これからのバックオフィスのDX戦略!成功事例から学ぶポイント

バックオフィス業務を改善し、DX(デジタルトランスフォーメーション、以下DX)化を推進することは、多くの企業にとって大きな課題となっています。

アイティメディア株式会社が2020年6月に公表した「アフターコロナのバックオフィス業務に関する読者調査」によると、新型コロナウイルスが流行し、緊急事態宣言が出ている中でも出社していたという回答が多く集まりました。出社の主な理由としては、押印、郵便の受け取り、社外に持ち出せない業務上の機密事項があって、もともとリモートワークできる状況ではなかったことなどが挙げられます。

そもそも、なぜバックオフィスにDXが必要なのでしょうか。今回はバックオフィスのDX化が進まない理由や、バックオフィスの各部門におけるDXの実施事例を解説します。

1.バックオフィスとは

バックオフィスとは、企業において、営業やマーケティングといった顧客に直接対応する部署を支援する部署や業務です。主に以下の業務や部門が、バックオフィスに該当します。

事務・管理業務、経理、会計、総務、庶務、人事、情報システム管理部門など

売上には直接貢献しませんが、これらの業務は会社の円滑な運営に不可欠です。経理担当者が領収書の金額を間違えて帳簿に入力してしまうと、正確な収支を管理できなくなったり、会社内で使用中のイントラネットにトラブルが発生したとき、情報システム管理者がいないと、仕事が進まなかったりするといったことが起きます。

ちなみに、営業や販売、マーケティング、カスタマーサポート、製造業における開発、製造、生産など、顧客に直接関わる部門を「フロントオフィス」と呼びます。

2.バックオフィスでDXが進まない理由

バックオフィスのデジタルトランスフォーメーションの動きは、アメリカや中国をはじめとした国の企業を中心に活発化しています。日本においてもデジタルトランスフォーメーションの推進は急務ですが、日本の企業は海外と比較して遅れをとっているのが現状です。

ではなぜ、日本のバックオフィスでDXが進まないのでしょうか。

社員のスキルが追いついていない

技術の進化に伴い、ITツールで対応できるバックオフィスの業務が増えてきました。仮にITツールをバックオフィス業務に導入したとします。それによって発生した余剰人員を他の部署に異動させようとしたとき、異動先の業務内容によっては、これまで身につけてきた経験や知識が全く活かせないといった事態が起きます。

確かに人員が不足している部署へは、他の部署から人員を回せばいいと考えるでしょう。しかし単に社員を配置転換すればいいわけではなく、DXはリストラとセットにして考えざるを得ないことが大きなネックになっています。

部署ごとに設計されたシステム

バックオフィスのDXが進まないもう1つの理由は、ERP(業務基幹システム)系に対する問題です。

2018(平成30)年9月に、「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」というレポートを経済産業省が発表しました。レポートには、日本でDXが起きなければ、2025年以降年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性があること(2025年の崖)、部門ごとに構築され、カスタマイズもされている既存の情報システムを、全社で統合や切り替えをしたくても困難であること、現状使っている情報システムのうち、2025年までにサポートが終了することで、それまで働いていたエンジニアが職を失うことなどが記されています。

社内にエンジニアがいる場合、新しいシステムを導入しながら技術や知識を学んでもらえばいいと考えるかもしれませんが、システムの内容によってはエンジニアで対応できないこともあるのです。また、部署ごとに存在するERPを統一するにもコストがかかるので、そうした点からもバックオフィスのDXがなかなか進みづらくなっています。

3.バックオフィスのDX成功事例

ここからは、バックオフィスにDXを導入した成功事例をご紹介します。

人事・労務関連

人事の仕事内容には、採用・退職、教育・研修、管理統制、労務に関する業務が挙げられます。企業によっては採用・退職、教育・研修を人事部門が担当し、管理統制、労務に関する業務を総務部門が担当しているケース、総務部門と人事部門を兼ねた部署を置いているケースもあります。

株式会社ビズリーチが提供する「HRMOS(ハーモス)」シリーズは、従業員管理や人事評価・採用にAI(人工知能)とクラウドを実装しています。AI(人工知能)の技術の一つである機械学習に、人事評価など働きぶりを追跡調査したデータを学習させ、応募してきた候補者に対する評価を予測するものです。候補者にとって最適な職場やポジションを弾き出し、離職率を下げることを目指します。

経理関連

経理は企業の営業活動による取引を記録し、会社内部、外部の関係者に決算書を公開することが仕事です。帳簿の作成事務、請求関係事務、現金・在庫等の各種管理事務、決算・納税関係事務などを担います。

株式会社マネーフォワードは、財務経理部門の業務に「マネーフォワード クラウド会計Plus」をはじめ、以下のITツールを導入しています。

財務会計:マネーフォワード クラウド会計Plus
販売管理:Salesforce
請求書 :マネーフォワード クラウド請求書
債権管理:V-ONEクラウド
経費精算:マネーフォワード クラウド経費
管理会計:Manageboard
税務申告:達人シリーズ

また、自社開発のクラウドサービスをさまざまな企業のバックオフィスに提供。経費精算や取引内容の転記作業、通帳から明細の転記作業、仕訳入力なども自動化することで入力ミスを防ぎ、正確かつ迅速な決算書類などの作成に貢献しています。

参考記事:【セミナーレポート】上場企業の事例から学ぶ 経理・財務部門のDX推進とは

法務関連

法務関連部署は法的リスク管理の観点から、会社の権利や財産、評判などを守る機能を持つ部署です。契約審査や紛争対応、企業倫理遵守(コンプライアンス)プログラムの策定と実施への支援、労務や知的財産権などの専門知識を要する業務、日常的な取引、新規事業、M&Aなどのさまざまな局面で、法的リスクの洗い出しや解決策の提案などを行います。

行政手続のオンライン化、契約書のペーパーレス化(電子契約)や脱ハンコ、電子署名(電子サイン)といった契約業務のデジタル化が、法務業務にとってはDXといえるかもしれません。これらのサービスは企業だけでなく法律関連の事業所でも導入されています。

電子署名に関しては、日本では弁護士ドットコムが運営する「クラウドサイン」やAdobeSignNINJA SIGNなどが有名です。また、電子署名法や電子帳簿保存法といった法律の整備も進んでいます。

4.DXを成功させるポイントは?

DXを進めたいとき、社内の環境整備をおろそかにしていたり、目的が曖昧なまま突っ走ってしまったりケースがあります。こうした場合、実際のDXを推進する過程で、だいたいつまずいてしまいます。

DXの全体像を理解し、向かうべき方向について経営者やDX推進者だけでなく、全従業員が認識を共有することが求められます。また頻繁に変わる業務に対応できるよう、自分がこれまで身に着けてきた技術を、常に最新のものにバージョンアップしていかなくてはなりません。

また、DXでは業務改革をする側とされる側の区分が曖昧になります。システムを入れた後に、情報システム部門からレクチャーを受けたのち、トラブル発生時に情報システム部門の担当者を呼び出していました。しかし、これからは情報システム部門に完全に頼り切るのではなく、自分たちでも軽微のトラブルであれば対処できるようにしておきましょう。

5.まとめ

顧客と直接関わることはなくても、企業の意思決定に大きく関与するバックオフィス業務の大半は、紙とハンコが求められます。また、バックオフィス業務で長く経験を積んできた社員が、バックオフィス業務以外の部署に異動しても、ゼロから業務を覚えなければならず、DXと社員のリストラをセットで考える必要が生じます。

実は日本の中小企業やベンチャー企業ではDXが進んでいます。採用活動や育成にコストをかけられないので、「AI(人工知能)やRPAなどを取り入れたITツールを業務に活用しよう」という考えからです。一方大企業は、バックオフィス業務を担う子会社を設けており、多くの社員が手作業で業務を行っています。

DXを成功させるには、「改革が必要である」という問題意識を全社員で共有すること、たびたび追加されたり変更になったりする業務に柔軟に対応するために、常に技術をブラッシュアップさせていくことが大切です。

 

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