会計では予算・実績・原価・月次・年次・部門・商品などさまざまな単位で数字を管理しなければなりません。これらの情報を作成・収集したり、管理したりするには人件費が必要になります。
また、情報を管理するには専用のソフトやシステムなども必要になってくるでしょう。管理会計を実現するにはこのような費用が発生します。その点認識しておきましょう。
管理会計を行うデメリット2:担当者の負担になる
管理会計を行うには財務会計とは違った作業が必要になります。財務会計には必要のなかった情報を管理したり専用のレポートを作成したりと、担当者にとっては今まで行う必要のなかった作業が発生してしまいます。
まとめ
管理会計は会社の内部に向けて、財務会計は会社の外部に向けて行われる会計です。管理会計には予実管理と原価計算という2つの機能があります。一方、財務会計の機能は情報公開と利害調整です。
財務会計は法律に則って必ず行わなければなりませんが、管理会計を行うかどうかは会社の判断にゆだねられています。そのため管理会計を導入していない会社も多くあります。
しかし、管理会計を行うことは会社にとって良い効果をもたらします。管理会計のメリットにはこれらがあげられます。
- コスト改善
- 社員の会計知識の向上、情報共有が図れる
- 業績の管理がしやすい
その反面、管理会計には下記2つのデメリットがあります。
- 費用がかかる
- 担当者の負担になる
管理会計の導入を検討するときには、メリットだけでなくデメリットも理解した上で検討するようにしましょう。