今回は源泉徴収義務についてみていきましょう。
源泉徴収といえば「給料から引かれているもの」というイメージの方が多いのではないでしょうか。実はこの源泉徴収は、サラリーマン以外の方にも関係のある制度なのです。
源泉徴収とは何なのか?源泉徴収義務とは誰にあるのか?この記事で詳しくみていきましょう。
源泉徴収とは?
源泉徴収とは、給与を支払う事業者がその支払いの際にあらかじめ所得税を差し引いて相手に支払うことを言います。源泉徴収制度とも呼ばれています。
事業者は源泉徴収にて預かった所得税を個人に代わって納税します。源泉徴収にて預かった所得税のことは源泉所得税と呼ばれています。
2037年までは所得税に加えて復興特別所得税も徴収することになっています。復興特別所得税とは、東日本大震災の復興に充てられる税金です。
参考:国税庁|個人の方に係る復興特別所得税のあらまし
源泉徴収義務者とは?
源泉徴収は給与や賞与、税理士報酬等の支払いの際に行う必要があります。そして、この源泉徴収を行うべき事業者のことを源泉徴収義務者と言います。
差し引いた源泉所得税は、給与や報酬の支払月の翌月10日までに納付を行う必要があります。雇っている従業員が10名以下の場合は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」を行うことで半年に1回の納税とすることもできます。
源泉徴収義務者には法人だけでなく個人事業主も該当します。例えば、従業員やアルバイトを雇用している場合がそうです。
次の章でもっと詳しくみていきましょう。
参考:国税庁|No.2502 源泉徴収義務者とは
参考:国税庁|[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請
個人事業主が源泉徴収義務者になる場合とは
個人事業主が源泉徴収義務者となるケースは大きく分けて2つ。
・従業員やアルバイト・パートを雇用し給与や賞与を支払っているケース
・青色事業専従者に給与を支払っているケース
正社員・アルバイト・パートタイムなどを雇い給与の支払いを行っている場合、支払うべき給与や賞与から源泉徴収を行う必要があります。そして青色事業専従者とは、青色申告を行っている個人事業主と生計を同じくする親族のこと。こちらの場合も同じく源泉徴収をする必要があります。
源泉所得税の計算方法
会社員の方は給与からいろいろ税金が引かれているのを見たことありますよね。このような源泉徴収は会社(雇い主)が行ってくれていたはず。それと同じことを、個人事業主が雇い主の場合も行う必要があるのです。
給与の源泉所得税額は給与額や社会保険料等の控除額、扶養家族等の人数を元に給与所得の源泉徴収税額表(月額表)から計算します。賞与や退職所得についても知りたい場合は、下記国税庁のリンクを参考にしてください。
参考:国税庁|令和2年分 源泉徴収税額表
個人事業主が源泉徴収義務者になったら
従業員へ給与の支払いを開始してから1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出しましょう。
参考:国税庁|[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
源泉徴収義務者ではない個人事業主も源泉徴収に関係することがある
「給与を支払っていないから源泉徴収は自分には関係ない」そう思ってしまいがちですが、実は源泉徴収義務者以外の個人事業主の方も源泉徴収に関わることがあります。
それは外注や業務委託で報酬の支払いを受けているケースです。次章のような報酬を受け取る仕事をしている個人事業主の方は、取引先から支払いを受ける際源泉徴収が行われた後の額を受け取ることになります。
源泉徴収の対象となる報酬
源泉徴収をすべき報酬はこのように定められています。
- 原稿料や講演料など
- 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
- 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
- ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
- プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
- 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
参考:国税庁|No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは
上記の中から、個人事業主が該当していることの多い報酬を具体的にあげるとこのようなものになります。
- 記者やライターへの原稿料
- イベントやセミナーの講演料
- 弁護士、公認会計士、税理士、司法書士等への報酬
- デザイナー、イラストレーターへのデザイン料
- カメラマンへの撮影料
源泉徴収するべき金額の計算方法
上記報酬に該当する業務を外注している企業は、報酬額から源泉所得税額を引いた額を相手に支払うことになります。源泉所得税額は基本的に請求書を発行する個人事業主が計算し、請求書に記載します。
しかし、源泉徴収が必要な報酬だと気づかなかった・知らなかったなどの理由で個人事業主が請求書を発行するときに源泉徴収を忘れてしまうこともあります。取引先から指摘があった場合は、報酬額から源泉所得税額を引くように記載した請求書を再発行するようにしましょう。
源泉所得税額は、報酬の種類によって計算方法が変わってきます。例えば原稿料や講演料等の場合、計算式はこのようになっています。
報酬額100万円以下のケース
報酬額×10.21%(0.21%は復興特別所得税)
報酬額や報酬の種類によって詳細は異なりますので、計算の際は下記国税庁のホームページを参考にするようにしてください。
参考:国税庁|No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき
参考:国税庁|報酬・料金などの源泉徴収
まとめ
源泉徴収義務は法人だけでなく個人事業主の方も対象になります。給与や報酬を支払っている個人事業主の方は、支払額から源泉徴収を行い国に納める必要があります。
源泉所得税の計算式は、支払いの種類によって異なっています。計算する際は国税庁のホームページを参照するようにしましょう。