AIには「強い」と「弱い」がある?

AI(人工知能)において、「人間のようなふるまいをするロボットがAIである」というのが、一般的なイメージとして浸透しているでしょう。ところが、人工知能についていろいろ学んでいくうちに、AIには「強いAI」「弱いAI」の2つの分類があることに気づきます。

今回のコラムでは、「強いAI」と「弱いAI」について、解説していきたいと思います。

ジョン・サール教授の論文とは?

「強いAI」と「弱いAI」を定義したのは、米国の哲学者で、カリフォルニア大学バークレー校のジョン・サール元名誉教授。彼は、1980年に発表した論文「Minds Brains and Programs(心、脳、プログラム)」の中で、「弱いAI」は、知的に見える動作をしているだけの、心の研究をする上で欠かせないツールであり、「強いAI」は、適切にプログラムされたコンピュータの、心そのものであるとしています。

この定義に基づいて、サールは「中国語の部屋」(※)という思考実験を実施。人間は心や精神を宿した「強いAI」を作れないと主張しました。この主張に対しては多くの賛同と反論があるものの、精神や自由意志を有した「強いAI」の実現可否は、今日に至るまでに結論が出ないままとなっています。

※「中国語の部屋」:紙をやり取りできる大きさの窓がついた部屋に、英語のみ話す人にいてもらい、中国語で書かれた文章を小窓から投げ入れたら、部屋から中国語で書かれた返事が返ってくるという実験。一見、中国語による会話が成立しているようだが、投げ入れられた文章への返答にマニュアルが存在していれば、英語のみ話す人は中国語を理解しているとは言えないという結論を導き出した。

「強いAI」とは?

「強いAI」とは、いろいろな場面や状況に応じて行動できる人間と同じように振る舞う、汎用性の高いコンピュータを指します。「強いAI」は、別名「人工汎用知能」「AGI」(Artificial General Intelligence)などと呼ばれ、ニュースで「AGI」と呼称している場合はこれを指しています。

上記の内容をもう少し分かりやすく説明すると、近未来を描いた映画や小説、コミックで出てくるような、自ら意志や知識を持って主体的に動くもの、というイメージです。人工知能を持ったロボットによって人間社会が脅かされ、最終的に人類を滅ぼしてしまう、といったストーリーで書かれるものは、多くの場合「強いAI」に該当します。

「強いAI」の特徴としては、特定の領域について人間と同程度かそれ以上の能力を発揮できること、収集・分析・予測などの作業に強いことなどが挙げられます。

「弱いAI」とは?

人間の知的活動の一部を代替する様々な人工知能を、「弱いAI」といいます。「弱いAI」は別名「特化型人工知能(applied AI、Narrow AI)」などと呼ばれ、ビジネスに導入されたり、実用化が進められたりしています。自動運転や碁を打つといった特定の目的に対しては、人間と同等以上の知的能力を発揮しますが、汎用性がないことが特徴です。

「人工知能の導入」「人工知能の実用化」というニュースを観ると、人間が担う仕事を完璧にこなすコンピュータが現れたように勘違いしてしまいます。しかし実際は、人工知能そのものが導入されたわけではなく、やがて「強いAI」を実現するための基礎技術がシステムに導入されたことを示しているのです。

「強いAI」と「弱いAI」の実用化

ビジネス分野では「弱いAI」人工知能関連技術が急速に拡がりを見せています。なかでも人工知能関連技術は、既に実用的な領域に入っており、ビジネスや社会などの様々なシーンで導入している企業も現れました。以下は全て、人工知能関連技術の具体的な導入例です。

  1. 1990年代のチェス専用に開発されたIBMのディープ・ブルーの基礎技術
  2. 囲碁の世界チャンピオンを破ったことで有名になった「AlphaGo」のディープラーニング
  3. iPhoneの「Siri」やAndroidの「OK Google」などの音声認識技術
  4. ソフトバンクのロボット「Pepper」
  5. 自動運転車など

アメリカのクイズ番組で、チャンピオンたちを軒並み破ってきたコンピュータ「IBM Watson」。現在では日常会話の技術が進歩し、人間どうしの会話を理解することで汎用的な能力を持とうとしています。IBM Watson は「強いAI」ではないため、IBMは開発当初から「IBM Watson」を人工知能と呼ばず、一貫して「コグニティブ(=Cognitive・認知)・システム」と呼んでいます。IBM Watsonは最も「強いAI」に近いコンピュータと言えるでしょう。

また、Google DeepMindの「DQN」(Deep Q Network)は、「AlphaGo」の基本システムとして有名ですが、実はブロック崩しやスペースインベーダなど、他のビデオゲームもプレイできます。AIの観点から言うと、「DQN」はゲーム専用ではあるものの、汎用的な方向に能力を活用しようとしているとも言えるでしょう。

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