RPAを導入する前に、実際の業務にRPAを組み込んで、試験的に運用してみる手法を一般的にPoC(Proof of Concept:概念実証)と呼びます。RPAに何ができて何ができないのか、あるいはロボット化によって自分たちの業務がどのように改善され、どのようなメリットを享受できるのかなど、RPA導入後の適合性を検証するためにも欠かせないフローです。
今回は、PoCについて解説していきます。
PoCとは?
PoCとは「Proof of Concept」の略称で、日本語では「概念実証」「実証実験」と呼ばれることもあります。デジタル技術を業務プロセスなどに導入する際によく行われる手法で、イメージした通りに活用できるか検証しながら見極めます。
PoCを実施する目的とチェックポイント
PoCを実施する目的
RPAの場合、業務で使っているアプリケーションと導入を考えているRPAツールが本当に適切かどうかを見極めるのが実施目的です。そのため、RPA導入を全社展開で考えているのであれば、複雑で多様なシステム連携を必要とする業務に対してPoCを実施したほうが、導入後の運用もスムーズです。
チェックポイント
業務フローの整理や業務の棚卸をして自動化したい業務が決まったら、自社に適したRPAを複数選定し、2~3体のロボットを試験的に構築した後、以下の項目を推進・検証する必要があります。
PoCでチェックすべきポイント
カテゴリ |
項目 |
概要 |
PoCでの確認事項 |
置き換え |
可/不可、代替手段の検討 |
想定効果 |
想定効果に対する高・低 | |
製品適性 |
業務に製品が適しているか | |
RPA導入・構築に向けての準備 |
業務プロセスの変更 |
有無 |
留意点 |
個別業務導入パターン | |
体制 | ||
対象領域 | ||
例外処理、エラー対応、実行タイミング | ||
その他、RPAソフトウェア評価・選定、RPAの効果の試算など |
想定効果
業務の一部をRPAに置き換えるよう決定した後、例えば効率化のために設定した数値目標の達成といった、想定効果を得られるか検証します。
製品適性
基幹システムへの接続、既存アプリケーションとの親和性をチェックしていきます。PoCではテストデータを使用しますが、パソコンやサーバーなどは実際と同等の使用環境を準備しておきましょう。
業務プロセスの変更
当初業務プロセスの変更予定はなくても、結果としてRPAの実行前に準備作業や確認などの後処理の追加が必要になる場合があります。導入予定の業務で検証しながら導入・構築を進めるなど、業務プロセスのパターンを確立します。
PoCの進め方
例えば「この業務でPoCをやりたい」と決めていたとしても、対象業務を構成する細かいプロセスのどこをRPAに置き換えるかといったところまで詰めていなければ、ロボットを動作させるシナリオの作成に落とし込むことはできません。従って、進め方のポイントとしては、次の3つが挙げられます。
- 対象領域が明確か
- すぐにシナリオ設計に入れるか
- 「PoCをどの業務のどのフローで実施するか」を関係者間で共有できているか
一方、物理的な進め方としては以下の2種類に分かれます。
(1)個人のパソコンでの実証
主に個人が操作するパソコン単体で実証します。一人または1台のパソコンに対して実行することもあります。
(2)企業や組織単位での実証
企業や組織単位において、業務プロセスのなかで、RPAを適用できそうなフローを選定して実証します。その際、サーバーからの集中管理などが想定通りに作動するか、複数人ならびに複数のパソコンで行います。
PoCを行うのは後者が大半ですが、その場合でも一部の業務プロセスに絞って実証することがほとんどです。
PoCの実証フロー
1…RPA対象業務の選定 | 2…業務の可視化、業務の分析、対象領域の決定 | 3…コネクティビティ(接続性)のテスト、既存アプリケーションとの親和性チェック | 4…ロボットルールの設計、机上検証 | 5…ロボットルールの作成および実装 | 6…RPAの検証および評価 |
PoCで留意するべきポイント
情報システム部門との連携
企業の基幹システムに接続してPoCを実施する際、情報システム部門の協力が必要です。社内で緊密に連携しながらPoCを進めていきましょう。
全体計画は修正することがある
PoCで実証すると全体計画に対して修正すべき点が見えてきます。PoCの結果を踏まえて導入の範囲や推進体制、スケジュールなどを再確認するため、全体計画を変更することはあり得ると考えてPoCに臨んだほうがよいでしょう。
PoCの最終形をイメージすること
PoCを推進した結果、RPAの一定の効果を確認できた一方で、PoC実施から進めていない企業や組織も存在しているのが現状です。また「○年○月までに、ロボットを何体構築する」といったゴールが明確でないと、PoCは単なる社内活動の一環となってしまい、RPA導入のスピードが遅くなってしまう可能性も否定できません。
PoCを始めるにあたり、コスト削減やデジタル化など、RPAを導入する目的を明確化させ、最終的なゴールを設定することが大切です。