「決算」という言葉はよく聞きますが、具体的にどんなことをするのか?分かりずらいものです。
実際に経理部門で決算を担当していない限り、決算というものがなにかを理解するには難しいです。
さらに決算には、年次決算と月次決算の2つの種類があります。
年次決算と月次決算は、それぞれ目的や業務の流れが違っており、このあたりも決算を理解するのに難しく感じられるところです。
そこで今回は、「決算」を理解できるよう、年次決算と月次決算にスポットを当てて詳しく解説していきます。
決算とはどのようなものかを理解することができますので、是非チェックしてみてください。
そもそも決算とは?
そもそも決算とはなんでしょうか?
決算を簡単にわかりやすく説明すると、以下のとおりとなります。
・集計した結果を書類にまとめ、社内外に開示すること
一定の期間で、
・会社はどれだけ売上を上げて利益を計上したのか?
一定の期間の末日に、
・会社にどのような財産が残っているのか?
このような情報を集計して書類にまとめ、集計した数値を分析し、社内外に開示する業務が会社の「決算」です。
決算の種類と目的
決算には、「年次決算」と「月次決算」という2つの決算があります。
月次決算と年次決算は目的、実際に行う業務の内容も違います。
ここでは、それぞれの決算の内容とその目的について詳しく解説していきます。
※上場企業などでは、「四半期決算」という決算も行っています。これは主に大手の上場企業が行っているものですので、今回の記事では解説を省略します。
年次決算とは?
年次決算とは、1年を単位として会社の業績や、財産の状況を集計することをいいます。
この年次決算は、基本的に会社法ですべての会社が行うことを義務付けられています。
さらに、法人税法においては、決算を行って税金計算した後、税金を納付することも求められています。
このように、年次決算は法律で義務付けられているため、会社では必ず実施しなければならないのです。
年次決算の目的
年次決算には、様々な目的があります。
① 1年間の業績や年度末の財産の状況を把握するため
② 翌年度の事業戦略、経営方針を決めるため
③ 外部関係者(株主や金融機関など)へ会社の決算状況を開示するため
④ 税金計算をして、税金を国や地方に納税するため
このように、年次決算には様々な目的があり、すべての目的を達成するために決算が行われます。
1年間の取引を整理し、会社の業績や財産の状況を集計するには時間がかかります。
さらに税金計算をして、その税金を納付することや、外部関係者へ決算状況を開示することなど、やらなければいけないことがかなり多いのが年次決算の特徴です。
経理の担当者としては、決算業務は1年間で一番重要な仕事になります。
月次決算とは?
月次決算とは、月次という名称のとおり、毎月決算を行うことを言います。
月次決算では、一か月単位で会社の業績や、財産の状況を集計します。
この月次決算は、会社が任意で行うもので、法律などで義務付けられているものではありません。
年次決算のように法律などで義務付けられているものではないため、どちらかといえば簡易的に決算を行うものとなります。
月次決算の目的
月次決算には次のような目的があります。
① 1か月間の業績や年度末の財産の状況を把握するため
② 毎月の業績を分析して、翌月以降の業績改善や経営方針を決めるため
③ 月ごとの経理処理をチェックし、ミスを修正するため
月次決算は、毎月の業績分析や翌月以降の経営方針を決定するために行う決算という側面があります。
また、月次決算で集計した業績や財産の状況は、基本的には外部へ開示するものではなく、社内だけで使用されます。
経理部門においては、月次決算を行うことで、毎月の経理処理にミスがないかチェックすることもできます。
月次決算は、法律などで義務付けられていないため、実施する必要はありません。(あくまで任意です)
このため中小企業では、月次決算は手間がかかるなどの理由から実施していないことも多かったようです。
しかし、現在では業績分析や経理処理ミスのチェックなどを行うことためにも、月次決算を実施する会社は増えており、月次決算が重要視されています。
年次決算で行うことは?
年次決算でどのようなことを行うのか、具体的な流れを確認していきましょう。
1.決算整理の実施
決算整理とは、勘定科目の残高を整理、チェックするということです。
例えば、
・現金、預金残高のチェック
・棚卸資産の現物の実査
・売掛金や買掛金の残高確認
・仮払金などの仮勘定で処理していたものを、最終的に計上すべき科目へ振替する
このように、勘定科目の残高に問題がないかチェックし、必要あれば正しい残高へ修正するなど、勘定科目残高を整理します。
さらに、会計基準で定められている以下の処理を、年次決算で実施することもあります。
・棚卸資産の時価評価
・投資有価証券の時価評価
・固定資産の減損
・税効果会計の処理
このような会計基準で定められている決算処理は、専門的な知識が必要な場合も多く、事前にどのような処理をすべきかを理解しなければならないことに注意が必要です。
2.税金の計算
年次決算では、税金計算を行わなければなりません。
・法人税の計算
・住民税や事業税といった地方税の計算
・消費税等の計算
これらの税金は、年に1回税額の計算をする必要があります。
税金計算は、各種税金の申告書を作成して計算をします。
そして税金の計算をした後は、作成した申告書を国や地方自治体へ提出し、税金の納付を行います。
※税金の申告・納付は基本的に、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に行わなければならないとされています。(届出を提出して1か月延長することも可能)
3.決算書などの書類の作成
年次決算では、決算状況を外部関係者へ開示するために必要な書類を作成しなければなりません。
その書類とは、
・貸借対照表
・損益計算書
・販売費及び一般管理費明細
・製造原価報告書
・株主資本等変動計算書
・個別注記表
・事業報告
・勘定科目内訳明細書
といったものです。
これらの書類は、税金の申告に添付したり、株主総会に提出する書類にもなりますので、必ず作成しなければなりません。また書類は基本的に会社法などで定められた、一定の様式で作成する必要があります。
年次決算のポイント
年次決算で作成した各種書類は外部関係者へ提出する必要があります。
そして各種書類の提出には期限があります。
税金の申告書は、基本的に事業年度終了の日の翌日から2か月以内と決められています。
貸借対照表や損益計算書などの決算書は、一定の監査手続きを経て株主総会開催前までに株主へ提出します。
このように、年次決算で作成した各種書類は、期限内に外部関係者へ提出しなければなりません。
そして期限内に各種書類を提出するには、提出期限から逆算して、年次決算でやるべきことをスケジュール化していかなければなりません。
各種書類の提出期限に間に合わない場合は、外部関係者に迷惑をかけるだけではなく、ペナルティーを課させる場合もありますので、注意が必要です。
しっかりとしたスケジュールを立てて業務を行うことが、年次決算では一番重要なポイントとなります。
月次決算で行うことは?
月次決算で行うことは具体的にどんなことでしょうか。
月次決算の進め方を確認しながら、どのようなことを行うか確認していきましょう。
1.勘定科目の残高チェック
毎月の勘定科目の残高をチェックし、問題がないか確認します。
例えば、
・現金、預金残高のチェック
・棚卸資産の現物の実査
・売掛金や買掛金などの残高チェック
現金や預金の残高は、現金を数えたり通帳残高をチェックして、帳簿と一致しているか確認します。
棚卸資産などの在庫に関しては、帳簿と実際の在庫数が一致しているか確認します。
売掛金の残高チェックにより、入金遅延がないか、売上が正しく計上されているかを確認します。
買掛金の残高チェックでは、支払処理が漏れていないか、仕入れ処理が正しく行われているかを確認します。
このように、月次決算では日々発生する取引が正しいかどうかをチェックします。
勘定科目の残高チェックをすることで、年次決算の業務を軽減することもできます。
毎月、漏れなく勘定科目の残高チェックをすることが、月次決算では重要になります。
2.決算書の作成
月次決算では、外部関係者へ決算状況を開示する必要はありません。
しかし、社内で毎月の会社の業績や財産の状態を確認するために、決算書を作成する必要があります。
・貸借対照表
・損益計算書
この決算書は、年次決算に限らず月次決算でも作成します。
3.分析資料の作成
月次決算では、経営に必要な業績や資金管理のための分析資料を作成します。
・予算実績比較表
・前期実績比較表
・部門別の損益管理表
・資金繰り表
このような業績や資金管理の分析資料は、会社の実情に合わせて独自に作成します。
(これらの分析資料は、特に法律などで定められておらず、必要だと思うものを会社が自由に作成します)
月次決算のポイント
勘定科目の残高チェックや決算書の作成は年次決算でも実施しますが、作成する書類が少なかったり、税金計算をする必要がなかったりと、年次決算に比べると簡易的な決算となります。
また、外部関係者へ書類を提出する必要もありません。
代わりに分析資料の作成が必要になります。
その月の業績を分析して、翌月以降の経営方針をどうするか決めるためにも、月次決算では分析資料の作成が重要です。
経営者は、方針を早く決めて次の対策を行うためにも、月次決算での分析資料を早く欲しいと思っていますので、この分析資料をできるだけ早く作成できるようにすることが、月次決算での一番のポイントとなります。
まとめ
今回は、「決算」とはなにかを理解できるよう、年次決算と月次決算にスポットを当てて解説しました。
年次決算と月次決算の違い、目的、どのように行われるのか、基本の流れを詳しく説明してきました。
年次決算と月次決算では目的や実施する業務の内容が異なります。
そしてどちらの決算でも期日があり、その期日に間に合わせるため、できるだけ早い決算業務が求められます。
年次決算と月次決算は、どちらも会社にとって重要な業務です。
しっかり内容を理解して、期日内に完了できるよう、月次、年次決算業務を確実に進めていきましょう。
執筆者情報/経理部IS
20年以上にわたり、上場企業とその子会社で経理業務を経験。
転職6回・複数の上場企業での経験を活かし、経理を中心とした仕事に役立つ情報をブログで発信中。
ブログ名:経理課長の仕事術 https://www.keiri-manager.com/