2020年10月1日(令和2年)より、電子帳簿保存法の要件が改正される見込みです。今までより業務負荷が減り、電子帳簿保存法の導入がより容易になると考えらえます。これから導入を検討している会社にとっても、すでに導入済みの会社にとっても朗報ですね。
今回は電子帳簿保存法の今までの改正と今回の改正点についてみていきます。特に2020年10月からの改正には注目してください。今まで紙やスキャナ保存制度で手間がかかっていた部分が改正予定となっています。経費精算の完全ペーパレス化も夢ではなくなってきました。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、基本的に紙での保存が求められている経理関係の書類を電子データで保存可能とする法律です。1998年に制定されました。電子帳簿保存法に定められた要件をクリアすることにより、領収書や請求書といった経理関連書類をPDFなどの電子データで保存することができます。
この法律は社会のペーパレス化・電子化の流れに合わせて年々要件が緩和されてきました。2020年10月1日に行われる改正ではより使いやすくなることが期待されています。
下記(↓)でも電子帳簿保存法の概要を解説しています。
電子帳簿保存法とは、今まで紙でしか保存することができなかった国税関係帳簿書類を電子データでも保存することができるようにするための法律。これからの日本のペーパーレス社会、テレワークの動きに対応するには、避けて通ることのできない法律です。 […]
電子帳簿保存法の今までの改正
1998年の制定以降、電子帳簿保存法は今までにも何度か改正を重ねています。その中でも特に大きなインパクトのあった事項は、2005年・2015年・2016年の改正です。
2005年の改正:電子化保存が可能に
e-文書法の施行により、国税関係書類のスキャナでの電子化保存が可能となった
2015年の改正:電子保存の上限撤廃
3万円までの上限があった国税関係書類の電子保存の上限撤廃
電子データへの電子署名必須から不要に変更
2016年の改正:スキャナ保存制度が開始
デジカメやスマホを利用してのスキャナ保存制度が開始
2015年・2016年の改正を受け、今までほとんど適用事例のなかった電子帳簿保存法が一気に日本社会に広まりました。ここから経理業務のペーパレス化は加速していきます。
電子帳簿保存法ー2020年10月1月(令和2年)の改正ポイント
さて、続いては本年2020年度の改正についてみていきます。「令和2年度税制改正の大綱」によると、電子帳簿保存法は下記2点の改正が予定されています。
電子帳簿等保存制度の見直し
(国 税)
国税関係帳簿書類の保存義務者が電子取引(取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいう。)を行った場合の電磁的記録の保存方法の範囲に、次の方法を加える。
(1)発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録を受領した場合において、その電磁的記録を保存する方法
(2)電磁的記録について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステム(訂正又は削除を行うことができないシステムを含む。)において、その電磁的記録の授受及び保存を行う方法
(注)上記の改正は、令和2年 10 月1日から施行する。
参考:令和2年度税制改正の大綱
この2つの共通点は、どちらも電子取引の際の保存についてだということ。それぞれ内容は違っていますが、どちらもペーパレス化を見据えた内容となっています。
ではここからは上記2点についてひとつずつ見ていきましょう。
変更ポイント1:受領者のタイムスタンプは不要に?
(1)発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録を受領した場合において、その電磁的記録を保存する方法
現在(2020年10月以前)の電子帳簿保存法では、電子データで請求書や領収書といった経理関連書類を受領した場合、そのまま電子データの形で保存するには受領者がタイムスタンプを付与する、または事務処理規定に則った保存を行う必要があります。
タイムスタンプとは、ある時点でその電子データが存在しておりそれ以降変更が加えられていないことを保証する技術。タイムスタンプを押すと、そのタイムスタンプが押された時間とハッシュ値が電子データに付与されます。
ハッシュ値はデータに変更を加えると同じ値にならなくなるため、照合すると電子データに改変が加えられていることがすぐわかるようになっています。タイムスタンプを利用するためには、JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)の認定を受けたソフトウェアを利用したりベンダーと契約をする必要があります。それにはコストが必要となります。
受領者側に余計なコストが発生してしまうため、経理関係書類を紙でしか受領してくれない企業も多くあります。この点が改善されるのが今回の改正点です。
今までは請求書や領収書を電子データで受け取った場合、このタイムスタンプを受領者側が押す必要がありました。これを「発行者側」のタイムスタンプのみで良しとするのが今回の改正内容の(1)です。
これにより、受領者側でタイムスタンプを用意する必要がなくなりました。発行者側でタイムスタンプを付与しておけば、受領者側は余計なコストも作業も発生することなく電子データにて経理関連書類の保存が可能となります。
企業間の電子データでのやりとりがより促進することが想定される改正ですね。
変更ポイント2:クラウドサービスの利用は?
(2)電磁的記録について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステム(訂正又は削除を行うことができないシステムを含む。)において、その電磁的記録の授受及び保存を行う方法
この要件は自社で訂正や削除を含む電子データの変更ができないシステムを利用すれば、電磁的記録の授受をシステム上で保存できるという内容です。上記の要件を満たすシステムを利用すれば、請求書や領収書といった取引の証跡を電磁的記録に置き換えることができるようになります。
つまり、外部のクラウドサービスなどを介して請求書を発行しそのサービス上で相手に請求書を送付する。そのままクラウドサービス上で請求書を保存をしておけば、請求書の保存要件を満たしていると取られるもの。今までのようにタイムスタンプを付与する必要もなくなります。
これにより、企業間の電子取引はより活性化し、電子データでのやりとりが今以上に頻繁になると考えられます。
また、企業間のみならず社内での経費精算作業もぐっと楽にすることができます。変更ができない電磁的記録であれば、そのまま電子取引のデータをシステム上で保存していれば取引の証をして認めてもらえる。
つまり、経費精算専用のクレジットカードを使って精算を行えば、わざわざレシートをもらってきて精算する必要がなくなるのです。
クレジットカードの情報を経費精算システムに連携させ上長の承認。その後経理・財務がキャッシュレスでの振込作業を行えば、紙はどこにも存在しなくてすみます。取引があったことの証跡はクレジットカードシステムや経費精算システムにそのまま保存されることになるからです。
どこまでのサービスが対象となるのかはこれから徐々に公表されてくると考えられます。今後の動きを注視してみていきましょう。
まとめ
今まで完全テレワーク化が難しいとされていた経理業務。電子帳簿保存法は、大量の紙を必要としていた経理業務のペーパーレス化を実現させてくれる制度です。令和2年の改正では、より条件が緩和され同法律を適用できる企業が増えることが想定されます。
感染症による緊急事態宣言を受けたことにより、各社テレワーク・ペーパレス化への対応に力を入れています。「うちの会社は紙だけなんです」と言ってられる状況はすでに過去のものとなりつつあるのです。他社に迷惑をかけることがないよう、電子帳簿保存法についての勉強を今から始めていきませんか。
今回は電子帳簿保存法を適用して業務改善をしている企業の導入事例のご紹介です。 大企業からベンチャーまで、さまざまな会社が電子帳簿保存法やスキャナ保存制度を使って経理業務を効率化しています。 電子帳簿保存法対応ソフトを導入している企業[…]