臨時的に発生した多額の損失を特別損失といいます。台風や豪雨といった自然災害や会社の資産が盗難にあった際に利用します。
本記事では特別損失について解説していきます。特別損失とは何か、特別損失の経理処理や仕訳、特別損失を計上する際の注意点についてみていきましょう。
特別損失とは
特別損失とは、通常の企業活動以外の活動によって生じた損失のことです。臨時的・一時的に発生した多額の損失であるため、通常の企業活動で得た損益とは分けて数値をみていきます。
特別損失として計上するには
- 臨時的な損失であること
- 多額の損失が発生していること
という2つの要因を満たしている必要があり、具体的にはこれらが該当します。
- 会社が保有している建物や土地などの固定資産売却損や固定資産除去損
- 転売以外の目的で保有していた株式や証券の売却による売却損
- 火災や自然災害、盗難など災害による損失
【特別損失の勘定科目】
固定資産売却損、固定資産除却損、投資有価証券売却損、社債償還損、災害損失、盗難損失
予測不可能な自然災害や急激な投資有価証券の価値の減少など、経常的に発生せず臨時的に発生した多額の損失が特別損失として計上可能な損失です。最近では新型コロナウイルス関連の損失を特別損失として計上する企業もあります。
特別損失とは逆に、通常の企業活動以外の活動によって生じた利益のことを特別利益といいます。また、特別損失と特別利益をあわせて特別損益と呼びます。
特別損失、特別利益、特別損益についてはこちらの記事でも解説しています。参考にしてみてください。
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特別損失の会計処理ー対象となる取引と仕訳例
ここからは特別損失として目にする機会の多い勘定科目と仕訳例をいくつかみていきましょう。
災害損失
地震や台風といった自然災害によって会社が保有する建物や機械が損失を被った場合には災害損失として計上できます。直接被った被害だけでなく、崩れた建物を撤去する費用や修理する費用も災害損失として計上可能です。
【借方】災害損失 10,000,000円 /【貸方】建物 10,000,000円
固定資産売却損
会社が保有している固定資産を売却した際に、売却額が帳簿価格を下回ったときに利用します。
【借方】固定資産売却損 2,000,000円 /【貸方】土地 30,000,000円
普通預金 28,000,000円
固定資産除却損
使用しなくなった固定資産を廃棄するときに計上します。
【借方】固定資産除却損 20,000,000円 /【貸方】機械装置 20,000,000円
投資有価証券売却損
転売目的外で長期間保有していた投資有価証券を売却し、その結果損失が出た際に利用する勘定科目です。投資有価証券の簿価に対し、売却額が下回ったときに発生します。
【借方】投資有価証券売却損 10,000,000円 /【貸方】投資有価証券 50,000,000円
普通預金 40,000,000円
特別損失を計上する際の注意点
特別損失を計上するときは慎重に判断を行った上で、必ず証拠を残しておくようにしましょう。
証拠を残そう
特別損失は通常の企業活動ではあまり発生することのない損失です。そのため、税務調査などで目につきやすい勘定科目でもあります。いざというときに困らないよう、特別損失の発生や金額を証明できる証跡は必ず保存するようにしましょう。
盗難損失の場合は被害届、災害損失の場合は新聞や被害を受けた固定資産の写真などが該当します。また、固定資産売却損や投資有価証券売却損の場合には稟議書や契約書などを作成したはずです。これらの書類は特別損失の妥当性を証明する証拠となります。
特別損失として認められるためには、その損失が臨時的に発生したものであると示す証拠が必要です。誤って破棄してしまわないよう注意しましょう。
特別損失の計上は慎重に行う必要がある
特別損失の計上は慎重に行いましょう。場合によっては、前述したような事象であっても特別損失と認められないケースがあります。
例えば金額が僅少な場合や継続性があると判断されてしまった場合です。金額が僅少であった場合は、特別損失ではなく営業外費用と判断されるケースがあります。特別損失は「多額」の損失が発生したとき利用する勘定科目ですので、このような判断になる場合があります。
また、継続性の観点も忘れてはいけません。特別損失は臨時的・偶発的・突発的など、経常的に発生した損失ではなく「たまたま」その会計期間に発生した損失が該当します。そのため、継続性があると判断されてしまうと特別損失に計上できません。
初めて扱う特別損失を計上する場合は、税務署や税理士に特別損失に計上して問題ないかどうかをあらかじめ確認の上処理を行うようにしましょう。
まとめ
特別損失は会社の企業活動には関係なく、臨時的に発生した多額の損失のことを指します。台風や地震、崖崩れなどの自然災害や急激な投資有価証券の資産価値の低下などが該当します。
特別損失は通常の損失とは異なるため、計上されていると目立つ勘定科目でもあります。そのため、各種調査で質問をされることも多いでしょう。何かあった時に証拠として出せるように、特別損失を計上するに至った稟議書や盗難届といった関連書類を証跡として保存するようにしましょう。