「あなたはいくつ仕事をしている?」
そんなやり取りも遠い未来のことではないかもしれない。
昨今賑わしているキーワード、「副業」・「複業」。人材会社エン・ジャパンが2017年、20〜40代の正社員5500人の対象に実施した調査では、副業に関心がある人の割合が9割に達しました。
終身雇用制度が崩れ、企業に勤めていれば一生安心できた時代は終わりを迎えつつあります。副収入を得るためだけではなく、副業で新たなスキルを身につけ、自分の市場価値を高めようとするのは当然の選択ともいえます。
副業を後押しする3つの要因
この盛り上がりの背景とは。副業を後押しする3つの要因があると言われています。
- 労働者の考え方の変化
副業に関心がある割合は9割近くに上る。動機は「お金」と「自由」。生活費や家計の補助ができるという理由他、自分の将来を自分で決めることができるという理由など。
- 政府主導の働き方改革の推進
2018年1月に発表した厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、「勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」とし、副業の原則禁止から原則許可へ180度方針転換。
- 副業を容易にするサービスの台頭
仕事を探す個人と人材を求める企業をつなぐプラットフォームとして機能する、ランサーズやクラウドワークスのサービスが台頭。個人のアイデアに資金を集めるReadyforなどのクラウドファウンディングの市場規模が2014年度から5倍に増加。
一方、多くの企業は副業に後ろ向き。中小企業庁が2014年度に実施した企業調査では回答した1170社の約85%が「副業・兼業を認めていない」と答えました。この結果を見ると、副業に前向きな個人と、消極的な企業の意識が驚くほど乖離していることがわかります。ただし、経産省の官房参事官は「働き方改革は明確に経済政策であり、人材をどのように生かして生産性を高めていくかを真剣に考えるべきだ。副業容認は日本社会の生産性向上にかかせない」と言い切る。今後、政府から企業への働きかけは強まってくるのは間違いないと見ていいでしょう。
どういった副業があるのか?
でも、副業どころかいくつかの会社を掛け持ちする複業なんて、自分には縁遠いと思っている人は多いかもしれません。下記に「日経ビジネス8月号」で紹介されていた何人かの副業ライフの一例をあげてみました。
1.副業・コンサルタントの例(40代)
かつて本業の大手メーカーでアジアの建設プロジェクトに関わってきた経験を活かし、ノウハウを有料で提供できるスポットコンサルティングサービス(ビザスク)に登録。結果、東南アジアの建設業界における商習慣や営業事情を教えてほしいという依頼が舞い込んでくるように。平日はフルタイムで本業の仕事をしながら、月に数回空き時間や就業後にコンサルをしている。コンサル料は1時間あたり2〜3万円と高額。
2.副業・技術顧問の例(50代)
本業はシステム開発の管理職。知人に助言を頼まれたことがきっかけで、培ってきたITの知見を活かし、技術的なアドバイスをする顧問契約をベンチャー企業と結ぶ。本業の就業後に契約先に2〜3時間顔を出す。
3.副業・デザイナーの例(20代)
本業もデザイナー職であるが、自らの本当の市場価値を知ろうとクラウドソーシングを活用し、個人のデザイナーとして企業や製品のロゴを受注。受注頻度は月1〜2件で収入は年間100万円程度。副業で得られた知識や経験が本業にも還元できるため収入以上に得られるものが多い。
4.副業・評論家の例(20代)
本業は人材系ベンチャーの広報を担当しながら、副業では大好きなラーメンの評論家として活躍。一年中全国のラーメン店を食べ歩き、大手チェーンの商品開発にも関わる。午前中は本業の仕事、午後は評論家として地方のテレビ局に出演したりと柔軟に働く。
副業ライフは目の前に!
ご紹介したのはあくまで一例の4件ですが、40代や50代は本業で培った経験やスキルを同様のニーズがある業種に向けて活かしていて、20代はまだ経験がない分早い段階で自分のスキルを試すサービスに登録したり、趣味を活かす方法を選んでいます。年齢も職業も異なるけれど、サービスをうまく活用することで副業を始める最初の一歩をうまく掴んだ好例といえます。副業を後押しする外部環境は整っています。これまで副業を考えたことがなかった人も、この記事をきっかけにして自らの可能性を活かせるかどうか考えてみてはいかがでしょう。
参考文献:日経ビジネス 2018年8月9日発行