企業の規模の違いこそあれ、経営者や経理担当者の方々の多くは、自社の売上や収益、社長をはじめ全社員の給料にいたるまで、企業活動における経理の仕組みをおおよそ把握していることでしょう。しかし、こういった情報は機密事項にあたるため、会社でも経理業務に従事していない社員の方々には、経理という仕事がいまひとつよく分からないといった印象が強いかもしれません。
今回のコラムでは、個人事業主の方や法人など、企業規模を問わず必ず行う経理の仕事にスポットをあてて、解説していきたいと思います。
そもそも経理とはどんな仕事なのか?
経理は「経営管理」の略です。経営管理とは、企業などの組織において、生産や販売、労務、財務などの各種活動がスムーズに遂行されるよう、お金の面から管理や運営を行うことを指します。この考え方をもとに、経理部門では、会社が設定した会計期間内の様々な営業活動を、記録、計算、整理します。また、会計期間内に得られた収益やかかったコストの集計結果や、経営・財政状態などを決算書という形でまとめ、会社法に基づき、会社の内部だけではなく株主などの外部にも報告しなければなりません。
経理の仕事は、年間を通して大きく「毎日の仕事」「毎月の仕事」「四半期・毎年の仕事」の3つに分けられます。時期や頻度などに合わせて、以下の4つの業務を遂行します。
- 帳簿の作成事務:会計伝票の作成、出納帳や固定資産台帳といった帳簿や台帳の作成
- 請求関係事務:請求書や手形・小切手の発行
- 現金・在庫等の各種管理事務:現金残高、売掛金・買掛金、在庫の管理、支払い及び回収の消込み
- 決算・納税関係事務:月次・四半期・年次決算、法人税・消費税・源泉所得税等の税金事務、予算編成
上に挙げた経理の仕事はほんの一部ですが、製造業を手掛ける企業の経理に当てはめながら考えてみます。原材料を仕入れる段階では、手形の発行や買掛債務の管理業務、製造段階では原価計算と管理、出荷や売掛債権の管理業務、原材料や経費、給料支払いなどの資金・経費管理業務が主な経理の仕事です。他に、在庫の現物管理、工場と土地などの固定資産管理業務が生じます。
この他経理には、予算の策定と実績との照らし合わせといった業務もあります。こちらは、適正な予算設定が必要となるうえ、予算の策定に至った会社の実績や経営目標の達成度、背景なども把握しておかなければなりません。企業内に経理部門があれば、予算策定は会社の在籍年数が長い中堅・ベテラン社員、または部門長などの管理者が経営者などと行うことが一般的です。
経理業務は「記帳」が基本
「記帳」とは、その日の売上がいくらあったのか、その日に何をいくら仕入れたのか、会社の営業活動で得られた成果を帳簿や会計ソフトに記録していく作業です。細かい作業ですが、経理業務の基本といってよいでしょう。1つでも漏れがあった場合、その後に作成する決算書に会社の現状が正しく反映されないからです。
きちんと経理処理がなされないとどうなるか?
ひと昔前まで、1年に1回、決算期間際になって大慌てで経理処理を行う会社が、当たり前のように存在していました。しかしこれでは、「今自社はどのくらい儲かっているのか」「会社の運転資金を十分に調達できているか」を会社として判断できません。また、毎月の業績も把握できないため、何か会社に経営上の問題点があったとしても、発覚や対処が遅れてしまい、会社の資金繰りが上手くいかないという事態を招きかねません。
経理はただの事務的な処理ではなく、会社が正しい経営判断をするための要となるものです。だからこそミスなく、正確に行わなければなりません。
経理の仕事は、工夫次第で効率化できる
大企業の経理部門は他部署同様独立しているのに対し、経理業務を一人で担当している中小企業も多いのが実情です。またここ数年で、2018年から2023年の間に法律が順次施行されるなど、働き方改革を推進する政府の動きが活発になってきました。
こうした背景から、経理部門で業務効率化を実施する企業も増えてきました。書類の紛失を防ぎ管理を容易にするため、請求書類や契約関連の書類は全てスキャンしてデータ化する、クラウドサービスを使って一元管理するといったことがその一例といえるでしょう。
また、2019年であれば2018年より前の処理を参考にすることが多いため、以前からの慣習で必要かどうかは分からないけど、とりあえず続けているといった類の経理処理が各企業の経理部門に存在します。「これは本当に必要な業務なのだろうか」と疑問に感じたら、時間があるときに業務フローを見直すとよいでしょう。
ただし、決算書や税金の申告書、経理関係の書類は、会社法や電子帳簿保存法といった法律に基づいて保管方法や期限が定められています。そのため、書類をスキャンしても原本を破棄せず、必ずデータと原本の両方を保存しておきましょう。