「今まで紙でやり取りしていた請求書・領収書を電子データに切り替えたい」そんなときに読んでいただきたいのがこちらの記事です。
現役経理の観点から、請求書・領収書を電子データ化して電子帳簿保存法に適用させていく際の注意点を記載しています。
請求書・領収書の電子化とは?
電子帳簿保存法の要件を遵守することによって、今まで紙で保存していた請求書や領収書を電子データで保存することができます。それに伴い、そもそも最初から紙に印刷する必要もなくなります。取引先への送付も電子データで行うことができるからです。
「電子データ化する」とはExcelやクラウド会計ソフトなどを利用してパソコン・タブレットなどの電子機器で請求書・領収書を作成し、電子ファイルとして保存すること。この電子ファイルを取引先へメールや各種ツールを利用して送付することで、作成~送付まで一貫して電子での取引が可能になります。
請求書・領収書を電子化するメリット
コスト削減
請求書・領収書を電子に切り替えることによって、紙代や印刷代、印刷にかかっていた人件費を削減できます。併せて取引先への郵送代や受領した書類の保管料も削減可能。
スピード化
費用以外の面では、取引先とのやり取りをよりスピーディーに行うことができるようになります。今までは請求書を郵送するのに1~3日必要としていましたが、メールで送付すると数秒後には相手が確認できる状態になるからです。
受け取ったレシートや紙の領収書はどうする?
領収書を電子化すると言っても、レシートや紙の領収書は発生し続けます。自社から発行する領収書はすぐに電子化できても、これらの紙はどうすればいのでしょうか?
そんな方には「スキャナ保存制度」の適用をおすすめします。スキャナ保存制度の要件を満たした形での電子化ができるようになると、受領した紙のレシートや領収書をスマホ撮影し申請することで保存ができるようになります。このような電子データ化の方法もあるのです。
請求書・領収書を電子化するときの注意点
さて、こちらからは本題の「請求書・領収書を電子化するときの注意点」についてです。まずは請求書・領収書、どちらでも共通して注意すべきポイントになります。
1.取引先へ電子化することを事前に連絡する
いつも紙で送られてきていた請求書や領収書が突然メールで送られてきたら、取引先がびっくりしてしまいますよね。また驚くだけでなく、メールに気づかずに紙の書類が届くのを待って処理が止まってしまうかもしれません。
そうならないためにも、紙から電子データでの発行に移行する際には事前に取引先に連絡するようにしましょう。
2.改ざんできない電子データで発行する
みなさんの会社では、請求書をどんなシステムで発行していますか?Excelを活用している会社、クラウド会計システムや請求書発行システムを利用している会社、Googleスプレッドシートを使っている会社などさまざまかと思います。
そのどれを使って請求書を作成しても法的に問題はありません。ただひとつ気をつけなければいけない点は、請求書を取引先へ送付する際には改ざんできない電子データに変換して送付することです。
ExcelやGoogleスプレッドシートを利用して請求書を作成するのは簡単です。あらかじめ設定したフォーマットを利用し、会社名や金額を変更すれば新しい請求書が作成できます。
そしてそれは取引先にとっても同じこと。変更可能な電子データで請求書を発行してしまうと、取引先で意図的に変更が加えられたり、また誤って上書き保存をしてしまったりといったミスの誘発に繋がってしまいます。
そのため、請求書を取引先へ送付する際は改ざんできない電子データへ変換した上で送るようにしましょう。PDF化することが一般的です。
【請求書】の電子化での注意点
続いては請求書の電子化で注意すべき点になります。自社から発行する請求書の電子化は比較的容易に行うことができます。
角印を電子データ化し押印する
請求書に押されている角印や社印と呼ばれるハンコ。これには法的効力はありません。
しかし、日本社会は長年ハンコ文化でした。そのため、商慣習で押すことを半ば強要される流れがまだ残っています。社内の規程や規則で角印が押されていない請求書は受け取れない・処理できないという会社もあります。
そういった会社でも受け取ってもらえるようにするため、請求書を電子データ化する際には角印も電子データ化し、データ上で押印するようにしましょう。
【領収書】の電子化での注意点
最後に領収書の注意ポイントです。領収書は、自社から発行するものについては電子データ化はそう難しくありません。請求書と同じように電子データで作成し、相手方に送付するだけ。
一方、取引先から受け取った領収書を電子データとして保存するのにはハードルが上がります。領収書やレシートは電子データに比べまだ紙でのやり取りが多く、紙で受け取ることが多いからです。このような場合は「スキャナ保存制度」を活用し電子データ化するようにしましょう。
1.印紙は不要になる
この注意点は良い注意点です。自社から領収書を電子で発行する場合、印紙を添付する必要がなくなります。そのため、印紙代を節約することができるのです。
収入印紙は印紙税法により添付のルールが定められています。その印紙税法をさらに細かく解説した印紙税法基本通達第44条には「課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し」との記載があります。
ここでは「用紙等」の部分がポイントとなってきます。電子データは用紙等には該当しません。そのため、電子文書として発行された領収書には印紙の添付が不要となるのです。
上記のことから、領収書を電子データ化する際には印紙が不要となるため注意しましょう。より詳細にこのことについて知りたい方は、国税庁の下記2文書を読んでみてください。
参考:国税庁
コミットメントライン契約に関して作成する文書に対する印紙税の取扱い
請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について
2.スマホ撮影したレシートをすぐに捨てない(スキャナ保存制度)
受け取ったレシートをスマホで撮影し、その画像を使って経費精算や旅費の精算ができるスキャナ保存制度。受け取ったレシートを破棄することができるとても便利な制度です。
しかし、気をつけなければならない点があります。それは、スマホでレシートを撮影してもすぐに捨てることはできないということです。
撮影された画像データはインターネットやシステムを通して別の人間が確認をすることになります。その際に、写真のできばえがスキャナ保存制度の要件を満たせていないことも多々でてきます。そうなると、その画像は電子帳簿保存法に則っているといえないため再度撮り直す必要がでてきます。
そのため、スマホ撮影したレシートをすぐに破棄してしまうと後々再撮影することができなくなってしまいます。スキャナ保存制度の運用を社内で開始する際は、この点をしっかりと社員へアナウンスするようにしましょう
3.写真の撮り方に気をつける(スキャナ保存制度)
ひとつ上の注意事項と繋がりのある注意事項です。スマホでレシートを撮影する際は、きれいな写真になるよう気をつけましょう。
例えば暗い場所での撮影でレシートの文字が読めなかったり、コーヒーやお茶で汚れてしまっていたり。レシートに近づきすぎて全体が撮影できていないこともあるでしょう。
このような状態ではスキャナ保存制度として申請することはできません。「どのような写真を撮ればいいのか?」も社員教育の際しっかり明記する必要があります。いくつか例の写真を掲載して例示すればわかりやすいでしょう。
4.写真の解像度に気をつける(スキャナ保存制度)
スキャナ保存制度では、写真の解像度も申請の要件になっています。さっくり言ってしまうと、画像が荒すぎると申請することができません。
社員がどのようなデバイスで画像を撮影しようとしているのか事前にリサーチする必要があります。会社貸与のスマホやデバイスを使用している場合は特に問題ありませんが、スマホやパソコンを個人のものを利用している会社は気をつける必要があります。
まとめ
テレワークの流れを受け、電子データを介して請求書を受け取る機会はぐっと増えてきました。自社にとっては費用を削減でき、取引先にとってもよりスピーディーに経理作業を行うことができるようになります。
煩雑だった経費精算。月ごとにやってくるレシートの山に頭を悩ませていた経理担当者の方は多いのではないでしょうか。この悩みを一気に解決してくれるのがスマホ撮影でレシートの破棄が可能になるスキャナ保存制度。経費精算や旅費精算といった、数が多くて煩雑だった手続きをぐっと楽にしてくれます。
請求書の電子化にも領収書の電子化にも注意点はありますが、クリアするのはさほど難しいことではありません。この機会にぜひ請求書・領収書の電子化を検討してみてくださいね。
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