経理はテレワークがしづらい職業だと言われています。今回は経理へのアンケート結果を元に、経理業務のテレワーク化が進まない実情について紐解いていきましょう。その結果から、経理業務のテレワーク化を進める上で何が必要となってくるのかについても考えていきます。
経理業務のテレワーク化が進まない実情
経理業務はテレワーク化が難しいといわれています。株式会社ROBOT PAYMENTのインターネット調査(調査期間:2020年6月13日(土)~2020年06月15日(月))によると、外出自粛期間中にテレワークを実施できなかった経理はなんと69.1%にも上っています。その要因は何でしょうか?
アンケート調査の結果、下記3つの要因が導き出されました。
1位:紙の請求書業務
2位:入金支払管理
3位:紙の経費精算業務
上位3位のうち、2つの要因が紙。紙資料が経理業務のテレワーク化の大きなネックとなっていることがわかります。特に1位である紙の請求書業務。調査によると、約9割の経理が紙の請求書業務を電子化すべきであると考えています。
しかし、紙の請求書業務の電子化を会社に願い出た経理のうち、64.6%の経理が電子化が進まなかったと回答しています。9割の人が電子化が必要だと感じていても、実際に電子化の要望が通る人は約3分の1程度しかいないのです。
これが現在の経理業務のテレワーク化の実情です。テレワークを実施できなかったことが要因で転職や退職を検討している20・30代の経理が約3割以上いることも調査の結果判明しています。会社が若い経理を引き留めるためには、テレワークへ対応していくことが必要となってくるでしょう。
参考:株式会社ROBOT PAYMENT|経理1000人に聞いた緊急事態宣言下における働き方と電子化推進に関するアンケート調査
経理業務のテレワーク化を進める上で必要なこと
経理業務のテレワーク化を進めるには「紙」資料からの脱却が必要です。今回は上記調査で要因に上がった「紙の請求書業務」と「紙の経費精算業務」についてみていきます。
紙の請求書業務の電子化
紙の請求書業務には2つの側面があります。それは、紙の請求書を受領する側としての業務と、紙の請求書を発行する側としての業務です。
紙の請求書を受領する側としての業務
取引先がまだ電子化に対応していない場合、請求書は紙の状態で経理に届けられます。このような場合、まず請求書の入った封筒を受領・開封するために誰かが出社をしなければなりません。
受領と開封が終われば、請求書をスキャンして電子化してしまいましょう。確認や支払処理自体はテレワークでも可能です。
請求書の受領自体を電子に切り替えるには、取引先の協力が必要不可欠になります。取引先に依頼して、電子データで請求書を発行していただくようお願いをしましょう。どのように取引先へ依頼すればよいのかはこちらの記事を参考にしてください。
近年、日本社会ではテレワークや電子化が話題となっています。その中のひとつに「請求書の電子化」があります。今まで請求書と言えば紙に印刷して社印を押印、その後取引先へと郵送することが一般的でした。 しかし、ここ最近はがらりとその様相が変わ[…]
紙の請求書を発行する側としての業務
続いては請求書を発行する側としての業務についてみていきましょう。請求書の発行を電子に切り替える手段はいくつかあります。
- Excelやスプレッドシートで作成しPDF化する
- 請求書作成のシステムを利用し発行する
電子データで請求書を作成した後は取引先にメールやその他のチャットツールなどを介して送付しましょう。取引先へは事前に連絡しておいた方が無難です。詳細はこちらの記事を参考にしてください。
近年、日本社会ではテレワークや電子化が話題となっています。その中のひとつに「請求書の電子化」があります。今まで請求書と言えば紙に印刷して社印を押印、その後取引先へと郵送することが一般的でした。 しかし、ここ最近はがらりとその様相が変わ[…]
上記の通り請求書の電子化自体は容易に対応が可能ですが、会社が電子化に踏み切れない理由の一つに「取引先から紙での請求書発行を求められるから」という問題があります。今までの日本の商慣習にならって、紙の請求書に会社の「ハンコ(角印/社印)」が押印されていないと請求書として受領しないという会社はまだ根強く残っています。
電子データでの請求書の受領を受け付けてもらえない会社の場合、誰かが請求書を印刷して発送手続きを行う必要があります。電子データと同じように会社のハンコを印刷したもので受け付けてもらえる会社であれば、テレワークをしている個人が自宅で請求書を印刷し郵送することが可能です。
もしくは請求書の作成システムにオプション機能としてついている「郵送」機能を活用する手段もあります。クラウドのシステム上で請求書を発行できるシステムには、請求書の郵送を代理で行ってくれるオプションが付属されているものが多く、送料と手数料は必要になりますが、会社の従業員が紙を扱うことなく取引先へ請求書の発送が可能です。
この他にも、請求書の発送を外部業者に委託してしまう手段もあります。作成から発行まで依頼してしまえば、社員はテレワークで仕事が可能です。
ハンコが印刷された請求書で問題ない場合はこのような方法で対応が可能です。その一方、ハンコが実際に押印されていなければ受け付けないという会社の場合は、ハンコがある場所へ出社して対応する必要が残ってしまいます。
請求書のハンコ自体には何の法的効力もありません。そのため、押印があってもなくても請求書は請求書として成立します。このことを取引先へ説明し、実際のハンコの押印なしでも請求書を受け付けてもらえるよう説得を試みてみましょう。
紙の経費精算業務の電子化
経費精算を電子化するには、経費精算システムの導入が近道です。経費精算システムとは、経費申請の申請・承認・支払データの作成までを一貫して行うことができるシステムのこと。クラウド上にデータが保存されているため、インターネットさえあればどこからでも経費精算が可能になります。
社員は受け取ったレシートや請求書を見ながら経費精算システムで申請を行います。その後上長の承認を経て、経理にデータが届きます。経理はシステム上で届いたデータを元に支払い手続きや仕訳の処理を行います。
まとめ
経理業務をテレワークで行うためには、紙の請求書業務や紙の経費精算業務といった「紙」に関する業務を減らしていく必要があります。請求書発行システムや経費精算システムを活用して、減らせるところから削減していきましょう。