源泉所得税の基本と経理初心者が注意すべき3つのポイント

今回は源泉所得税についてみていきます。源泉所得税については「給与明細でみた」「よくわからないけど給与から引かれている税金」という印象を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

源泉所得税は、給与や賞与といった従業員への支払い時に会社が支払額から税金額の徴収を行い、従業員に変わって納税を行ってくれる税金です。また、従業員への支払い以外にも原稿料や弁護士への支払いなど報酬として支払った場合でも必要となってきます。

この記事では、源泉所得税の基本と経理初心者が間違いやすい3つのポイントについて解説します。

源泉所得税とは?

源泉所得税とは、従業員の給与やある特定の報酬の支払いの際に会社側が支払額から税金額を徴収して納める必要のある税金のことです。

 

源泉徴収と源泉徴収義務者

源泉所得税は所得税の一種。所得税とは、個人が稼いだ所得に対して課税される税金です。1年間でいくら稼いだかによって税率が変わっており、確定申告を通して税金額を申告することになります。

しかし、1年分まとめて所得税を支払うと金額が大きくなり個人に負担がかかってしまうことになります。そのため、源泉所得税として支払額から天引きすることで、一度にかかる負担の軽減をしているのです。

この支払額から税金額を徴収し会社が代わりに納税することを「源泉徴収制度」と言います。そして、源泉徴収を行わなければならない者を「源泉徴収義務者」と呼んでいます。

源泉徴収義務者には、従業員に給与を支払う法人や個人事業主が該当します。またそれだけでなく、源泉徴収を行う必要のある報酬を支払う法人や個人事業主も含まれます。

 

従業員と源泉所得税

従業員として会社に勤めている方は、源泉所得税を給与明細の項目で目にしたことがあるでしょう。

毎月の給与額を元に徴収額が算定され、会社が従業員に変わって毎月国に納付をしてくれています。毎月の給与だけでなく、ボーナスや退職金からも源泉所得税は徴収されています。

 

給与以外にも必要!源泉徴収が必要な報酬とは

給与計算にかかる源泉所得税の計算は「社労士事務所に委託している」「労務担当者が行っている」という会社も多くあります。

しかし、そういった会社でも経理と源泉所得税には大きなかかわりがあります。それは「給与以外からも源泉所得税を徴収する必要がある」ため。従業員が対象ではない部分でも源泉徴収は必要となってくるのです。

まずはどのようなものが該当するのかみていきましょう。

 

源泉徴収が必要となる報酬

源泉徴収はこのような報酬に対しても行う必要があります。

 

(1) 報酬・料金等の支払を受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲

・原稿料や講演料

・弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金

・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬

・プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金

・映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金

・ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金

・プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金

・広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

 

(2) 報酬・料金等の支払を受ける者が法人の場合の源泉徴収の対象となる範囲

・馬主である法人に支払う競馬の賞金

参考:国税庁|No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは

 

この中でも特に見かける機会が多いのが、税理士報酬・弁護士報酬・原稿料・講演料といったものでしょう。これらの支払いの場合も、給与と同じように源泉徴収を行う必要があります。

 

報酬の源泉所得税の税率

報酬の源泉所得税の税率は基本的には以下の通りとなっています。

 

【報酬額100万円以下】

源泉徴収額=報酬額×10.21%

 

【報酬額100万円以上】

源泉徴収額=報酬額×20.42%-102,100円

一部報酬については算定式が異なります。また、給与や賞与の計算式も報酬の場合とは異なっています。そのため、計算時には国税庁のホームページを参考にしてください。

参考:国税庁|令和2年分 源泉徴収税額表

 

源泉所得税の納付期限

徴収した源泉所得税は、報酬を支払った月の翌月10日までに納付する必要があります。その際は納付書、またはe-Taxを通じて申告を行います。

 

報酬の源泉所得税の納付には「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」を利用します。ただし、税理士・会計士・弁護士・社労士等の士業報酬の場合は「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」を使用します。こちらは給与や退職所得の源泉所得税と一緒に記載・納付が必要となります。

参考:国税庁|納付書の記載のしかた(報酬・料金等の所得税徴収高計算書)

 

経理が特に注意すべきはここだ!3つのポイント

ここから先は経理初心者が源泉所得税を取り扱う際に間違いやすいポイントについてみていきます。

 

1.支払先が個人か法人か

報酬を支払う場合、支払先が「個人」なのか「法人」なのかしっかりと確認するようにしましょう。

税理士報酬やライターへの原稿料など上記(1) 報酬・料金等の支払を受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲に該当する支払いを行う場合、その支払先が法人であれば源泉徴収を行う必要はありません。

その理由は、下記に規定されている通り対象が個人となっているから。法人は対象外となっています。

(1) 報酬・料金等の支払を受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲

フリーランスや個人事業主として働いている方の中には、法人として個人で会社を経営していることがあります。そのため、支払い時には契約が個人で行われているのか法人で行われているのか確認する必要があります。

 

経理初心者の方が見落としがちなポイントとなりますので、ここはしっかり覚えておくようにしましょう。

 

2.税込・税抜どちらに税率をかけるかはケースバイケース

源泉所得税を計算するときは、原則として税込の報酬額に源泉所得税率を掛けて計算します。

しかし、請求書内で明確に報酬額と消費税額が分かれて明記されている場合は、報酬額に源泉所得税率を掛けて計算することが認められています。つまり、請求書に消費税がどのように記載されているかによって、計算方法が変わってきます。

報酬の請求書をチェックする際は、消費税がどう記載しているか確認するようにしましょう。

 

3.支払い相手のマイナンバーが必要になる

報酬の支払いによる源泉徴収を行った場合年末に支払調書を作成する必要があります。

支払調書とは、税務署に提出が求められている法定調書のひとつ。報酬の場合は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」が正式な名称となります。報酬を支払った年の翌年1月31日までに所轄税務署へ提出しなければなりません。

この支払調書には、支払額や源泉徴収額の他にも記載すべき項目があります。それは支払先の住所・氏名・マイナンバーの3つです。

支払先の住所・氏名は契約書や請求書で確認が取れますが、マイナンバーはそうはいきません。個人情報保護委員会のガイドラインに従った方法で収集を行う必要があります。

支払調書の提出間際になってマイナンバーの回収を行っていないことに気が付いたのでは、支払調書の提出期日に間に合わなくなってしまうことがあります。年間のスケジュールをきちんと立て、余裕をもってマイナンバーを回収できるよう注意しましょう。

参考:国税庁|No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等

 

まとめ

源泉徴収は給与以外にも必要な制度。個人や士業への報酬支払い時には忘れずに徴収するようにしましょう。経理初心者の方が間違いやすいポイントも3つありました。「個人か法人か」「税込か税抜か」は請求書1枚ごとに正確に確認をするようにしましょう。

マイナンバーは取扱いに注意が必要な情報です。社内でしっかりとした管理体制を築いた上で回収をするようにしましょう。

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