経理実務に役立つ簿記の知識

実は簿記には2つの種類があります。単式簿記と複式簿記です。一般的に企業では複式簿記が利用されていますので「簿記には2種類ある」と言われてもピンとこない方も多くいらしゃるのではないでしょうか。

本記事とは単式簿記と複式簿記について、また実務で使う簿記の具体的な知識についてご紹介しています。これから簿記の勉強を始める方・経理職を目指している方はぜひ参考にしてみてくださいね。

簿記の2つの種類

簿記には単式簿記複式簿記という2つの種類があります。一般的に多くの会社で使用されている簿記は複式簿記です。そのため「今から簿記の勉強を始める」という方は複式簿記について勉強するとよいでしょう。

単式簿記

単式簿記とは一つの勘定科目に絞って記帳を行う方法です。主に資金の入出金に焦点を置いて記帳します。

例)

取引内容:9月10日 消耗品を現金払いで1,000円分購入した

記帳例 :9/10 支出 消耗品費 1,000円

 

取引内容:9月15日 売上としてAから現金5,000円を受領した

記帳例 :9/15 収入 売上 5,000円

 

このように、単式簿記では日付・収入or支出・内容・金額程度の簡単な記帳を行います。資金の入出金に重きを置いているため、お金が入った・出たこと、なぜ入ったのか・出たのか、いつ発生した事象かはすぐにわかるようになっていますが、詳細な財務状況についてはすぐにはわかりません。

例えば金融機関からお金を100万円借りたとします。このような場合、単式簿記では「お金が増えた」ことはすぐにわかりますが「今後お金を100万円返却しなければならない」ことがすぐにはわかりません。

例)

取引内容:9月20日 金融機関から口座へ100万円借り入れした

記帳例 :9/20 収入 普通預金 1,000,000円

 

記帳の残高をみて「資金が50万円手元にある」と安心していると「ある日100万円の返済期限がきて支払に困ってしまった」ということが起こりうるのです。

このように一般的な会社で利用するには不足している情報が多いことから、ほとんどの会社では複式簿記で記帳されています。単式簿記を利用するシーンは個人の家計簿や個人事業主の白色申告、サークルの収支報告書など詳細な財務状況を必要としない場面のみに限定されています。

複式簿記

複式簿記は一つの取引を原因と結果の二つの側面で表します。単式簿記と同じ例で仕訳をみていきましょう。

例)

取引内容:9月10日 消耗品を現金払いで1,000円分購入した

記帳例 :9/10(借方)消耗品費 1,000円 /(貸方)現金 1,000円

 

取引内容:9月15日 売上としてAから現金5,000円を受領した

記帳例 :9/15(借方)現金 5,000円 /(貸方)売上 5,000円

 

単式簿記とは違って、一つの取引内容に対して2つの勘定科目が出てきます。一行読むだけで「消耗品を買った」という原因とその結果「現金が減った」ことが読み取れる仕組みになっています。

例)

取引内容:9月20日 金融機関から口座へ100万円借り入れした

記帳例 :9/20(借方)普通預金 1,000,000円 /(貸方)借入金 1,000,000円

 

上記の例にしても、お金が増えている(結果)の原因は「借入金(=どこかから借りたお金)」であることがわかります。

資金が増えた・減ったことの内容と金額さえわかればいい単式簿記に比べ、原因と結果の二つの側面を記録しなければならない複式簿記は手間がかかります。また、原因・結果を正確に表すためには次章でご紹介する仕訳や勘定科目の知識が必要になります。

実務で使う簿記の具体的な知識

経理実務は仕訳から始まります。仕訳がわからなければ経理になることは難しいでしょう。仕訳の仕組みと仕訳に必要な勘定科目については、経理実務を行う上で必ず習得しておかなければならない知識です。

仕訳の仕組み

仕訳とは一つの取引内容を「借方(かりかた)」「貸方(かしかた)」の2つに分けて、原因・結果について記すことを指します。また、仕訳を作成することを「仕訳を切る」と言います。

仕訳

借方と貸方は必ず金額が一致し、つり合いが取れるようになっています。上記の仕訳例は給与を支払った(原因)ため、現金が減った(結果)ことを表しています。また、給与になったのは30万円、減った現金の額も30万円と借方と貸方で金額が一致しています。

借方と貸方のどちらに原因・結果を記載すべきかは増減した勘定科目の分類によって異なっています。

借方:資産の増加、負債・純資産の減少、収益の戻し、費用の発生

貸方:資産の減少、負債・純資産の増加、収益の発生、費用の戻し

借方には資産の増加や費用の発生を、貸方には資産の減少や収益の発生を記載します。具体的に資産とは何か、また資産にはどのような勘定科目が含まれるのかは次の章でみていきましょう。

勘定科目

勘定科目は資産・負債・純資産・収益・費用の5つのグループに分類されます。それぞれのグループ内に複数の勘定科目が存在し、例えば資産というグループ内に「現金」や「売掛金」という勘定科目があります。

 

資産:会社が持っている金銭的価値のあるものや資産

勘定科目:現金、普通預金、売掛金、商品、建物、土地、備品、受取手形、未収金、車両運搬具

 

負債:会社が支払う必要のある借金や負債

勘定科目:買掛金、支払手形、未払金、借入金、預り金、社債、退職給付引当金、未払法人税等

 

純資産:会社を作る元となった資金

勘定科目:資本金、資本準備金、資本剰余金、元入金、新株予約権

 

収益:会社が得た売上や利益

勘定科目:売上、雑収入、受取利息、受取配当金、有価証券評価益

 

費用:会社で必要になる支出

勘定科目:仕入、給料賃金、会議費、水道光熱費、広告宣伝費、消耗品費、租税公課、交際費

 

仕訳を切るには「現金」や「売掛金」という勘定科目の具体的な内容がどのようなものなのか、また「現金」や「売掛金」は5つのうちどのグループに分類されるのかを知っていなければなりません。

これから簿記の勉強を行う方や初めて経理実務を行う方は、最初の頃は「勘定科目が何なのか」を本やネットで確認しながら仕訳を切るといいでしょう。

経理として仕事を続けていくには、最終的に勘定科目の内容をすべて覚える必要があります。「100円のノートを現金で買った」と聞いたときに、関係のある勘定科目が「消耗品費」と「現金」であると瞬時に判断できるようにならなければなりません。

 

勘定科目についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

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まとめ

簿記には単式簿記と複式簿記があります。単式簿記とは取引を一つの科目に絞って記録していく方法のこと。主に資金の入出金に焦点をあてて会社のお金の流れについて記録していきます。

一方、複式簿記とは取引を二つの側面から記録していく方法のこと。一つの取引に対し複数の勘定科目を用いて詳細に内容を記録していきます。

一般的にほとんどの企業では複式簿記が利用されています。単式簿記を利用するシーンは限定されていますので、今から簿記の勉強を始めるという方は複式簿記について勉強しましょう。

また、経理として実務を行うには仕訳の切り方と勘定科目について理解している必要があります。この2つが理解できていなければ、経理として仕事を得ることは難しいでしょう。経理を目指している方はこの2つについて理解を深めておくようにしましょう。

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