経理の仕事はどこの会社でも共通している部分が多く「転職に有利」「どこの業界でも働ける」と言われることがあります。確かに経理業務の基本となる部分はほとんどの会社で共通しており、業界や会社が変わっても対応できる部分が多くあるのは事実です。
では、大企業と中小企業では何か経理に違いがあるのでしょうか?今回はこのテーマについてみていきましょう。
会社における経理の役割
会社における経理の役割ー資金の管理を行う点は大企業でも中小企業でも変わりありません。会社に今いくらあるのか。今月はいくら支払う必要があるのか。そしていくら入金があるのか。このようなことを考えながら、残高・入金・出金の管理を行います。
大企業と中小企業における経理業務の違い
大企業と中小企業の経理では違っていることがあります。「人数」「業務内容」「システム」の3つの観点からみていきましょう。
人数
大企業と中小企業では経理の人数が大きく異なっています。中小企業ではバックオフィスにはあまり人員を割けません。売上の中心となる営業部門や製造部門に人員を集中させなければ経営が成り立たないためです。
そのため、中小企業では経理は数人程度が主流です。経理が一人しかいない、いわゆる「一人経理」の状態の方も少なくはないでしょう。経営者が経理を兼ねていたり経営者の家族が経理を手伝ったりしていて、経理だけを行う専任者がいない場合もあります。
一方、大企業の経理は違います。まず、経理と財務が明確に分かれています。人数も中小企業とはけた違いに違っており、十人以上~数十人で作業を分担して行っている会社がほとんどです。
業務内容
大企業と中小企業では経理の業務内容が若干異なっています。仕訳作成や経費精算、支払業務といった基本的な業務はどちらにも共通していますが、中小企業の方が業務内容が多岐にわたるケースが多いです。
中小企業では労務や総務まで経理で行っているケースがあります。給与計算を行ったり備品の発注をしたり。大企業では、給与計算は労務、備品の発注は総務や庶務が行っています。
また、税務についても大企業と中小企業では異なっています。大企業では、税務申告や税計算も企業内で行っていることがほとんど。社内に税理士や会計士といった専門家がいる企業もあります。
一方、中小企業ー特に経理の人数の少ない会社では税務関係は税理士事務所に外注している企業が多いです。一人経理の場合や経理の選任者がいない企業では、そこまで経理で行うことが難しいためです。労務を社労士事務所に委託していることもあります。
システム
大企業では経理の作業用シートにはMicrosoft社のExcelが活用されています。経理の募集要項に「Excelが使えること」と記載されていることも珍しくありません。一方、中小企業ー特にスタートアップやベンチャー企業では、作業用シートにGoogleのスプレッドシートが採用されているケースがあります。
また、大企業と中小企業では会計システムも異なっています。中小企業ではクラウド会計ソフトやインストール型の会計ソフトが主流。簡単に言うと「市販されている会計ソフト」です。
しかし、大企業では市販されていない自社開発の会計ソフトを利用しているケースがあります。親会社と子会社で共通して使えるシステムや、グローバルの会社や支店で共通して利用できるシステムなど、自社独自の要件によって自社で開発された会計ソフトが使われている場合があります。
尚、作業用シート・会計ソフトのどちらも大企業・中小企業ではこのような傾向が多いという意味で上記の通りまとめておりますが、システムに関しては企業規模よりも会社ごとのITへの対応度によるところが大きく、上記ケースに当てはまらない場合もあります。
大企業と中小企業の経理で共通している点
大企業と中小企業の経理には違いがあることがわかりました。続いてどちらにも共通している事項についてみていきましょう。
正確性が求められる
経理業務は正確性が求められる仕事です。これはどこの会社でも変わりはありません。家庭の家計簿であれば1円や2円ずれていても問題にはなりませんが、会社経理となると1円や2円でも原因を特定する必要があります。そのため、経理は正確性が求められる業務です。
経理業務はシステム化が進んでいる
パソコンやインターネットが普及するまで、経理業務はすべて手作業で行われていました。請求金額の計算は電卓で、仕訳の起票は複写式の仕訳帳で。しかし、今となってはそれは過去の話。大企業も中小企業も、経理業務はシステム化が進みつつあります。
請求金額の計算や請求書の作成はパソコンを使って行われることがほとんど。また仕訳の計上や決算書の作成も会計ソフトを通して行われています。
経理として習得しておきたいスキル
大企業にしろ中小企業にしろ、経理を行うなら習得しておくべきスキルがあります。
簿記
簿記は経理業務の要。簿記がわからなければ正確な会計処理を行うことはできません。
経理初心者の方は、まず日商簿記3級の取得を目指しましょう。日商簿記の3級では経理業務に必要な仕訳や決算書の基本を学ぶことができます。
IT
スマートフォンやタブレットの普及に伴い、若い方の中には「パソコンをあまり使用したことがない」という方もいますよね。しかし、経理業務にパソコンは必須。事前にパソコン操作には慣れておくようにしましょう。
また、経理では会計ソフトを利用して日々の経理処理を行っています。どのシステムを使うかは会社によって異なっていますが、基本的な事項は共通しています。そのため、何のソフトでも構わないので、一度会計ソフトを利用して基本的な流れを理解しておきましょう。
クラウド型の会計ソフトには、無料の試用期間が設けられていることがほとんど。個人の確定申告用であれば、法人でない個人でも利用が可能です。これらを用いて勉強してみるといいでしょう。
まとめ
大企業と中小企業の経理では、違っているところが数多くあります。しかし、「お金の管理を行う」という根幹は共通しています。
また、近年では経理業務には会計ソフトが利用されています。まだ使ったことがないという方は、一度無料版のソフトを試してみてくださいね。