経済ニュースにも出てくる減損会計とは?具体例を用いて解説!

経済ニュースで、

「〇〇会社が店舗の減損を実施したことにより、大幅な赤字計上となる見込み」

「◇◇会社が競争環境の激化などによる収益性の低下を受け、多額の減損損失を計上」

などといった、記事を見かけることがあります。

このようなニュースから、

・減損が発生すれば、大きな損失が計上される

ということがわかります。

しかし、「そもそも減損ってなんだろう?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。

この減損とは、会社で行われる経理処理の1つで「減損会計」とも言われています。

そして、この減損会計の処理で発生する損失が「減損損失」ということになります。

今回の記事では、「減損会計とは何か?」、さらに「減損損失が発生する理由」についてわかりやすく解説してきます。

身近にある具体的な事例を用いて解説しますので、経理初心者であっても減損会計について理解することができます。

経済ニュースを読んでもイマイチわからなかった減損を理解するチャンスです。ぜひチェックしてみてください。

経済ニュースにも出てくる減損会計とは?

経済ニュースを見ると、〇〇会社が減損により多額の損失計上といった記事を見かけることがあります。

例えば、

「〇〇会社が臨時休業や時短営業により、店舗の収益力が低下したことを受け、店舗の固定資産について減損損失を計上」

「◇◇会社は、食品飲料事業の業績回復が鈍く、関連する固定資産の減損損失を計上したことにより赤字転落」

といった減損の計上に関するニュースは、企業の決算前などに報道されることも多くあります。

こうしたニュースからは、

・減損の対象は「固定資産」

・減損は、事業や店舗の「収益力低下や業績が回復しない」と発生する

といった2つのことが読み取れます。

そして、ニュースからわかることは、

減損=事業や店舗の業績が悪いと、固定資産を減らして損失を計上しなければならない

ということです。

正にこれが、減損会計の本質とも言えます。

ここからは、この減損の対象となる資産と、収益力低下や業績が回復しないということについて、具体的に解説していきます。

減損会計の対象となる固定資産は?

減損会計の対象となる固定資産とは、長期にわたって所有し事業を行うために使用する資産です。

この固定資産には、有形固定資産無形固定資産の2つあります。

有形固定資産は、建物や土地、工場に設置される機械装置、運送に使うトラックといった車両などが該当します。

無形固定資産は、実態が見えない(形がない)固定資産のことを言います。

具体的には、法律上の権利である特許権や商標権、電話加入権、システムを動かすソフトウェアなどが無形固定資産に該当します。

これらの有形固定資産や無形固定資産ですが、どのようにして事業で使用されていくのでしょうか。

事業で固定資産を使用する例として、

・土地を購入し、

・工場を建て、

・機械装置を設置し、

・製造を管理するためのシステムを購入し、

・製品を製造する。

といったように、土地や建物、機械装置といった固定資産を使用して製品を製造し、その製品を販売して事業を行います。

また、

・店舗となる建物を建てて、

・建物の中に厨房設備や飲食スペースを設置し、

・料理や飲み物をお客さんに提供する。

このように、店舗建屋や厨房設備といった固定資産を使用して、飲食サービスを提供する事業を行う場合もあります。

ここでは製品を製造して販売する事業、飲食サービスを行う事業を例としましたが、同様に、その他の事業でも、固定資産を使用して事業を行います。

そして、減損会計の対象となる固定資産は、この事業に必要な有形固定資産や無形固定資産となります。

具体例を用いて減損をわかりやすく解説

先述した、「経済ニュースにも出てくる減損会計とは?」の項目では、

減損=事業や店舗の業績が悪いと、固定資産を減らして損失を計上しなければならない

ということを解説しました。

ここでは、具体例を用いて、

「事業や店舗の業績が悪いと、固定資産を減らして損失を計上しなければならない」

とはどういうことか?について、身近にある2つの事例を使って、わかりやすく解説していきます。

事例1:焼き鳥チェーン店の場合

焼き鳥チェーン店の事業

当社では、飲食店事業を営んでおり、関東で10店舗の焼き鳥チェーンを展開しています。

新たに、神田駅前に焼き鳥店の店舗を構え、事業を開始しました。

この焼き鳥神田店を開店するにあたって、3,000万円投資して厨房設備の設置や店内の内装工事を行いました。

焼き鳥神田店では、サラリーマン向けにボリュームある焼き鳥とお酒を提供して、利益を稼ぐことを目的としています。

そして、5年かけて投資額3,000万円を超える4,000万円を稼ぐ計画で、神田に焼き鳥店を開店させました。

・焼き鳥神田店への投資額 3,000万円
・5年間の利益予想 4,000万円(毎年800百万円の利益予想)
・投資は、厨房設備や店舗内装などの固定資産

・投資計画表

焼き鳥チェーン店の現状

焼き鳥神田店の厨房設備や店舗は、5年間使い続けることができます。

この神田店は、神田駅前という立地のよさから、開店1年目は計画の利益を計上することができました。

しかし、2年目以降、競合の大手焼き鳥チェーン店が駅前に進出してきたことで競争が激化し、計画の利益を下回りました。

さらに、神田駅前は、大手居酒屋チェーン店などのオープンが相次いで予定されており、今後さらなる競争激化による業績低迷の可能性が高まっています。

焼き鳥チェーン店の業績見通し

当社の焼き鳥神田店は、競争激化により非常に厳しい状況にありますので、当初の利益計画を見直しました。

・計画の見直し

将来の売上や利益は、他の大手チェーン店が相次いで進出することを前提に、競争激化を踏まえた予測を立てました。

その結果、利益計上額は当初に計画していた毎年800万円から、毎年400万円まで減少する見込みとなりました。

焼き鳥チェーン店への投資額

当社の焼き鳥神田店、現在は厨房設備や店舗内装代の固定資産の残高が1,800万円あります。

焼き鳥神田店への固定資産投資額3,000万円は、減価償却が進んだ結果、投資額の残高が1,800万円あるということです。

※減価償却=時間が経つにつれて資産が古くなり、徐々にその資産価値が減少していくこと

神田店では、今後もこの厨房設備などの固定資産を使用して、利益を稼いでいく必要があります。

しかし、この固定資産1,800万円を3年間使用しても、利益は毎年400万円、3年トータルで1,200万円しか稼ぐことができないと見込まれています。

ここで考えてみてください。

1,200万円しか利益を稼ぐことができない固定資産に、1,800万円の価値があるのでしょうか?

1,800百万円の価値はないと考えるのが普通ですね。

1,200万円しか利益を稼ぐことができないなら、固定資産の価値も1,200万円程度になると考えます。

焼き鳥チェーン店の減損会計

・焼き鳥神田店への投資による、厨房設備などの固定資産残高は、1,800万円です。

・この固定資産資を使っても、将来1,200万円しか利益を稼ぐことができないと見込まれます。

この1,200万円しか利益を稼ぐことができない固定資産ですが、今他の人に売却するとした場合どうでしょうか?

固定資産を使っても1,200万円しか利益を稼げないなら、わざわざ1,800万円という高い値段で買おうと考える人はいませんね。

また、今ある固定資産1,800万円を使っても、1,200万円しか利益を稼げないということは、固定資産に投資したのに「元が取れない」という状態でもあります。

そこで、固定資産の価値は1,200万円しかなく、投資の元が取れないという状態を会計処理する必要があります。

会計処理では、固定資産の残高を1,800万円から1,200万円に修正し、その差額を損失計上します。

このように1,800万円から1,200万円に修正することを、減損といいます。

そして、1,800万円から1,200万円に修正した差額「600万円」が減損損失となります。

(1,800万円-1,200万円=600万円⇒減損損失)

このように、焼き鳥神田店は、他社大手の焼き鳥チェーン店や居酒屋チェーン店が相次いで進出したことから、

・神田駅周辺の競争激化により、

・投資した固定資産を使用しても利益が稼げなくなり、

・その結果、固定資産の使用する価値が下がってしまい、

固定資産の減損が必要になりました。

この具体例でわかることは、

①固定資産を使って将来に渡って利益を稼ぐ

②稼ぐ利益の額=固定資産を使用する価値

と理解することができます。

そして、

③現在の固定資産の残高が、固定資産を使用する価値の金額より大きかったら、

④固定資産を使用する価値まで減額する

この固定資産の残高を、使用する価値まで減額する処理が減損となります。

※わかりやすく説明するため、減損会計実務で行われる割引現在価値を使って減損額を算出する考え方の説明は省略しています。

事例2:アパート経営の場合

もう1つ具体的な事例を使って、減損会計を説明しましょう。

アパート経営の事業

当社では、8,000万円で中古アパートを購入し、アパート経営を行うことにしました。

アパートを購入する目的は、長期に渡って購入額(投資額)を上回る家賃収入を得ることです。

(不動産に投資して、家賃収入という利益を稼ぐことを目的としています)

そして、20年かけて投資額8,000万円を超える、1億6,000万円の家賃収入を稼ぐ計画で、アパート経営を始めました。

・アパートへの投資額 8,000万円
・20年間の利益予想 1億6,000万円(毎年800万円の家賃収入)
・投資は、アパート建屋の固定資産

・投資計画表

アパート経営の現状

アパートは木造で、あと20年は住み続けることができます。

このアパート、購入当初は順調に入居者も決まり、安定的に家賃収入も入ってきました。

その後、周辺に新しいアパートが続々増え、入居する人もそちらへ流れていること、当社のアパートが老朽化していることから入居者が年々減少し、今では、部屋数の3分の1が空室状態となってしまいました。

アパート経営の業績予測

全部屋数の3分の1が空室状態だと、家賃収入が少なくなり、アパート投資の元がとれない可能性がでてきました。

そこで、現在の空室状態が10年間続くと予測して、今後10年トータルの家賃収入を計算してみました。

その結果は、これから10年間で稼げる家賃収入は、3,000万円と計算されました。

アパートへの投資額

アパート経営を始めてから10年後、現在はアパート建屋の固定資産残高が4,000万円あります。

アパートへの投資額8,000万円から減価償却が進んだ結果、現在のアパートへの投資残高が4,000万円あるということです。

※減価償却=時間が経つにつれて資産が古くなり、徐々にその資産価値が減少していくこと

今後もアパート経営を続けていく以上、家賃収入を稼いでいかなければなりません。

ここで考えてみてください。

家賃収入を3,000万円しか稼ぐことができないアパートに、4,000万円の価値があるのでしょうか?

3,000万円しか家賃収入が入らないのなら、アパートの価値は高くても3,000万円程度だろうと考えるのが普通です。

アパート経営の減損会計

・アパート建屋の固定資産残高は、4,000万円です。

・アパート経営により得られる家賃収入は3,000万円しか見込まれません。

この3,000万円しか家賃収入を稼ぐことができないアパート建屋ですが、他の人に売却すると考えた場合、どうなるでしょうか。

アパート建屋は3,000万円しか家賃収入を稼げないのに、3,000万円以上の高い値段で買おうという人はいませんね。

また、今のアパート建屋4,000万円を使用しても、3,000万円しか家賃収入を稼げないということは、投資の「元がとれない」という状況であると言えます。

このように、アパートの価値は3,000万円しかないということがわかりましたので、アパートへの投資残高を3,000万円に修正し、その差額を損失計上しなければいけません。

このように、4,000万円のアパートを3,000万円に修正することを減損といいます。

前述した焼き鳥店の減損と同様に、アパート経営についての減損についてもまとめてみましょう。

・周辺の新築アパートが増えたことにより、

・当社アパートの入居者が減り、

・家賃収入が減ってしまった。

・その結果、アパート経営で家賃収入を稼ぐことが難しくなり、

・アパート自体の価値も下がり、

アパートの減損が必要になりました。

この具体例でわかることは、

①アパートという資産に投資して、将来に渡って家賃収入を稼ぐ

②家賃収入を稼ぐ=アパートに投資した価値

と理解することができます。

そして、

③将来稼げる家賃収入が、現在のアパートへの投資残高より少なかったら、

④アパートへの投資残高を、将来稼げる家賃収入の総額まで減額する

この減額する処理が減損となります。

※わかりやすく説明するため、減損会計実務で行われ、る割引現在価値を使って減損額を算出する考え方の説明は省略しています。

まとめ

今回は、「減損会計」について、具体的な事例を使って基本をわかりやすく解説しました。

取り上げた事例は、

・事例1:焼き鳥チェーン店

・事例2:アパート経営

の2つでした。

焼き鳥店では、厨房設備や店内内装といった固定資産に投資して、焼き鳥事業を展開してきましたが、業績が悪化し当初の計画の利益を稼ぐことができなくなりました。

アパート経営では、アパート建屋という不動産に投資し、投資を上回る家賃収入を稼ぐ計画でしたが、空室が増え、結果的に当初の計画より利益を稼ぐことができませんでした。

いずれも固定資産に投資して大きく利益を稼ごうとしたものの、投資額以上の利益を稼ぐことができなかったことになります

その結果、固定資産への投資額以上の利益を稼げず「元がとれない」ために、減損として損失を計上することになりました。

こうしてみると減損とは、投資したけど「元がとれない」ということであり、いわば投資の失敗とも言えます。

そして、投資が失敗した場合には、その失敗を減損損失として計上しなければなりません。

これがまさに減損会計ということになります。

今回の減損会計に関する内容を理解すれば、経済ニュースに出てくる減損の記事の見方も変わってきます。

減損を出した企業のニュースをみれば、「投資に失敗して損失を計上した」というように見ることもできます。

そして、減損に関する記事の内容も理解できるようになります。

これからは、経済ニュースで減損の発生という記事を見つけたら、どのような内容で企業が減損を出したのか、興味を持ってチェックしてみましょう。

 

執筆者情報/経理部IS
20年以上にわたり、上場企業とその子会社で経理業務を経験。
転職6回・複数の上場企業での経験を活かし、経理を中心とした仕事に役立つ情報をブログで発信中。

ブログ名:経理課長の仕事術 https://www.keiri-manager.com/

 

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