ビットコイン(仮想通貨)によって広く知られるようになった、ブロックチェーン。特にその技術は、フィンテック(FinTech)と呼ばれる、金融業界における情報技術革新への積極的な活用が目立ちます。また、フィンランドと国境を接する北欧の国・エストニアでは、既にブロックチェーン技術を応用した独自のシステムを築いており、「IT先進国」などと呼ばれているほどです。今後もこの流れは続くと予想されており、日本をはじめ世界中の国々から熱い視線が注がれています。
今回は、ブロックチェーンの技術や細かい仕組みといった難しい話はさておき、以前こちらのコラムでお話しした、「ブロックチェーンに期待される役割」について、もう少し掘り下げて解説していきたいと思います。
ブロックチェーンの実用化が進む、様々な世界
ブロックチェーン技術の、積極的な実用化が進む次の分野において、具体的な取り組みをご紹介いたします。
金融業界
ブロックチェーン導入の検討と実証実験がいち早くスタートした金融業界では、金融業界と技術革新を融合させたフィンテック(FinTech)という造語が示すように、ITを活用して顧客への融資や送金、オンライン決済、資産運用といったサービスを提供しています。並行して、ブロックチェーンを活用した送金システムや独自の仮想通貨の発行などの開発、それらを既に行っているスタートアップ企業ヘの投資も実施しています。
アメリカでは2000年の初め頃に、オンライン決済サービス、タブレットに小さなカードリーダーを装着してカード決済を提供するサービス、オンラインに特化した融資サービスが存在しました。リーマンショックが起きた2008年前後には、従来の金融サービスのあり方が見直され、AI(人工知能)やビッグデータ、ブロックチェーンといった技術が積極的に導入されたことで、金融業界の成長が拡大していったといわれています。
また銀行では、通貨管理のために複雑な工程を設けています。工程の一つ一つに多くの人材やコストがかかるので、これまで人が管理していた通貨をブロックチェーンに置き換えることで、安全性を担保できるだけでなく業務の大幅な効率化やコスト削減を実現できると考えられています。
コンテンツ管理
写真やイラスト、Webデザインなど、全ての創作物には著作権が存在します。著作者が創作物に対して著作権を主張したいとき、日本では文化庁に申請し、時間と費用をかけて登録しなければなりません。
2017年にアメリカのBinded社が、著作権登録をブロックチェーン上で行うことで、Web上での著作権管理を実現するサービス「Binded」をリリースしました。日本の複数の企業が、このサービスへの出資を表明したことでも話題となったため、そのニュースを耳にしたという方もいらっしゃるかもしれません。Bindedは、主に写真やイラストの著作権をWeb上で管理し、創作物の登録やその証明書を発行するサービスを提供するというものです。Bindedの利用にはクリエイターを対象としている他、登録すれば誰でも簡単に無料で使えるため、個人で活動している写真家やテザイナーなどにとって、金銭的な負担が軽くなるのもメリットです。
書籍や音楽の電子データ化が進んでいることから、ブロックチェーン導入への障壁は低く、かつ昨今ニュースで取り上げられることの多い著作権問題にも大きな役割を担うことが期待されています。
その他、こんな分野で進む実用化
ブロックチェーンの非改ざん性や透明性、データの信ぴょう性といったブロックチェーンの特性を活かし、行政機関をはじめ保険や不動産といった信託管理を基盤にする業界、製造、流通、医療などの分野で活躍が期待されています。既に一部では、実証実験や試験的な導入が開始されています。
ブロックチェーン技術が積極的に活用される理由とは?
時代が進むにつれて、「安全な環境でデータをやり取りしたい」「もっとスマートにお金のやり取りが実現できたら」というニーズの高まりが、様々な業界で起こるようになりました。
こうした流れから、もともと、仮想通貨(ビットコイン)を運用するために生まれたブロックチェーンを他の分野に応用できないか、一部の業界で検討と実証実験がスタート。仲介者や管理者を必要としない「分散型台帳技術」、データの改ざんを防ぐ暗号化の技術など、仮想通貨(ビットコイン)の取引を実現できるブロックチェーンの特質に注目が集まるようになっていったのです。
その後ブロックチェーンの技術は、仮想通貨(ビットコイン)以外にも応用できるように開発され、「ブロックチェーンの実用化が進む、様々な世界」の段落で述べてきた多様な業界において、積極的に活用の場を広げています。
ブロックチェーン技術が向上し、仮想通貨(ビットコイン)以外でブロックチェーンの名前が一般に広く知られる頃には、消費者も様々な恩恵を享受できるようになるでしょう。