「経理担当募集」「経理経験者求む」といった求人は求人サイトを見ると今でも多くあります。しかしそんな経理の仕事ですが、10年後には仕事そのものがなくなっているかもしれません。
オックスフォード大学准教授のマイケル・A・オズボーン氏が2013年に発表した論文「雇用の未来」の中で、AI技術の普及によって10~20年後に「薄記、会計、監査の事務員」などバックオフィスにかかわる仕事がなくなると言われています。
「自分の仕事がなくなったらどうしよう?」と不安に感じる気持ちと「そんなことを言ってもなくならないだろう」という気持ち、両方あると思います。世の中は新たな技術革新により日々便利になっています。AI技術の普及やRPA(Robotic Process Automation)を中心とする自動化の流れをチャンスと捉えてみてはどうでしょうか。
こちらの記事では、「今の仕事が少しでも楽になるにはどうしたらいいか?」「もっと効率よく経理業務を行うにはどうすべきか?」という視点で変化をチャンスと捉えて仕事ができるよう、経理のどの部分が「便利に」「効率よく」できるのかを紹介していきます。
経理業務とは
経理業務といっても、実に多くの業務があり、会社ごとに「経理業務」という業務が表す範囲は異なります。さまざまある経理業務ですが、大きく分けると3つ、①日次業務、②月次業務、③年次業務に分かれます。
①日次業務
現金出納、従業員の立替経費精算、伝票の起票など
②月次業務
取引先への請求書作成、売掛金回収、源泉所得税の納付、給与計算・支給など
③年次業務
年次決算作業、開示資料作成、法人税の申告、予算作成など
上記の中には、税理士や社労士などにアウトソーシングをしている業務もあるかと思いますが、経理業務には実に多岐にわたります。
経理の自動化とは?
AIやRPAの領域においては、経理の仕事は自動化しやすいといわれています。その理由は経理業務の特徴にあります。
経理業務の特徴
①ミスの許されない正確性を求められる業務である
②期日のある仕事でありスピードが求められる
③入力業務やチェック業務など定型化(ルール化)された業務が多い
経理業務は①正確性、②スピード、③ルール化といった条件が揃っており、この3つが揃った仕事は一般的に自動化しやすい傾向にあります。
自動化の例
経理業務の場合は月末、月初など〇〇営業日までに何をしないといけないというのが明確に決まっており、特定の時期に仕事が集中します。そのため、ボタン一つで正確に早く行える自動化が期待されています。
経費精算業務においては、レシートや領収書を読み取って会計ソフト(ExcelでもOK)に入力し、勘定科目の登録まで自動で行うことが可能です。もちろんPDF化された領収書の読み取りも可能です。
人がこの精算業務を行うと、
【 紙の領収書→会計ソフトの入力→一旦出力して目視でチェック→上司へ提出してもう一度チェック 】
といった形で2重3重のチェックが必要となりますが、自動化してしまえば紙の領収書を入力する手作業がなくなるため入力ミスが減り、入力や確認に費やしていたストレスも軽減できます。(文字や数字をうまく読み取れなかったりすることもありますので、完全に人の手を離れることはありません。)
また、請求書発行業務など、会計システム、Excel、Outlookなど、複数のアプリケーションをまたいで行う仕事があるかと思います。こういった業務を人がやると時間がかかりますが、自動化が進むとアプリケーションをまたいだ作業をボタン一つで時間にして数十秒で行うことが可能です。
自動化に使えるツール
ここまでの記事で、「経理業務は自動化できそうだ…」「自動化できたらとても楽になりそう…」と感じたのではないでしょうか。ここからは自動化を実現するにはどういったツールがあるのかをご説明していきます。
Excelのマクロ・VBA
自動化するツールとしてはExcelのマクロやVBAが有名です。経理の業務の中で実際に使っていらっしゃる方も多いかと思います。例えば、売り上げ明細から特定の取引先だけを抽出するなど、Excel上でのみ行う作業であれば、マクロで事足ります。しかし、マクロだとExcel上でしか使えないため、売上明細を出したあと、請求書をPDFで発行しメールを送るなど、Excelだけでなく、Outlookや、Webアプリケーションなど、複数のアプリケーションをまたいで自動化する場合には別のツールを活用する必要があります。
RPA(Robotic Process Automation)
最近ニュースでよく聞く「RPA」という言葉。「RPA」とは、ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略で、事務処理などの定型化した仕事を自動化することや、自動化するためのソフトウェアのことを指します。RPAツールを使って自動化する際は、プログラミングをせずに実際の処理をレコーディングさせて自動化することができるなど(Excelの「マクロの記録」が、Excelだけでなく、Webアプリケーションや業務システムなどでできるイメージ)、エンジニアでなくても自動化できる点が特徴です。
AI(Artificial Intelligence)
AIはRPAと並んでよく聞くキーワードかと思います。よくこれらを混同してしまうケースが多いのですが、AIは学習ベース、RPAはルールベースのテクノロジーです。ルールが決まっておらず自分で判断をする必要がある場合にはAI、ルールが決まっている場合はRPAと覚えておいてください。
次回の記事では、より実践的な自動化の仕方についてお伝えをします。