租税公課は税金の支払や公共サービスの支払に対して利用する勘定科目です。この租税公課科目を消費税に対して利用するケースがあります。それは税込経理方式で消費税の決算処理、または納付を行うときです。
今回は「消費税の経理処理で租税公課勘定を利用するのはどのような場合なのか?」について詳しくみていきます。
消費税の経理処理で租税公課勘定を使うの?
消費税の経理処理で租税公課勘定を使うことはあるのでしょうか?「見たことがない」という方も多いのではないでしょうか。
消費税の経理処理で租税公課勘定を使うときは、税込経理方式で消費税の決算・納付処理を行うときです。そのため、税抜経理方式を採用している企業に勤めている方は租税公課を使って消費税の仕訳を計上することはありません。
税込経理方式と税抜経理方式についてはこちらの記事をご参照ください。
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そもそも租税公課勘定って何?
租税公課勘定とは、税金の支払いや公共団体のサービスに対する支払いを行ったときに利用する勘定科目のこと。「租税」と「公課」というふたつの言葉をひとつにしてできた勘定科目です。
租税:国や地方公共団体等へ支払う税金のこと
消費税、印紙税、自動車税、固定資産税、事業税、事業所税、登録免許税等
公課:国や地方公共団体等へ支払う手数料や罰金などのこと
住民票など証明書の発行手数料、税金の延滞税、商工会の会費等
租税公課の支払は非課税、あるいは不課税に該当するため、これらの支出に対して消費税は発生しません。
租税公課勘定を使った消費税の仕訳
税込経理方式では、消費税の納付の仕訳に租税公課勘定を使用します。
税込経理方式での日々の仕訳
まず始めに、税込経理方式での日々の仕訳をみていきましょう。税込経理方式では、消費税の額とその他の額を合算してひとつの仕訳とします。
【仕入時の仕訳】本体100,000円、消費税10,000円の商品を銀行振込払いにて購入した場合
仕入 110,000円 / 普通預金 110,000円
【売上時の仕訳】本体50,000円、消費税5,000円の商品を販売した場合
売掛金 55,000円 / 売上 55,000円
上記の通り「消費税」という言葉が仕訳に登場することはありません。税込経理方式では、仕訳に含まれる消費税額と売上に含まれる消費税額はどちらもパッと見ただけでは金額がわからないようになっています。
【原則】税込経理方式での決算時の仕訳
では続いて、決算の仕訳をみていきましょう。
決算とは言っても、税込経理方式では特段決算の際に消費税の仕訳を計上する必要はありません。その理由は、税込経理方式の場合消費税の納付の仕訳は「その申告書が提出された日の属する年又は事業年度」に計上することになっているからです。
納付すべき消費税等の額及び還付を受ける消費税等の額の計上時期は、原則として次のとおりです。
(1) 申告に係るもの
その申告書が提出された日の属する年又は事業年度
引用:国税庁|No.6513 簡易課税制度の適用と経理処理
そのため、原則的に消費税の納付の仕訳は翌期に計上することになり、決算時には何の仕訳も計上する必要がないのです。
翌期に実際に納付をしたときにこのような仕訳を計上します。
【納付時の仕訳】預かった消費税額10,000円、支払った消費税額5,000円の場合
租税公課 5,000円 / 普通預金 5,000円
売上など取引先等から預かった消費税額が支払った消費税額より多い場合、その差額を納税することになります。そのときに利用する勘定科目が「租税公課」勘定です。
もし中間納付を行っている場合、預かった消費税額-支払った消費税額から中間納付の金額も差し引いて納付を行うようにしましょう。
また、逆に支払った消費税額が預かった消費税額より多い場合、還付金を「雑収入」として益金計上します。
【例外】税込経理方式での決算時の仕訳
もし、翌期ではなく消費税が発生した期中に納付額を損金算入させたい場合、下記の処理を行うことで今期での損金算入も認められています。
なお、個人事業者が申告期限未到来の納税申告書に記載すべき消費税等の額を未払金又は未収入金に計上した場合には、その計上した年の必要経費又は総収入金額に算入することができます。
また、法人が申告期限未到来の納税申告書に記載すべき消費税等の額を損金経理により未払金に計上した場合又は収益の額として未収入金に計上した場合には、その計上した事業年度の損金の額又は益金の額に算入します。
引用:国税庁|No.6513 簡易課税制度の適用と経理処理
【決算時の仕訳】預かった消費税額10,000円、支払った消費税額5,000円の場合
租税公課 5,000円 / 未払消費税等 5,000円
【納付時の仕訳】
未払消費税等 5,000円 / 普通預金 5,000円
このように今期に未払を計上し、翌期の支払い時にそれを相殺することで今期の損金算入が可能となります。
まとめ
一般的に、租税公課勘定は税金の支払いや公共団体のサービスに対する支払の際に利用される勘定科目です。しかし、税込経理方式を採用している場合は消費税の納付時に租税公課勘定を利用する機会もあります。
原則的に、税込経理方式では消費税が発生した翌期に「租税公課」勘定を利用して消費税の納付を行います。もし消費税の発生した期と損金算入の期を同じにしたい場合は、未払勘定を利用することで翌期と相殺して処理をすることが認められています。
税込経理方式を採用している場合は、どちらの処理を利用するかを1期目に忘れずに検討するようにしましょう。