AIを語る上で欠かせない「チューリングテスト」

コンピューターが人間と対話できるようになったのは第1次ブームから今に至るまで、人工知能において重要な研究課題のひとつで、現在も精力的に研究が続けられています。対話コンピューターに関して、外せない話題が「チューリングテスト」です。
今回は、AI(人工知能)が進化する上で重要なチューリングテストについて、発明した学者の話を交えながら説明していきます。

チューリングテストとは

チューリングテストとは、機械(AI(人工知能))がどのように人間を真似するのかを対話しながら測る実験です。1950年にイギリスの天才数学者アラン・チューリングが提唱しました。

まず人間の判定者は、相手が見えない状態で、機械または人間と対話します。終了後、人間の判定者は先程まで話した相手が人間か機械かを当てます。最終的に人間の判定者が、どちらが人間か判別できなければ、その機械は「知能がある」と判定するというものです。仮に人間の判定者が誤った判断を下せば、その機械(AI(人工知能))は見事合格です。

チューリングテストに合格したAI(人工知能)

チューリングの没後60年にあたる2014年6月7日に、チューリングテストが実施されました。そこでテストをパスしたAI(人工知能)が現れたのです。合格したのは、ロシアのウラジミール・ベセロフ氏とウクライナのユージーン・テムチェンコ氏が開発したスーパーコンピュータ「Eugene(ユージーン)」。このAI(人工知能)とチューリングテストで対話した人間の判定者のうち、およそ3割がAI(人工知能)と見抜けなかったのです。実はこれにはちょっとした理由がありました。

本来チューリングテストは、AI(人工知能)が知能を持っているかどうかを判定するために行われるものです。しかし、「Eugene(ユージーン)」には、「13歳のウクライナ人少年」という設定があり、ある特定の人物を演じるように設計されていたのです。判定者は「Eugene(ユージーン)」に対して英語で話しかけたので、母国語でない英語をたどたどしく話す「Eugene(ユージーン)」を、判定者が人間らしいと感じてしまったことも原因の一つです。

現在一部の研究者は、チューリングテストをAI(人工知能)の評価手法として利用していません。しかし、チューリングテストの認知度が高いことから、テストの内容を実用的なものへ変えていこうという動きもあるようです。

AI(人工知能)の歴史に名を残すアラン・チューリング

「チューリングテストとは」の段落でお話ししましたが、チューリングテストを定義したのはアラン・チューリングというイギリスの天才数学者です。彼の生涯は、AI(人工知能)の黎明期とともにありました。

そもそもAI(人工知能)という言葉が誕生したのは、今から遡ることおよそ60年前。1956年にアメリカのニューハンプシャー州にあるダートマス大学で、人工知能に関する会議(ダートマス会議)が開かれました。ここで初めて、知的に行動したり思考したりするコンピュータプログラムの実現可能性が議論されました。イギリスやアメリカなどでは第二次世界大戦後からAI(人工知能)の研究が行われており、1946年には電算機ENIAC(エニアック)が登場しています。

その10年前の1936年、チューリングは「計算可能な数について」という論文を発表しました。そこで「万能チューリングマシン」という概念を打ち出しています。5年後の1941年、解読不可能と言われたドイツ軍のエニグマ式暗号機を解読するための電気機械式装置を開発。結果、情報戦ともいわれたノルマンディー上陸作戦の成功だけでなく、終戦にも貢献したとされています。

終戦後、チューリングは暗号解読を辞める代わりに、人間の脳の思考モデルを機械で実現するための研究に没頭。1950年に「チューリングテスト」を『計算する機械と知性(Computing Machinery and Intelligence)』という論文の中で発表しました。その4年後、彼は志半ばで亡くなりますが、彼の遺した功績は現在でもAI(人工知能)の歴史の中で燦然と輝いています。

ELIZA(イライザ)とPARRY

チューリングテストに関わる代表例として、マサチューセッツ工科大学のジョセフ・ワイゼンバウム氏が1966年に発表した「ELIZA」(イライザ)と、アメリカの精神科医ケネス・コルビー氏が1972年に発表した「PARRY」(パリー)が挙げられます。いずれもチャットボットのさきがけ的な存在で、Eugene(ユージーン)が現れるまで、チューリングテスト通過に一番近い存在だったと言われています。チューリングテストの際、ELIZAはワイゼンバウム氏の同僚で、カウンセリングもする心理学者、PARRYは統合失調症を患っている人というように、どちらも特定の状態の人間を演じるようにプログラムが設定されていました。

1972年9月、ELIZAとPARRYは対面しましたが、全く会話が噛み合いませんでした。ただし、ELIZAは非常にシンプルなプログラムで、スピーカーが話しているのと同じことを尋ねるのに限定されていましたが、PARRYはもう少し高度なプログラムではあったものの、互いに会話の内容を理解して返答しているわけではなく、ただ与えられた設問に対して予想される答えを投げかけたに過ぎないことが判明したのです。

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