経理実務に携わる方は、「経過勘定科目」という言葉を耳にしたことがあるかと思います。
一般的には、未収収益・未払費用・前受収益・前払費用を総称して、経過勘定科目といわれます。
経理実務では、この経過勘定科目を使わなければならない取引がたびたび発生します。しかし、この経過勘定科目の使い方で悩まれる経理担当者も多いようです。
そこで今回は、4つの「経過勘定科目」未収収益・未払費用・前受収益・前払費用それぞれの内容と、経理処理における注意点についてわかりやすく解説していきます。
未収収益とは?
未収収益とは、
一定の契約に従い継続して役務の提供を行う場合、既に提供した役務に対していまだその対価の支払を受けていないものをいう。
このように定義されています。
例えば、未だ入金がない貸付金利息を未収計上するときに、未収収益という科目を使います。
仕訳例:未収収益/受取利息
金銭の貸付は一定の契約に従い、継続して役務の提供が行われます。
この金銭の貸付という役務の提供が行われた結果、利息を受け取ることになるのですが、その利息の入金が未だされていない場合、未収収益の科目を使って受取利息を計上することになります。
上記、金銭の貸付のように、
・一定の契約に従い継続して役務の提供を行う取引であること
・その役務の提供がすでに行われていること
・その役務の提供に対する入金がまだ行われていないこと
このような場合には、未収収益の科目を使って収益を計上する必要があります。
未収入金との違い
未収収益と混同される科目として、未収入金があります。
経理処理の際、未収収益で計上すべきなのに、間違って未収入金で計上することがあります。
未収入金は、
通常の営業取引以外の取引により発生する債権で、短期間にその入金が予定されているもの。
と定義されています。
例えば、車両などの固定資産を売却し、未だ入金がない場合には、未収入金という科目を使います。
仕訳例:未収入金/車両運搬具
この未収入金は、固定資産や有価証券など営業取引以外の資産を売却し、その後短期間に入金が予定されている場合に使われる科目です。
このように、取引内容によって未収入金と未収収益を使い分けする必要がありますので、混同しないように注意してください。
未払費用とは?
未払費用とは、
一定の契約に従い継続して役務の提供を受ける場合、既に提供された役務に対して未だその対価の支払が終らないものをいう。
このように定義されています。
例えば、給与や社会保険料等の未払があった場合、 未払費用という科目を使って未払額を計上します。
仕訳例:給与/未払費用
給与などは一定の契約に従い、継続して行われる労働という役務の提供に対して支払われるものです。
この労働という役務の提供が行われた結果、給与を支払うことになるのですが、その給与がまだ支払われていない場合、未収費用の科目を使って未払給与を計上することになります。
上記、給与のように、
・一定の契約に従い継続して役務の提供を受ける取引であること
・その役務の提供をすでに受けていること
・その役務の提供に対する支払がまだ行われていないこと
このような場合には、未払費用の科目を使って費用を計上する必要があります。
未払金との違い
未払費用と混同される科目として、未払金があります。
経理処理の際、未払費用で計上すべきなのに、間違って未払金で計上することがあります。
未払金は、
通常の営業取引以外の取引により発生する債務で、短期間にその支払いがなされるもの。
と定義されています。
例えば、一時的な経費などの支払の際、代金が未払になっている場合には、未払金の科目を使用します。
仕訳例:経費/未払金
この未払金は、固定資産の取得や経費の発生など、物やサービスの提供をすでに受けているが、未だ支払がされていない場合に使われます。
このように、取引内容によって未払金と未払費用を使い分けする必要がありますので、混同しないように注意してください。
前受収益とは?
前受収益とは、
一定の契約に従い継続して役務の提供を行う場合、まだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。
このように定義されています。
例えば、来月の家賃を1か月前に振り込んでもらうような場合、この家賃は収益とせず、前受収益として計上します。
仕訳例:現金預金/前受収益
住宅などの貸付は、一定の契約に従い継続して行われます。
そしてこの住宅などの貸付という役務の提供が行われた結果、家賃を受け取ることになります。
しかし、来月の家賃を先に受け取ってしまっているような場合、来月にならないと収益計上ができないため、代わりに前受収益の科目を使うことになります。
上記、住宅などの貸付のように、
・一定の契約に従い継続して役務の提供を行う取引であること
・その役務の提供がまだ行われていないこと
・その役務の提供に対する入金が先に行われていること
このような場合には、前受収益の科目を使って入金処理する必要があります。
前受金との違い
前受収益と混同される科目として、前受金があります。
経理処理の際、前受収益で計上すべきなのに、間違って前受金で計上することがあります。
この前受金ですが、商品の売買などを行ったとき、先に代金だけを支払ってもらい、後で商品を渡すような場合に使います。
このように、取引内容によって前受金と前受収益を使い分けする必要がありますので、混同しないように注意してください。
前払費用とは?
前払費用とは、
一定の契約に従い継続して役務の提供を受ける場合、まだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。
このように定義されています。
例えば、1年分の保険料を一括で支払った場合、保険は支払い後1年間効力があります。
支払い後、残り1年間はまだ保険対象期間を経過していないため、保険料として費用計上できません。
この未経過の状態の保険料は、前払費用として計上する必要があります。
仕訳例:前払費用/現金預金
前払費用は、保険料の他に、借入金利息(割引料を含む)、社債利息及び地代家賃等を前払いした際にも使われます。
上記、保険料のように、
・一定の契約に従い継続して役務の提供を受ける取引であること
・その役務の提供をまだ受けていないこと
・その役務の提供に対する支払が先に行われていること
このような場合には、前払費用の科目を使って支払処理する必要があります。
前払金との違い
前払費用と混同される科目として、前払金があります。(前渡金ともいわれます)
経理処理の際、前払費用で計上すべきなのに、間違って前払金で計上することがあります。
この前払金ですが、商品を仕入れたりサービスを受ける前に、一時的に代金を先払いする場合に使います。
このように、取引内容によって前払金と前払費用を使い分けする必要がありますので、混同しないように注意してください。
まとめ
今回は、4つの「経過勘定科目」未収収益・未払費用・前受収益・前払費用の内容と、経理処理における注意点について解説しました。
特に4つの「経過勘定科目」は、他の科目と混同して間違って使われる場合があるため注意が必要です。
他の科目と混同されやすい科目一覧
① 未収収益 ー 未収入金
② 未払費用 ー 未払金
③ 前受収益 ー 前受金
④ 前払費用 ー 前払金(前渡金)
この経過勘定という科目ですが、経理初心者に限らず、ベテラン経理マンもどの科目を使えばいいか判断に迷うことが多いようです。
確かに、取引内容によって科目の使い方が異なるため難しく感じるかもしれませんが、正しい経理処理を行うためにも、今回の内容をしっかりと理解していただければと思います。
執筆者情報/経理部IS
20年以上にわたり、上場企業とその子会社で経理業務を経験。
転職6回・複数の上場企業での経験を活かし、経理を中心とした仕事に役立つ情報をブログで発信中。
ブログ名:経理課長の仕事術 https://www.keiri-manager.com/