バリュー・ポートフォリオとは、株主と経営者の両方の視点から、自社の事業を分析・評価する、主に事業の再構築を検討する際に用いられるフレームワークです。撤退するべき事業を見極めるのに有効だとされています。PPMと同様、ボストン・コンサルティング・グループが考案しました。
バリュー・ポートフォリオは、自社で行っている事業を、ROIとビジョンとの整合性、の2つの軸によって評価します。
ROIは、投資利益率のことで、株主視点にあたります。
ビジョンとの整合性は、自社で行っているそれぞれの事業が、経営ビジョン(会社として将来ありたい姿)と整合性がとれているか、ということで、経営者視点にあたります。
バリュー・ポートフォリオは、まず、自社の各事業を、ROIと、ビジョンとの整合性、そのそれぞれの高低によって、4つの象限に分けます。
4象限は、本命事業、課題事業、機会事業、見切り事業の4つの領域に分類され、自社の各事業をそれぞれの領域に位置づけて、評価します。各領域は、一般的には次のように考えられています。
本命事業は、ROIが高く、経営ビジョンとの整合性も高い領域の事業です。
利益が上がり、ビジョンとの整合性もとれているので、株主視点でも見ても、経営者視点でも見ても、良い事業となります。本命事業に分類された事業に求められる戦略は、さらなる成長と拡大です。
課題事業は、ROIは低いが、経営ビジョンとの整合性は高い領域の事業です。
利益が低いので、株主視点では魅力のない事業ですが、ビジョンとの整合性が高いので、経営者としては継続したい事業です。
課題事業に分類された事業に求められる戦略は、利益率の向上です。事業の問題点を改善して、利益率を上げられれば、本命事業へと成長できる見込みがあります。もし、利益率の改善ができなければ、株主から撤退圧力がかかります。
機会事業は、ROIは高いが、経営ビジョンとの整合性は低い領域の事業です。
ROIが高いので、株主視点ではよい事業ですが、ビジョンとの整合性が低いので、経営者は、この点を検討しなければいけません。この領域に分類された事業を長期に続けると、ブランドイメージの毀損や従業員のモチベーション低下などの悪影響がある、とも言われています。
機会事業に分類された事業に求められる戦略は、事業内容、もしくは経営ビジョンの修正です。まず、事業内容の修正を検討しますが、それが難しければ、ビジョンそのものの修正を考えます。ビジョンは、簡単に変えられるものではないので、相当のリスクを伴いますが、近年は、新事業がメイン事業となり、それに合わせて経営ビジョンを変更した例も、しばしば見受けられます。機会事業は、ビジョンとの整合性が取れれば、本命事業になる可能性もありますが、改善の余地がないようなら、事業の売却も視野に入れます。
見切り事業はROIが低く、経営ビジョンとの整合性も低い領域の事業です。
ROIが低いので、株主から評価されず、ビジョンとの整合性も低いので、ブランドイメージの毀損にも繋がります。見切り事業に分類された事業に求められる戦略は、早期の撤退です。
バリューポートフォリオを活用すれば、経営者と株主、両方の視点から事業を評価できます。
大切なことは、投資を拡大するべき事業と切り捨てるべき事業、あるいは売却するべき事業を明確にし、また、必要に応じて、事業内容の改善・変更やビジョンの修正などをしっかりと行うことです。