テレワークや在宅勤務の普及が広がり「そういえばあまり定期券を使っていないな」という方も増えてきたのではないでしょうか。
定期券は基本的に払い戻しが可能です。もしほとんど使わないことがすでに確定しているようでしたら、定期券を払い戻して使用した交通費を実費支払いした方が交通費が安く済むかもしれません。
今回は定期券の払い戻しの経理処理と注意点についてみていきましょう。
定期券を払い戻すのはどのようなとき?
従来、定期券の払い戻しが想定されるのはこのようなときでした。
- 従業員が退職するとき
- 従業員が転勤するとき
- 従業員が転居するとき
- 会社が定期代の支給を廃止するとき
こちらに近年では「テレワーク・在宅勤務に移行するから」という理由が加わりました。自宅での仕事がメインになってくると、電車やバスといった公共交通機関を利用する機会はぐっと減ります。そのため定期代の支給を見直す企業も多いでしょう。
定期券代に変わる交通費の支給方法は実費精算
出勤日数が減少するまたはゼロになる場合は、定期代の支給に代わり交通費の実費精算を行うことが一般的です。実際に支払った金額のみ支給した方が、定期代としてまとめた額を支給する場合より総額が安く済むことがあります。このような場合は、定期券代の支給から実費精算への切り替えを検討してみましょう。
定期券の払い戻しの仕訳方法
定期券の払い戻しを受けた際の仕訳は、定期券代を支給した際に何の勘定科目を利用していたかによって変わってきます。
旅費交通費や通勤費で即費用化している場合はその勘定科目を利用します。3か月分や6か月分など長期間の定期代をあらかじめまとめて支給し、毎月前払費用を取り崩して費用化している場合は、返却された金額分がどの勘定科目に計上されているのかを考えた上で勘定科目を選ぶ必要があります。
例)定期券の払い戻し代として現金で10,000円受領しました。尚、払い戻し手数料は500円でした。勘定科目は旅費交通費を使用していたものとします。
【借方】 【貸方】
現金 10,000 / 旅費交通費 10,500
支払手数料 500
定期券の払い戻しをする際の注意点
定期券の払い戻しを行う前に「就業規則」及び「定期券の有効期間」を確認する必要があります。また、定期券の払い戻しを行った後は「標準報酬月額」に影響がないかどうか労務部門へ確認してもらうようにしましょう。
定期券の支払いにはさまざまな「社内ルールを制定」しておく必要があります。事前にしっかりと準備をしておきましょう。
就業規則を確認しよう
従業員から定期券の払い戻しを受ける際は、労務や法務部門としっかりと協議をした上で手続きを定めるようにしてください。
そもそも会社には従業員へ交通費を支給する義務はありません。それでも多くの会社は「就業規則」にて交通費の支給を定めて支給しています。就業規則に記載されている以上、会社は従業員へ交通費を支払う必要があります。
そのため就業規則で「定期代を支給する」と規程されている以上「コロナで在宅勤務だから定期代は支給しません」と会社から一方的に交通費の支給を取りやめたり、払い戻しで返金させたりすることはできません。
あらかじめ就業規則にて払い戻しや支給しないケースもある旨の記載がない場合、払い戻し手続きより先に就業規則の見直し・改定が必要になります。その点注意しましょう。
有効期間の残りが1か月以下の場合は払い戻しできない
不要になった定期券は、有効期間が1か月以上残っている場合のみ払い戻しが可能です。そのため、定期券を1か月ごとに購入している場合は払い戻しができません。払い戻しの際は有効期間を確認の上、早めに手続きをすませるようにしましょう。
標準報酬月額を確認しよう
定期券の払い戻しを行ったり実費精算に切り替えたりした場合、社会保険料の算定元となる「標準報酬月額」に変化がある場合があります。特に4~6月の金額に変化があった場合は要注意。労務と密に連携を取り、情報交換を行うようにしましょう。
社内ルールを制定しよう
定期券の払い戻しをするには社内でさまざまなルールを決めておく必要があります。
例えば払い戻ししたお金の受け取り方法です。現金で経理・総務に提出してもらうのか、または会社口座へ振り込んでもらうのか事前に決めておく必要があります。そうでなければ個人ごとに対応が必要になり、社員の多い会社ではこの作業だけでかなりの時間が取られてしまうことでしょう。経費精算などと相殺して、実際のお金は受け取らない方法もあります。
また、払い戻しの手数料についても検討の必要があります。定期券の払い戻しには所定の手数料が必要になります。この手数料を会社負担とするのか、個人負担にするのか、事前に社内共通のルールとして制定しておきましょう。
他にも「いつまでに払い戻し手続きを終える必要があるのか」「申請書など書類を書く必要があるのか」など決めておくべきことはたくさんあります。
まとめ
定期券を払い戻しするには、有効期間が1か月以上残っている必要があります。社員に払い戻しを依頼する際には、有効期間を考慮した上で依頼するようにしましょう。
また、定期券代の支給を取りやめる際には、事前に就業規則を改定するか、または元から定期券代を支払わない可能性がある旨が記載されている必要があります。「明日からやめよう」と思っても、すぐには切り替えができない可能性があることを覚えておきましょう。