会計監査では何が行われているのでしょうか。これから初めて監査を受ける方にとっては「何を見られるのだろう?」「自分は何を準備すればいいのだろう?」など不安に感じていることがたくさんありますよね。
今回は監査初心者の方に向けて会計監査の基礎についてみていきます。監査人が調査する項目や事前準備についても触れていますので監査前の再確認にも利用できます。
1.会計監査とは
まず始めに、監査には「会計監査」と「業務監査」の2つがあります。今回は「会計監査」に特化して内容をみていきます。
会計監査とは、企業や行政組織によって作成された財務諸表や計算書類の内容を確認する行為です。虚偽がないか、重大な間違いがないかなどを第三者の立場からみていきます。
一言に「会計監査」といっても種類があります。これらの監査はそれぞれ違った立場の第三者によって行われています。
- 外部監査(公認会計士や監査法人)
- 内部監査(会社や組織内の監査人)
- 監査役監査(監査役あるいは監査委員会)
2.会計監査が義務となる企業とは
会計監査には法令で実施が義務付けられているものとそうでないものがあります。
内部監査は法令で義務付けられているものではありません。しかし、上場審査を受ける際には内部統制評価を行うことが必須事項になっています。そのため、上場している企業にとっては実質義務のようなものであると言えます。
一方、外部監査と監査役監査は法令により実施が義務付けられています。監査役監査は会社の規模に関係なくすべての株式会社が対象となっています。そして、外部監査は上場している大企業(資本の額が5億円以上、または負債の部が200億円以上)のみが対象となる監査です。
3.会計監査で調査される項目
会計監査ではどのような調査が行われているのでしょうか?調査項目は下記9項目に分類されます。どれも決算で経理が行っている基本的な行為の確認になります。
貸借対照表・損益計算書の確認
貸借対照表と損益計算書の内容が妥当かどうか確認します。科目が合っているのかや、総勘定元帳と整合性がとれているのかなどをみていきます。
売掛金・買掛金の残高確認
決算を越えて残っている売掛金・買掛金の取引先に残高証明書を発送し、それに取引先が把握している残高を記載して返送してもらうことで、会社が把握している売掛金・買掛金の額が合っているのかどうか確認します。
現金・預金・借入金の残高確認
金庫にある現金を数えたり、銀行から預金・借入金の残高証明書を入手したりします。会社が把握している残高が合っているのかどうか確認するためです。
伝票の確認
伝票が適切に計上されているかどうか確認していきます。責任者の承認が行われているかや証憑に基づき正しい計上がされているかなどをみていきます。
経理処理状態・帳簿組織・各種システムの確認
経理に関わる事項を確認していきます。各種システムと経理システムとの連携が正確に行われているかどうか、また経理担当者が十分な経理知識を有しているかどうかを確認します。
勘定科目の確認
試算表に計上されている科目が妥当か、また不明な勘定科目がないか、不明な残高がないか等を確認します。
固定資産の処理の確認
固定資産に関する処理を確認していきます。取得した固定資産が正確に計上されているか、減価償却が正しく行われているか、売却・除却が正確に実施されているか等がチェック事項です。
各種引当金の確認
賞与引当金・退職給与引当金・貸倒引当金といった引当金の計上が正確かどうか確認します。
実地棚卸の確認
商品や材料などの棚卸を行います。会社が行う棚卸に監査人が立ち会います。
4.会計監査のスケジュール
会計監査には期中監査と期末監査があり、一番重要なのは期末監査です。期末監査は、その期の試算表や決算書類を元に行われます。
つまり、監査対象となる期の決算が締まらなければ実施することができません。そのため、期末監査の時期は会社によって異なります。
いつが決算なのか、そして決算日からどのくらいの日数で各種書類を作成し決算を締めることができるのかによって変わってきます。3月末が決算日の企業かつ大企業の場合は、4月末~5月にかけて行われることが多いです。
会計監査には実査がセットで行われています。実査とは、会社が行った実施棚卸を元に決算日に残っている商品や材料、現金などの数や種類を実際に確認することです。そうすることで、監査の際に確認する試算表に記載されている上記資産が実在しているのか・金額が合っているのかを確認します。
実査は期末日当日またはその翌営業日など、会社の期末日からそう間を開けずに実施されます。換金性の高い資産がほとんどない場合などには実施されないこともあります。
5.会計監査前に準備しておくこと
会計監査の前には3.会計監査で調査される項目で必要となる資料を用意する必要があります。このような資料が一般的です。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 総勘定元帳
- 仕訳データ
- 請求書や領収書といった証憑
- 残高証明書
- 固定資産台帳
- 棚卸表
- 各種契約書
また、監査人は必要に応じてヒアリングを実施します。そのため、経理担当者は3.会計監査で調査される項目や上記資料の内容に精通している必要があります。不明点は事前に確認しておくようにしましょう。
6.まとめ
会計監査は上場している企業にとっては受ける必要のあるものです。監査人が何を確認したいのかを事前に把握することで、監査をスムーズに進めることができます。監査を受けることになる経理担当者は事前に各種資料の用意や内容の把握を行うようにしましょう。