「財務諸表」という言葉を聞いたことがあっても、何を示すのか分からない人は多いかもしれません。
財務諸表は書いて字の如く、「財務」に関する「様々な帳票類」を指します。では、「財務諸表」とはどんな書類で、それから何が分かるのか、「個別財務諸表」と「連結財務諸表」の違いなどについて、説明していきたいと思います。
財務諸表とは?
財務諸表の定義にはいろいろありますが、「会社の経済活動を記録・集計したもの」です。「会社の経済活動」とは、社内外問わず会社が行うお金やモノ、サービスの全てのやり取りです。
例えば、会社の経済活動には次のようなものがあります。
- 銀行にお金を預ける、借りる、返済する
- 備品や消耗品を購入する
- 商品を仕入れる。また、クライアントに仕入れ後の商品を販売する
- 社員に給料を支払う
これら経済活動を記録して集計し、数字として表した結果が財務諸表です。逆に、「記録・集計」の結果である「財務諸表」から、会社がどのような経済活動を行ってきたのかを把握できます。もちろん全て見えるわけではありませんが、情報の宝庫である財務諸表を読み解くことで会社に関するかなりのことが分かってきます。
財務諸表は、以下の書類を指します。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュ・フロー計算書
- 包括利益計算書
- 附属明細書
- 株主資本等変動計算書
財務諸表は、一括りにして「決算書」とも呼ばれます。それらの書類のうち、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の3つを指して「財務3表」といいます。
財務3表――貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書、損益計算書とは?
貸借対照表
「貸借対照表」は、期末時点(例えば6月決算の会社であれば、6月30日時点)の財政状態(会社がどのくらい財産を持っていて、銀行などからどのくらいお金を借りているのか)を一覧化したものです。「決算までの1年間のうち、決められた日の会社の経済活動状況を切り取った写真のようなもの」と言いかえることもできるでしょう。バランスシート(Balance Sheet・B/S)とも呼ばれています。
損益計算書
「損益計算書」は、会計期間(例えば6月決算の会社であれば、7月1日から翌年の6月30日までの1年間)における経営成績(どのくらい売上を獲得し、どのくらいコストを使い、どのくらい儲かったのか)をまとめたものです。英語では、頭文字を取って「P/L」(Profit and Loss statement)と表記されます。
キャッシュ・フロー計算書
「キャッシュ・フロー計算書」は、会計期間における現金の動き(現金がどのくらい会社から流出・流入したのか)を、要因別に表したものです。英語では、頭文字を取って「C/F」(Cash Flow statement)と表記されます。
「損益計算書」と「キャッシュ・フロー計算書」は、「決算日から1年間の会社の実績を写し取った記録」と捉えることもできるでしょう。
「個別財務諸表」と「連結財務諸表」の違いとは?
企業のIR情報などで財務諸表を見ると、各書類の頭の部分に「連結」や「個別」といった文字がついていることに気づくでしょう。財務諸表には「個別財務諸表」と「連結財務諸表」の2種類があります。同じ会社の財務諸表でも、それが「個別財務諸表」なのか「連結財務諸表」なのかで、そこに記されている金額は大きく異なります。
個別財務諸表とは
1つの法人を対象とした財務諸表です。グループ会社がない場合、グループ経営をしている企業の本社の財務諸表がこちらに該当します。
連結財務諸表とは
グループ会社があり、本社を含めた全てのグループ会社の財務諸表をいいます。グループ経営を行っている企業は、グループ全体を対象とした連結財務諸表を見ることで、経営の実態を把握できます。
いまや上場企業のほとんどが、子会社を有しながら会社を運営しています。このような企業の企業分析には、連結財務諸表を見るのが普通ですが、連結財務諸表で不足している情報があれば、個別財務諸表を使います。もちろん、1社で経営している会社は個別財務諸表しかないので、個別財務諸表を使って企業を分析します。そのため、グループ会社の有無などによって、どちらの財務諸表を見るべきなのかを判断しなければなりません。
最近の起票事情
会社では毎月、請求書や領収書、会社の銀行口座の入出金記録などを、経理部に集約します。それらを経理部で伝票にした後、全て人間が計算し、財務諸表という形式に整えなければなりませんでした。
しかし今は、経営規模の小さな会社であっても、会計ソフトを備えている会社がほとんどなので、日々の伝票入力と決算特有の処理を加えれば、会計ソフトがほぼ自動的に財務諸表を作成してくれます。
最近では、クラウド会計ソフトの登場で、銀行口座やクレジットカードの情報が連携されたことにより、全ての取引を逐一伝票入力する手間が省け、業務の効率化がかなり進んでいます。