機械学習は、「AIに欠かせない要素だ」などと耳にしたことがあるかもしれません。あるいは、「ディープラーニングは機械学習の一種である」という方もいらっしゃるでしょう。ユーザーのニーズを予測して商品をおすすめしたり、店舗で商品の需要を予測したりするなど、様々な分野で既に活用されています。さらなる技術の進歩に伴い、今後も機械学習の技術を搭載した商品へのニーズは高まっていくでしょう。
今回のコラムでは、機械学習の定義や、よく混同されがちなAIとの違いについて簡単にご説明していきたいと思います。
機械学習とは?
機械学習は、現在のAI(人工知能)の中核をなす技術で、ディープラーニング(深層学習)も機械学習の一種です。マシンラーニング(Machine Learning)という言い方をすることもあります。
機械学習の概要を簡単にいえば「データの中から規則性や判断基準を機械自身に見つけさせ(=学習)、それをもとに仮説を立てて実行する」技術です。ここでいう規則性や判断基準とは、「利用客数は、平日だと朝より夜の方が多い」「過去に機械学習の本を購入した人は、その後AI(人工知能)に関する本も購入しやすい」といった傾向です。
機械学習における「学習」と「推論」
「学習」とは、データの特徴の調査から、調査後に判断基準となる「学習モデル」を作成し、そこからさらに、複数のデータの組み合わせを決定していくまでの一連の作業です。例えば、膨大な量の画像の中から「スマートフォン」と「パソコン」の画像を探す場合、「スマートフォン」と「パソコン」のサイズやロゴマークの有無、カメラの位置などの特徴を導き出します。その中から「これはスマートフォン」「これはパソコン」と判断できる特徴を数値化し、「スマートフォン」と「パソコン」の画像を識別するために最適なデータの組み合わせを決定していきます。
学習の結果、実際のデータから「推論モデル」が構築されます。それを使って、膨大な量の画像の中から「スマートフォン」または「パソコン」の特徴を持つ画像を選択していきます。この作業が「推論」です。このように、機械学習では、データから目的に合わせた判断や予測を行っていきます。機械学習によって「スマートフォン」または「パソコン」の特徴を見つけ出すには、膨大な量のデータが必要です。データ量が十分にないと、推論の作業において支障をきたす可能性があります。
機械学習にできること
機械学習の技術を実際の業務へ活用したい場合、「識別」「予測」「実行」の3つの用途に分けて考えます。例えば、顧客リストの中からメインターゲットにしたい購買層をピックアップし(識別)、どういう商品であれば購入してくれそうか、プロモーション活動の内容なども含めて検討する(予測)ことに対して、機械学習の技術を応用可能です。また、店頭に立って接客したり、電車を運転したりすること(実行)に関しては、既に応用が始まっています。
この他、受信メールの中から迷惑メールを見つけ出したり、受信の際にメールアドレスごとにメールを分類したりといった作業や、スマートフォンに搭載されている顔認証システムも実は、機械学習を応用したものです。
ビジネスにおける人工知能の利用は、データから作り出した新たな規則性や判断基準を、予測や識別に活用することといえます。ただし、機械学習をビジネスのどこに、どのような形で活用するか、最終的に判断するのは人間です。また、機械学習自体、ビジネスの現場に導入しても精度の面でまだまだ人間のサポートが必要です。
機械学習とAIの違いとは?
インターネットをはじめとする様々なメディアで「機械学習」が取り上げられるとき、同じように使われる言葉に「AI(人工知能)」があります。機械学習とAI(人工知能)の違いは何でしょうか。
AI(人工知能)は、「汎用人工知能(Artificial General Intelligence、AGI)」と「特化型人工知能(NarrowAI)」の2つに大きく分類できます。汎用人工知能とは、簡単に言うと「人間と同じように考え行動する」ことを再現しようというものです。例えば、最近ニュースで話題になっている接客ロボットや介護ロボットなどが該当するといえます。
一方で特化型人工知能は、人間が考え、実行している作業の一部を機械に代行させようというものです。蓄積された過去のデータから学習し、特定の分野の問題解決や作業を独自に行うことが可能です。現在活用されているAI(人工知能)の多くが、特化型人工知能に含まれます。
そして機械学習は、ある特定の事象から採取したデータを解析して、特徴やルールを見つけ出し、判断や予測を行う技術であることから、特化型人工知能のカテゴリの1つであるといえます。また、機械学習はAI(人工知能)の1分野として研究され、機械学習単独で発展を遂げてきた歴史を有しています。さらに、機械学習の発展がAI(人工知能)の技術の底上げをも図ってきたため、よく「機械学習=AI(人工知能)」と捉えられることが多いようです。