オンラインイベント「2023年以降の「請求書の未来」を徹底議論」レポート

2020年9月24日にオンラインイベントとして開催されたセミナー「完全電子化なんてムリ⁉2023年以降の「請求書の未来」を徹底議論」に現役経理である筆者が参加。

今回はそのセミナーの概要をご紹介していきます。

 

イベント名:完全電子化なんてムリ!?2023年以降の「請求書の未来」を徹底議論

開催日時:2020年9月24日

主催:株式会社ROBOT PAYMENT

ゲスト:オートメーションラボ株式会社

 

請求書は今後どうなる?(前半パート)

セミナー前半は株式会社ROBOT PAYMENT執行役員 藤田 豪人氏による請求書の今後についての解説でした。要約は下記の通りとなります。

 

電子帳簿保存法について

電子帳簿保存法とは、国税関係書類の電子保存を認める法律です。2005年からスキャナでの証憑の読み込みを可能とするスキャナ保存制度も開始。

 

2020年10月の改正

2020年10月1日にはこの電子帳簿保存法の更なる改正が行われます。変化点として大きなものは請求書・領収書をPDFで受領した場合の保存要件の緩和です。

今まではタイムスタンプの付与が必須となっていましたが、今回の改正により受領者側でデータ改変不可なシステムを利用していればタイムスタンプを付与していなくても保存が認められることになりました。

法律の要件をクリアしているシステムであれば、例えそれがクラウド上であっても電子帳簿保存法に適用しているとして電子データでの証憑保存が可能となったのです。これはクレジットカードの利用履歴にも適応されます。

 

インボイス制度について

インボイス制度は正確には適格請求書等保存方式と言います。この制度は2023年10月1日から適用される予定ではありますが、まだ法律が固まっていません。そのため、「このようなものです」という概念の説明が入りました。

インボイス制度とは、概念では「要件を満たす請求書を発行することで正確な経理処理を可能とする」ためのものです。正確な経理処理を可能とするために、適格請求書が用いられます。

適格請求書とは、仕入税額控除が認められる仕様の請求書のこと。明細単位で商品名や税率が記載されており、何に何%の消費税率がかかりいくらの消費税が発生したのかが明確にわかる請求書となります。スーパーやコンビニのレシートを思い浮かべていただけるとわかりやすいでしょう。

消費税の納付義務のない売上高1,000万円以下の企業でも、インボイス制度が開始された場合、インボイス制度に適用した請求書管理を行う必要が出てきます。もし行わない場合は、仕入税額控除が認められないリスクがあります。そのため、支払う税額が増え利益が減少してしまう可能性があります。

 

「2025年の崖」について

2025年の崖とは、この頃になると各社が利用しているレガシーシステム(基幹システム)が老朽化し、さまざまな問題が発生してくるというもの。

老朽化に伴いOSがレガシーシステムに対応しなくなったり、メンテナンスコストの発生やデータのブラックボックス化が懸念されています。これにより、日本経済全体で被る経済的打撃は12億円とも言われています。

 

ディスカッション:2023年以降の請求書の未来とは(後半パート)

後半はオートメーションラボ株式会社CEO 村山氏と藤田氏によるディスカッションパート。「2023年以降の請求書の未来とは」をテーマに請求書について議論が繰り広げられました。

 

以下、主だったところをご紹介します。

 

①請求書の電子化は現状どう?

藤田氏:現状受け取り側からの「請求書は紙で発行してください」という要望が強く、請求書の電子化にはインボイス制度が適用されるまでかかるのではと感じています。

これに対して視聴者からリアルタイムで質問がありました。

視聴者からの質問:請求書の電子化とは「請求書をPDF化」するという意味でしょうか?

藤田氏:それは「電子化に何を求めるか」によって変わってくると思います。

 

藤田氏と村山氏の考える「請求書の電子化」とは

【第一歩】押印の必要がなくなり、PDF化することにより紙および保存場所がなくなりどこででも発行・受領できる状態

【第二歩】計算や明細の作成を行うところからすべてシステムを利用した状態

この二段階で考えられていました。また、第二歩目についてはインボイス制度が開始されるまで難しいだろうとの考えです。

 

②請求書電子化までの壁

村山氏:請求書の電子化には課題があります。

 

インボイス制度を見据えた請求書の電子化を進めていくためには、請求書のフォーマットの統一が必須。

インボイス制度に適用した請求書を作ろうとすると、今まで以上に請求書に含まれる情報は増えてきます。請求書にどのような情報を含むべきか、どのようなシステムを利用して請求書を発行してくべきか考え、日本全体である程度統一が取れる形に請求書のフォーマットを整えることが必要になってきます。

しかし、これは自社が1社だけで考えたのではどうしようもない問題です。

 

藤田氏:請求書のフォーマットについては、大手請求書発行ベンダーが集まって議論を開始したばかりです。

藤田氏によると、請求書発行システムを提供している企業が集まって検討をスタートしたそう。これによって、これらのシステムを利用して請求書を発行している企業間では請求書のフォーマットがある程度統一されていくと想定されます。

 

③請求書電子化までのリミットはいつ?

村山氏:リミットはないとも言えます。自社内で困ってきたらリミットでしょう。

 

お二人共通の認識として「紙で請求書をください」という外圧が「データで請求書をください」という外圧に変わるときがリミットと言えるものだと考えられています。

電子化しないことで請求書の受け取り手から嫌がられるようになり、社内で困ってきたらいよいよ請求書の電子化は進んでいくでしょう。

 

④軽減税率の経過措置はいつ終わる?

国税局と打合せすることもある藤田氏に対して、村山氏から全国の経理を代表するかのような質問が飛びました。

 

村山氏:で、消費税8%の経過措置はいつ終わるのですか?

藤田氏:(明確な回答は得られていないので)私見になりますが、しばらく終わらないのでは。

 

藤田氏によるとこれからの消費税は

・10%のものが分離して、その中の一部だけ消費税が上がるのか?

・現在10%のものが一律全部上がっていくのか?

この点に注視する必要があると語られました。

 

どちらにせよ軽減税率の対象となるものがどんどん増えていくため、請求書の発行を計算から電子化(システムを利用して発行)していかないと請求書の発行自体が難しくなってくるのではないかと感じているようでした。

 

⑤実際請求書の完全電子化はできるのか?

最後にこのイベントのテーマである「(請求書の)完全電子化なんて無理⁈」についてお二方の意見を聞くことができました。

 

村山氏:PDFレベルならできるでしょう。

    データtoデータは技術的な側面がクリアできれば可能だと思います。

    そのためには、請求書のプラットフォームを作る側や政府が協力することが必要です。

 

藤田氏:正直なところ世の中全部はムリだと思っています。

    会計ソフトが普及して長年経っているにも関わらず、いまだに紙で帳簿を付けている会社が存在しています。そのことを考えると完全電子化は厳しいのでは・・・。完全電子化が進む業界とそうならない業界と分かれると思います。

 

両者ともに「完全な電子化(=計算からシステムを利用して発行)」は厳しいとの見方でした。

 

最後に

今回のイベントでは、請求書のこれからについて法的な解説と世間の動きの両面について聞くことができました。

特に今後の動きについて聞くことができたディスカッションパートは、自社の方向性を固めていく上で参考になった経理の方も多いのではないでしょうか。他社の動きはこのような機会でもなければなかなか情報が入ってこないもの。

請求書を取り巻く環境は今後もどんどん変化していくと考えられます。今後もさまざまな機会を通じて情報収集を行っていきましょう。

 

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