法人税の中間申告とは?申告義務のある法人は要チェック!

法人税や地方税には、中間申告の制度があります。
この中間申告制度とは、簡単にいうと「税金の前払い制度」のことです。

今回は、法人税や地方税の中間申告制度について解説していきます。

加えて、2020年4月1日以後に開始する事業年度から電子申告義務化に関する制度変更がありました。
この電子申告義務化が中間申告にどのように影響するかについても解説します。

申告義務のある法人の担当者は、念のため確認しておくことをおすすめします。

法人税や地方税の中間申告制度とは?

まず、法人税や地方税の中間申告制度とは何かを確認していきましょう。

中間申告制度とは、「税金の前払い制度」のことをいいます。
年の途中で税金を前払いし、決算が確定した段階で、不足の部分を支払って精算するという制度です。

そしてこの中間申告制度には、2つの種類があります。

予定申告
仮決算による申告

法人は、2つのうちいずれか1つを選択して、法人税や地方税の中間申告をする必要があります。

そしてこの中間申告制度では、事業年度開始の日以後6ヵ月を経過した日から2ヵ月以内に納税(=中間納付)する必要があります。
例えば、3月決算の場合は、11月末までに中間納付をする必要があるということになります。

予定申告とは?

法人税や地方税の中間申告制度の1つに、予定申告というものがあります。

この予定申告とは、前事業年度の決算時に納付した法人税額をベースに、中間納付額を計算して申告納付するというものです。

この中間納付額は、以下の算式で計算されます。

中間納付額 = 前事業年度の確定法人税額 ÷ 前事業年度の月数 ×6

基本的には前事業年度の法人税の2分の1の額が、中間納付額となります。

また予定申告は、以下の2つのメリットがあります。

・中間納付額が10万円以下であれば、申告・納税は不要です。

・納付だけすれば、申告をしたことになります(みなし中間申告)

この予定申告ですが、作業的にも簡易であるため、 法人の約99%がこの予定申告を選択しているといった状況にあります。

仮決算による申告とは?

法人税や地方税の中間申告制度には、予定申告以外で仮決算による申告を選択することもできます。

この仮決算による申告とは、 事業年度開始の日以後6ヵ月間を1事業年度とみなし、納付すべき法人税額を計算して申告納付するものです。

つまり通常の決算と同じように、税金計算をして決算書や法人税の申告書を作成する必要があります。

この仮決算による申告は、

期末決算と同じ作業を中間期にも行う必要があるため、かなり手間がかかる。

・仮決算による中間申告税額が、全事業年度の確定法人税額の12分の6(=予定申告の税額)を超える場合には、仮決算による中間申告ができない。

といった特徴があります。

この仮決算による申告ですが、 直近では法人の1%程度が、仮決算による申告を選択しているといった状況にあります。
ということは、ほとんどの会社は仮決算による申告はしていないということです。
(仮決算による申告の場合、作業が煩雑になるため選択しない会社が多いと思われます)

ただし、仮決算で税額を計算した結果、

仮決算で計算した税額 < 予定申告の税額(前年の2分の1)

となった場合は、資金繰り・資金流出の観点から仮決算による申告を選択した方が有利になります。
(当期に業績が大きく悪化し、できるだけ直近で資金を流出させたくない場合は、仮決算での申告を選ぶこともあります。)

仮決算による申告の注意点

仮決算による申告は、以下の2つの注意点があります。

①電子申告義務化【制度変更】

2020年4月1日以後に開始する事業年度から、資本金1億円超の大法人に対して、法人税、消費税、地方法人税、法人住民税及び法人事業税の電子申告が義務づけられています。

電子申告の義務化ですが、以下の点に注意が必要です。

・仮決算による中間申告においても電子申告が義務付けされている。

・電子申告では、申告書だけでなくその添付書類(財務諸表、勘定科目内訳明細書等)も、電子申告が義務づけられている。

2020年4月1日以後に事業年度を開始している会社で資本金1億円超の大法人は、仮決算による中間申告を選択する場合、電子申告しなければならないという点に注意が必要です。

さらに、申告書に添付する財務諸表や勘定科目内訳明細等も一緒に、電子申告する必要があります。

電子申告対応が済んでいない資本金1億円超の大法人は、至急電子申告の準備をする必要があります。

②仮決算による中間申告の事業税対応

前事業年度の確定法人税額の12分の6(=予定申告の税額)を超える場合には、仮決算による中間申告ができないことになっています。
これに対し、事業税は提出先の都道府県ごとに、この判断しなければならないとされています。

分かりずらいので、事例を用いて解説してみましょう。

⇒例えば、前年度の事業税が、

・東京都へ納付 100
・大阪府へ納付  80

といった場合に、予定申告による納付額を計算すると、

・東京都へ納付 50(100×6÷12=50)
・大阪府へ納付 40(80×6÷12=40)

となります。

一方、仮決算による事業税の額が、

・東京都 40
・大阪府 45

と計算されたとしましょう。

この場合、大阪府は、仮決算による事業税の額の45が、前事業年度の税額80の12分の6(=40)を超えているため、仮決算による中間申告ができないことになります。

仮決算で計算した税額 45 > 予定申告の税額 40

この結果、東京都では仮決算による申告ができるものの、大阪府では予定申告しか認められず、都道府県によって異なる方法で中間申告をせざるを得ない状況となってしまいます。

このように、仮決算による中間申告は、実務上作業が煩雑になる可能性があるので注意が必要です。

まとめ

法人税や地方税の中間申告は、2つの種類があります。

予定申告
仮決算による申告

そして、法人の約99%は予定申告を選択しています。

さらに仮決算による申告は、以下の2点にも注意が必要です。

・2020年4月1日以後に開始する事業年度から資本金1億円超の大法人は、電子申告が義務化され、仮決算による中間申告においても電子申告が必要。

・前事業年度の確定税額の12分の6(=予定申告の税額)を超える場合には、仮決算による申告はできないが、事業税は提出先である都道府県ごとにこれを判断する必要がある。

法人税や地方税の中間申告は、「予定申告」/「仮決算による申告」それぞれの制度内容を理解したうえで、どちらを選択すべきか慎重に判断しましょう。

 

執筆者情報/経理部IS
20年以上にわたり、上場企業とその子会社で経理業務を経験。
転職6回・複数の上場企業での経験を活かし、経理を中心とした仕事に役立つ情報をブログで発信中。

ブログ名:経理課長の仕事術 https://www.keiri-manager.com/

 

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