DX(デジタルトランスフォーメーション)のメリットと5つのステップ

新型コロナウイルス感染症の拡大防止と経済活動の継続のため、政府は企業に対してテレワークの推進を積極的に推奨しました。それに伴い、テレワークに取り組んだ企業に対しては助成金の支給、テレワークの推進を妨げる要因にもなっている「書面、押印、対面」の代替手段として、電子契約サービスや電子署名も有効とする「押印についてのQ&A」の発表など、企業の感染症対策をバックアップしています。

経理は、紙の書類と押印に深く関わることの多い業務です。しかし、テレワークに対応している部署や業種がある中で、経理業務のデジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション、以下DX)はなかなか進んでいないのが現状です。

1.DXとは?

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略です。

DXの定義にはいろいろありますが、経済産業省がリリースしている、DXに関するさまざまなレポートには「(DXは)企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」としています。

詳しくは、こちらの記事もご参照ください。【DX入門】デジタルトランスフォーメーションを分かりやすく解説!

経理業務でDXが進まない理由

冒頭でもお伝えしましたが、経理の仕事は、紙ベースでの文書処理と押印の発生する機会がとても多い業務です。また、お金の出入りという、企業にとっては機密というべき情報を扱っており、担当者が変わるたびに、全てのデータは新しい担当者に引き継がれるので、担当者以外に情報が共有されることはありません。

こうした特徴は、そのまま経理業務におけるDXの導入を阻害する要因にもなっているのです。

経理業務に関しては、興味深いレポートがあります。MF KESSAI株式会社は、2020年4月に、会社役員及び経理担当者を対象に、緊急事態宣言後のテレワークへの実施状況を調査しました。その結果、経理担当者の8割が出社していたこと、先ほど述べた経理業務の特徴が背景にあることが明らかになりました。

2.経理でDXを実現した各社事例

ここからは、実際に経理にDXを推進した企業の事例をご紹介します。

カルビー株式会社

カルビー株式会社は、お菓子の開発から製造・販売を手掛ける会社です。2014年から全社でDXに向けて動き始め、2016年に立ち上がった「業務標準化プロジェクト」では、2年かけて問題点や課題を洗い出していったのです。

本社の経理部門の場合、プロジェクトが立ち上がった頃は以下の点が課題として挙げられていました。

  • 請求書の支払依頼や諸経費の精算書が全国の拠点から、毎月1万ほど紙で送られていた。
  • 伝票は全て手作業で処理していた。
  • チェック段階での差し戻し+再チェックなど、経理に従事する社員に大きな負荷がかかっていて非効率である。

こうした課題に対して、もともと社内で運用されていたグループウェアのNotesを置き換え、新ワークフローシステムの導入と業務の簡素化を同時に実施。結果、伝票処理の約2%を、人のチェックの必要がない自動処理への置き換えに成功しました。

株式会社セゾン情報システムズ

株式会社セゾン情報システムズは、情報処理サービス、ソフトウェア開発事業を展開している会社です。

プロジェクト発足当初は、経理部門の慢性的な人材不足、多く残る紙ベースのアナログ業務などの問題を抱えていました。

こうした状況を変えるために2019年9月にプロジェクトを立ち上げ、ペーパーレス化をはじめとした業務改革に着手しました。するとわずか半年で業務量を約3割削減、年間6,400枚の紙削減などを実現。結果、新型コロナウイルスの感染流行下でも、他部署同様に経理部門もテレワークへ移行できています。また、期末決算業務も全てリモートワークで進めています。

3.経理業務でDXを進めるメリット

「ペーパーレス化」がキーワードとなる、経理業務のDXの事例をご紹介しました。具体的な数字や事例を見て「経理でもDXできるのか」と驚かれた方も多いかもしれません。では経理業務がDXを実現する場合、どんなメリットがあるのでしょうか。

(1)決算の早期化

決算の早期化とは、決算処理を早い時期に終えておくこと、つまり月次決算を作成したら、間を置かず次の決算の作成に着手することです。決算業務を前倒しすることで、経理担当者にかかる負担を軽減すると同時に、他の業務へ人員を配置可能です。

会計システムや経費精算システムの導入により、経費の精算処理と仕訳処理が自動で行えます。また、クラウド上で全てデータ連携できるため、決算業務をはじめ経理の業務効率化にもなります。

(2)ペーパーレス化の実現

請求書や領収書は全て紙で保管をしていました。特に請求書は法人であれば、税の申告日から7年間、証憑書類の保存が義務付けられています。税務署の許可などいくつか条件がありますが、紙ではなくデータで保管することで、書類を探す手間が省けるうえ、保管場所も狭くできます。

(3)コスト削減

人件費カット、残業時間の削減を可能にします。また、ペーパーレス化やクラウドサービスを活用することで、印刷や書類管理、オフィスの賃料や光熱費、従業員の交通費も削減できるでしょう。

(4)リモートワークの推進

紙書類の電子化、クラウドサービスの利活用により、経理業務に従事する社員のリモートワークの推進を実現。経理業務は専門知識が求められる仕事であり、スキルの高い人材の採用も可能です。

4.DXを取り入れるための5つのステップ

ここからは、経理業務にDXを取り入れるための5つのステップを解説していきます。

(1)フローの整理と課題の洗い出し

まずは業務フローの整理と、効率化を妨げている課題の洗い出しを、部門ごとにヒアリングしながら行います。例えば以下の業務には、客観的な目で見ると非効率な部分が思いのほか多いので、こうしたところからデジタル化に置き換えられるかどうか考えていきましょう。

  • 紙ベースを基本とする業務
  • FAXのやり取りが発生する業務
  • 人手による入力作業
  • 確認作業が多い業務など

その際、業務マニュアルや自社規程、システムフローなど、業務フローが記載されている資料の有無を確認しましょう。もし資料がなければ、業務に携わっている従業員へのヒアリングや業務の実態調査などをもとに作成しましょう。

(2)DX化する理由を明確化

例えば、コスト削減なのかデジタル化なのか、感染防止対策なのかなど、DX化する目的が明確でなければ、単なる社内活動の一環で終わってしまう可能性が高くなります。

DX推進のプロジェクトに参加することになったら、この点を念頭に置いてDXに臨みましょう。

(3)ワークフローの整備

DX推進の流れやルール、システムの選定、承認者と責任者を定め、自社の規程として制定するといったワークフローを整備します。大企業の場合、多くの従業員に向けた細かなワークフロー作りが必要ですが、中小企業の場合いくつもワークフローを作る必要はありません。

(4)従業員に新ワークフローを浸透させる

新しいワークフローを従業員に浸透させます。導入したシステムの使い方を示しながら、自社の運用ルールを理解してもらいます。初期段階では、不明な点があれば情報システム部門に尋ねるといったフローを設けておくのもいいでしょう。

(5)定期的にフローを見直す

ミーティングを設定するなどして、定期的にワークフローを見直していきましょう。導入当初を振り返る場を設けることで、想定されていなかったトラブルや問題点を洗い出したり、さらなるプランを検討したりできます。

5.まとめ

経理業務へのDXの導入は、日本企業ではまだ進んでいません。DXの推進のきっかけにコロナ禍が挙げられますが、あくまで経理業務へのDX化を検討するきっかけにすぎず、今後は企業が競争に勝ち抜くために必要になるでしょう。

経理では以前の処理方法を参考にするので、非効率な部分やコストがかかる従来の慣習を踏襲してしまうケースが多いようです。DX推進が社内で決まれば、業務フローを見直してみましょう。経理部門へのDXの導入で、業務効率化と生産性の向上、本来の仕事である経営への提言に注力できるでしょう。

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