少額備品・消耗品・固定資産の線引きを徹底解説|いくらから?品目ごと?

今回の記事では「消耗品」「備品」「固定資産」についてみていきます。消耗品と備品、そして備品と固定資産は判断基準を知っていないと区別することが難しく「これはどっちだっけ?」とわからなくなってしまいがち。

この記事ではそれぞれどのようなものが該当するのか、他とどう違うのか、またどのように処理すべきなのかについてみていきます。

 

どこで科目を判断すべき?ー耐用年数と金額が判断基準

物を購入したとき「消耗品」「備品」「固定資産」のうち、どの科目に支払額を計上するべきかどうやって判断をすればいいのでしょうか?

その答えは「耐用年数」「金額」にあります。「消耗品」「備品」「固定資産」の3つは耐用年数と金額によって判断をすることが可能です。(ここで言う耐用年数とは法定耐用年数のことではなく、実際にどのくらい使用可能なのかという期間のこと)

消耗品は安くてすぐに使い終わり、備品は消耗品より高くて耐久性がある。そして固定資産は備品よりも高くてより長い年月使うことができる。「消耗品」「備品」「固定資産」の3つを簡単にイメージ化するとこのような区別になります。

ここから先ではこの3つのより具体的な耐用年数・金額の基準をみていきましょう。

消耗品・備品・固定資産の判断基準と経理処理

この章では「消耗品」「備品」「固定資産」の判断基準となる耐用年数・金額をより具体的に解説していきます。合わせてそれぞれの経理処理の方法についてもみていきましょう。

消耗品:耐用年数が1年未満または取得価額が10万円未満

消耗品には耐用年数が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものが該当します。耐用年数が1年未満かつ取得価額が10万円未満のものも対象です。

具体的には帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどが相当し、費用(税務上は損金)として計上可能です。そのため、取得した事業年度に全額費用化することができます。

 

備品(一括償却資産):取得価額が10万円以上20万円未満

一括償却資産は取得価額が10万円以上20万円未満、耐用年数が1年以上のものです。パソコンや机、棚など幅広いものが該当します。

会計処理の方法は固定資産よりも簡単です。固定資産のように個別に減価償却をせず、使用を開始した年から3年間にわたり、毎年同じ額を償却していきます。その年に一括償却資産に計上した資産の取得価額の合計額の3分の1を必要経費に計上でき、備品の品目ごとに管理する必要はありません。

また、一括償却資産として処理した場合は、償却資産税の申告の対象資産に含めなくてよいとされています。そのため、償却資産税の負担が少なくなるというメリットがあります。

償却資産税についてはこちらの記事にまとめられています。

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中小企業が対象:少額減価償却資産

常時使用する従業員が1,000人以下の中小企業や農業協同組合等は「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を利用することができます。

この特例は中小企業者等にのみ認められた特例で、取得価額が30万円未満の資産については使用を開始した年に全額経費に計上することができるというもの。該当する資産のことを少額減価償却資産と言います。少額減価償却資産の処理を適用できるのは取得価額の合計額が年間300万円までです。

取得価額が30万円未満の資産を取得する際、一括償却資産にするのか少額減価償却資産にするのかの判断は企業に一任されています。

そのため、中小企業が10万円以上30万円未満の資産を取得したときは次のような処理が選択可能です。

・固定資産とし、法定耐用年数にわたって減価償却を行う
・一括償却資産とし、3年間にわたって減価償却を行う(20万円未満まで)
・少額減価償却資産の特例を適用し、一括で損金算入する

どのような会計処理を選択するのかは資産ごとに判断することが可能です。中小企業であれば、複数の10万円以上30万円未満の資産について、一部を一括償却資産または固定資産とし、残りの資産には少額減価償却資産の特例を適用することもできます。

参考:国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
参考:国税庁|No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示

 

固定資産:取得価額が20万円以上

取得価額が20万円以上の資産を購入した場合は固定資産となります。基本的に1年以上の耐用年数があり、建物や機械、車などが対象です。

固定資産は消耗品や備品に比べて会計処理が複雑になります。取得時に「固定資産」として資産計上を行い、かつ法定耐用年数に応じて減価償却が必要となるからです。消耗品・備品に比べて費用化までに長い時間が必要となります。

減価償却の詳細につきましては下記をご参照ください。

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判断基準の一覧

これまでに見てきたことをまとめるとこのようになります。

消耗品:耐用年数が1年未満で取得価額が10万円未満
備品(一括償却資産):耐用年数が1年以上で取得価額が10万円以上20万円未満
固定資産:耐用年数が1年以上で取得価額が20万円以上

【中小企業の特例を適用できる会社のみ】
消耗品:耐用年数が1年未満で取得価額が10万円未満
備品(一括償却資産):耐用年数が1年以上で取得価額が10万円以上20万円未満
少額減価償却資産:耐用年数が1年以上で取得価額が10万円以上30万円未満
固定資産:耐用年数が1年以上で取得価額が20万円以上

 

まとめ

「消耗品」「備品」「固定資産」は取得時の「耐用年数」と「金額」により、その区分や処理が異なってきます。

特に、中小企業における「備品」の取扱いは企業ごとに違っています。その理由は中小企業は「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を利用することができるため。

この特例を利用すると、取得価額が少額(10万円以上30万円未満)の固定資産を取得した際、取得時に全額を損金参入することができます。

どの処理を採用するかにより、その期に経費に計上できる金額が変わってきます。その結果は納税額にも影響が。複数の会計処理の中から金額を比較し、自社にとって一番有利な処理を選択することが重要です。

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