経理の仕事に慣れ、自信もついてきた人の中には、将来経理でマネージャーを目指そうと考えている方もいるかと思います。
そして、経理マネージャーには、どんな経験やスキルが必要なのか気になるところです。
そこで今回は、経理部門でマネージャーを目指す方に向けて、経理マネージャーになるために必要な経験とスキルは何かについて解説します。
今回の記事では、現役の上場企業の経理マネージャーが、自らの経験を交えながら解説していきます。
将来経理マネージャーを目指そうと考えている方は、ぜひチェックしてみてください。
経理マネージャーになるために必要な経験とスキル
経理マネージャーになるためには、さまざまな経験やスキルが必要です。
その中でも、主に5つの経験やスキルが必要となります。
★経理マネージャーに必要な「5つの経験・スキル」
1.経理業務の知識と経験
2.高い情報収集スキル
3.コミュニケーションスキル
4.ITスキル
5.自社のビジネスと他部署業務の理解力
この5つの経験やスキルがあれば、経理マネージャーとして仕事をこなすことができます。
ここからは、この5つの経験・スキルについて詳しく解説していきます。
経理業務の知識と経験
経理マネージャーにとっては、当たり前に必要となる経理業務の知識と経験。具体的にどのような経理の知識と経験が必要でしょうか。
経理の日次業務の経験
経理の仕事の基本は、日次業務であり、日々発生する取引の記帳業務です。
この経験していないと、経理の仕事の根幹を理解することができません。
経理マネージャーを目指す方は、既にこの経験をされているでしょうから問題ないかと思われます。
そして、経理の日常業務において、さらにあると良いスキルは、給与計算や社会保険に関する知識です。
給与計算や社会保険の手続きは、一般的には人事労務部門が行うものですが、人件費や社会保険料の数値を経理が確認する場面が多々あります。
そのとき、給与計算や社会保険の知識がないと、人件費や社会保険料に関する数値分析ができませんので、経理マネージャーを目指す方にとっては、必須のスキルとも言えます。
(意外と、給与計算や社会保険に関する知識を持っていない経理マネージャーがいます)
この経理の日常業務ですが、経理マネージャーになると、直接自らが携わることはなくなります。
ただし、部下から日次業務に関する相談もされますので、自社の経理では、どのような流れで日次業務が行われているかをしっかり理解しておく必要があります。
経理の月次決算の経験
ほとんどの会社では、毎月月次決算を実施しているかと思われます。そして経理では日々の取引をまとめて月次決算を通じて損益の集計を行います。
そこから、当月の損益状況の分析として、
・前年同月との比較
・予算との比較
を行って、会社の業績動向をチェックしていきます。
さらには、月次損益状況などの報告書の作成も行います。
そして月次決算は、役員への報告が必要であり報告期日も決められています。
経理マネージャーは、この月次決算による、
・毎月の損益状況の実施状況の把握
・前年同月や予算との比較分析の実施
・役員などへ報告
といった業務を期日内にこなしていかなければなりません。
特に分析業務は、経理マネージャーにとって必須の仕事であり、
「月次決算の数値が前年同月や予算と比較し、どうして増減しているのか?」
について、常に疑問に思うクセをつけておく必要があります。
会社の月次決算の損益数値を見て、なぜこのような実績数値になったのかを疑問に思い、そして自分なりに分析してみる、これが経理マネージャーになる一歩です。
四半期・期末決算業務
どの会社でも期末に年間の決算を実施します。上場企業であれば、四半期ごとに決算を行います。
そして、四半期・期末決算では、決算特有の調整仕訳や税金計算など、専門的な経理処理が必要になります。
経理マネージャーは、この専門的な経理処理の仕方について理解していなければ、四半期・期末決算を締めることができません。
実際には、部下がこの決算の経理処理を実施すると思われますが、専門的な仕事であるがゆえに部下だけでは対応できず、プレイングマネージャーとして自らも決算の経理処理を行わなければならない場合もあります。
経理マネージャーとしては、四半期・期末の専門的な経理処理の理解は必須といってもいいでしょう。
この四半期・期末決算は、会計や税務の知識も必要であり、実際に経験しなければわからないことも多いため、経理マネージャーを目指す方は、会計や税務の勉強と実務経験が必要になります。
高い情報収集スキル
経理マネージャーは、常に情報収集を行われなければなりません。
会計基準や税法に関する情報収集はもちろんのこと、市場動向や同業他社の業績、最新のIT技術といったことを理解するための情報収集が必要です。
会計基準、税法改正に関する情報収集
毎年、会計基準の変更や税法改正が行われますが、その内容について自ら情報を収集し、自社への影響把握をするのが経理マネージャーの役割です。
最新の会計基準の状況や税法改正動向を把握するため、毎週専門雑誌をチェックするなどして、欠かさず情報収集を行う必要があります。
市場動向、同業他社動向に関する情報収集
経理マネージャーには、月次決算や期末決算で集計された自社の業績の状況を、役員やその他関係者に説明するという仕事があります。
その時、市場動向や同業他社の比較を織り交ぜながら、関係者へ自社の業績状況をわかりやすく説明しなければなりません。
このような説明をするためには、常日頃から新聞やネットの市場動向に関するニュースを読み解き、また、上場している同業他社の業績開示資料をチェックするなどして、情報収集する必要があります。
最新のIT技術に関する情報収集
最近の経理は、システムを利用するのが当たり前となっています。
エクセルなどの表計算ソフトでデータ加工するのはもちろん、会計システムや税金計算システムなど、あらゆる経理業務においてシステムを使って仕事をしなければなりません。
さらに今の経理では、RPAといった技術を使って、日々の単純作業を自動化するなど、ITを使った経理業務の効率化が急速に進んでいます。
このように、IT技術を使って経理業務を効率化するためには、最新のIT技術に関する情報を知っておかなければなりません。
経理マネージャーは、経理部門の業務効率を推進する立場でもありますので、こうしたIT技術に関する情報を収集して、常にITを活用した業務効率化について検討し続ける必要があります。
コミュニケーションスキル
経理担当者の場合は、どちらかと言えば業務を正確にコツコツとこなしていくのが大事です。
しかし、経理マネージャーになると、自部署の担当メンバーとのコミュニケーションのみならず、他部署、社外とのコミュニケーションも重要になってきます。
特に他部署や社外とのコミュニケーションがうまくいかず、情報共有が漏れたり意思疎通ができていないと、経理処理が遅れ、場合によっては間違った数値を使ったりして、経理の仕事で大きな問題を引き起こす恐れもあります。
経理マネージャーは、間違いなくスムーズに経理業務を進めるための舵取り役として、細かな配慮をして、自部署、他部署や社外との調整を行うためのコミュニケーションスキルが必要になります。
ITスキル
前述の「高い情報収集スキル」の項目では、経理マネージャーに必要な情報収集スキルとして「最新のIT技術に関する情報収集」についての解説をしました。
そして経理マネージャーは、IT技術に関する情報収集スキルのみならず、ITスキルも必要になります。
今の経理では当たり前ですが、エクセルなどの表計算ソフトを扱う際、関数やピボットテーブルなどを使える程度のスキルがないと、資料作成などができません。
また、自分から数値情報を入手するために、必要最低限のシステムを操作できるITスキルも必要です。
資料作成や数値情報の入手など、すべて部下に任せてしまえばよいと思う人もいるでしょう。
しかし実際は、部下も他の仕事を抱えており、業務を依頼してもすぐに対応できない場合もあります。
そういったときは自分でシステムを操り、作業しなければなりません。
常に新しいシステムを操作して業務効率を進めなければならない経理では、経理マネージャー自身もITスキルを身につけて、経理の業務効率に貢献する必要があります。
自社のビジネスと他部署業務の理解力
経理マネージャーは、次のステップとして部門のトップや役員を目指すといったことが考えられます。
そして部門のトップや役員になるには、自社のビジネス全体を理解しなければなりません。
特に、規模が大きい企業や事業を多展開しているような企業では、ビジネス全体の理解をするのは大変です。
しかし、部門のトップや役員を目指すためには、経理マネージャーのときからビジネス全体を理解できるよう勉強する必要があります。
さらに、経理マネージャーになると、他部署との意見調整や打合せを行う場も増えてきます。
そのとき、他部署がどのような業務を行っているのか理解が求められます。
(他部署の理解なしに、自部署の意見だけを押し付けると、業務が円滑に進まない場合が多々あります)
経理マネージャーには、経理業務だけの理解にとどまらず、他部署の業務も理解したうえで、仕事を進める能力が必要になります。
その他の経験スキル、経験
必須ではありませんが、経理マネージャーでも簿記などの経理の仕事に役立つ資格の取得をオススメします。
簿記などの資格の勉強をした経験があれば、経理の仕事に必要な資格はどのようなものか理解でき、部下にも資格の勉強を勧めることができます。
また、経理マネージャーになるためには、後輩の教育の経験もしておいてほしいところです。
ここでの教育は、仕事のやり方を教えるだけでなく、仕事を任せるといったところまで自ら進んで行うべきです。
経理マネージャーになると、否応無しに部下に仕事を任せることをしなければなりません。
(自分で仕事を抱えていたら、経理全体の仕事が回らなくなってしまいます)
経理マネージャーになる前から、他の人に仕事を任せるということに慣れておく必要があります。
まとめ
今回は、経理でマネージャーになりたいと考えている方に向けて、経理マネージャーにはどのような経験とスキルが必要かについて解説しました。
経理マネージャーに必要な「5つの経験・スキル」
1.経理業務の知識と経験
2.高い情報収集スキル
3.コミュニケーションスキル
4.ITスキル
5.自社のビジネスと他部署業務の理解力
正直なところ、すべての経験スキルを身につけるのは、難しいかもしれません。
しかし、これらスキルを身につけて、経理マネージャーの仕事を遂行すれば、スムーズに仕事を進められるだけではなく、将来の部門長や役員といったさらに上の管理職としての活躍も期待できます。
これらのスキルはすぐに身につくものではありませんので、日々コツコツとスキルを身につけ、経験を積んで、将来経理でマネージャーとして活躍できるように努力をすることが必要です。
執筆者情報/経理部IS
20年以上にわたり、上場企業とその子会社で経理業務を経験。
転職6回・複数の上場企業での経験を活かし、経理を中心とした仕事に役立つ情報をブログで発信中。
ブログ名:経理課長の仕事術 https://www.keiri-manager.com/