「経理業務をIT化したい。でもなかなか稟議が通らない・・・」とお悩みの方は、まず稟議書を見直してみてください。本記事では稟議書に書くべき6つのポイントと稟議を通す2つのコツを紹介していきます。
これらを盛り込んだ資料を作成し、決裁者が判断しやすい稟議書を作成しましょう。
稟議とは
稟議とは個人では決裁ができない事柄に関して経営者や他の決裁者の判断を仰ぎ、最終的に承認を得ることを指します。その際に回覧する文書のことを「稟議書(りんぎしょ)」と呼びます。
稟議書は決裁が必要な事柄に関する内容をひとつの資料としてまとめたものです。稟議内容が記載された本体と添付資料から成っています。これらの資料を経営者や決裁者に回付し、最終的に承認を得ることができれば稟議内容を実行することができます。
稟議書を書く際に記載すべきポイント
稟議書にはこれからご紹介する5つのポイントを盛り込むようにしましょう。
1.5W1H
稟議書には5W1Hを明確に記載しましょう。これは何も経理業務のIT可に限った話ではありません。
When:いつ(いつから作業が開始・終了する、いつ支払を行うなど)
Where:どこで(本社、支店など)
Who:だれが(どこの部署の担当者は誰か、取引先はどこかなど)
What:何を(対象となる業務やシステムなど)
Why:なぜ(なぜ変更する必要があるのか、なぜ購入しなければならないのかなど)
How:どのように(作業をどう行うのかなど)
決裁者は稟議書を読んで実施の可否判定を下します。これらの事項が記載されていない稟議書では、情報が不足しており判断できません。
2.メリット
稟議通すとどのようなメリットが得られるのか。これは稟議書において最も重要な部分です。どのようなメリットがあるからこの稟議を通す価値があるのかをわかりやすく記載しましょう。
経理業務のIT化を進める稟議の場合、このようなメリットが考えられます。
- ペーパーレス化により社内の紙資料を減らせる
- ペーパーレス化に取り組んでいることを社外にアピールできる
- 自宅で作業可能になりテレワーク、リモートワークに対応できる
- 紙を保管するキャビネットや倉庫を削減できる
- 紙に印刷、郵送する費用が不要になる
- ワークフロー化で承認が早くなる
- 自宅でも移動中でも仕訳計上可能
- 請求書を早く回収できる
- 月次決算を早期化できる
3.困っていること・変えたいこと
稟議書を通すことで何がどう変わるのか具体的にイメージをもってもらえるような記載を心がけましょう。何に困っているのか、何を変えたいのか具体的に明記してください。
- 他社から請求書を電子データで送信することを求められている
- 郵送で届く請求書の開封のため出勤する必要がある
- 出張や移動が多く経理業務が滞る
- 請求書の印刷に時間がかかってしまう
4.リスク
稟議は通らないこともあります。通らない理由は何かリスクがあるためです。しかし、当然ながら決裁者はリスクも考慮した上で稟議の判断を下さなければなりません。そのため稟議書にはメリットだけでなくリスクも記載する必要があります。
また、あえてリスクを伏せて稟議を通してしまったとすると、何か問題が発生した際に起案者が責任を問われかねません。稟議書にはメリットだけでなくリスクもしっかりと明記しましょう。
リスクに対する対策が可能なのであれば、リスクを取り除く方法や軽減する方法も合わせて記載してください。そうすることで決裁者の不安を軽減できます。
5.金額(見積額・相見積額・予算額)
稟議内容の実現に必要となる金額を記載しましょう。いくら費用が必要になるのかは決裁者が特に気にするポイントです。
事前に相見積もりを行い、複数社から見積書を取得しておくことをおすすめします。見積書が揃ったら見積書やサービスの内容を比較し、導入にベストな会社を選定しておきましょう。
また、予算策定時に予算を見込んでいるのであれば予算額も記載をしてください。
稟議を通すコツ
稟議書を提出する前に、これからご紹介する2つのコツを実践してみてください。特に2番目は稟議決裁後の作業に直接関わってきます。無駄だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、スムーズにIT化を進めるためには必要な項目です。
1.数字や図表で表す
稟議を通すことで変わる事項を数値や図表で表し資料として添付しましょう。言葉のみで説明するより稟議内容について理解を得やすくなります。
数値の場合、このようなものがあげられます。
- 業務時間を〇時間削減できる
- 郵送費用を〇円削減できる
- 倉庫代を〇円から0円にできる
- 月次決算を〇日早められる
- 社内の紙資料を〇%削減できる
図表の場合は円グラフや折れ線グラフ、棒グラフなどを用いて変化をわかりやすく表してみましょう。相手にとって理解しやすい稟議書を作成することは稟議を早く進め、承認されやすくするコツのひとつです。
2.協力を得る必要がある部門には事前に話をしておく
稟議を通した後、協力を得る必要がある部門には事前に話を通しておきましょう。例えばシステム導入にシステム部の手助けがいる場合や、他社への案内を総務部に手配してもらう必要がある場合などです。
これらの部門には稟議決裁後に時間や人員を割いてもらう必要があります。直前になって話をしては「人員が確保できない」「繁忙期で時間を割けない」という事態になりかねません。協力を得る必要がある部門には、事前に根回しをしておくようにしましょう。
まとめ
経理業務のIT化を行うには、多くの企業で稟議決裁が必要になってきます。稟議書を作成するときには今回ご紹介した6つの事項を忘れずに盛り込み、決裁者が決裁をしやすい稟議書になるように心がけましょう。
また、その稟議は決裁を得ること自体が目的ではありません。稟議決裁後に経理業務をIT可することが目的のはずです。そのためには、稟議書の決裁が下り実作業に移る前に関係部門の協力を仰いでおくことが重要になってきます。あらかじめ関係部門に時間や人員の確保を依頼しておくと、決裁後スムーズにIT可への移行作業を開始できるでしょう。