近年、急速にRPAに注目が集まっている社会的背景には次の3点が挙げられます。
- 日本における労働環境の変化
- デジタルデータの周辺環境の変化
- RPA技術の高度化
1.日本における労働環境の変化
RPAに注目が集まっている最大の理由は生産年齢人口の減少による慢性的な人材不足への備えです。日本は2060年には、国民の約2.5人に1人が65歳以上の高齢者になるという、世界でも類を見ない超高齢化社会を迎えようとしています。具体的には、日本政府は『平成28年版高齢社会白書』において、15歳以上65歳未満の人口層を指す生産年齢人口は2015年から2060年にかけておよそ3290万人減少していくと予測しているのです。
これまで企業の多くの場面で活用されてきたアウトソーシングや派遣社員は、その業務を担当する人材がいて初めて成立するものであるため、超人材不足時代に突入してからも安定してアウトソーシングを活用できる保証はどこにもありません。
また、現在の政府の方針により「働き方改革」が叫ばれるようになり「何でこんなことに手間ひまかけなければならないのだろう?」と思える雑務を徹底的にそぎ落とし、現行の生産性を少しでも高める努力が企業には欠かせなくなってきました。このような現状の課題に対し、RPAの強みである
- 『絶対に自ら辞めない』
- 『24時間365日働き続けられる』
- 『同じ失敗を繰り返さない』
- 『ノンプラミングによる業務やオペレーションの自動化が可能』
などの性質を、業務システム向けRPAツールやRPAソリューションを提供する企業が積極的にアピールしたことにより、アウトソーシング(外部委託)や派遣社員に変わる新しい業務パートナーとしてRPAに注目が集まるようになったのです。
2.デジタルデータの周辺環境の変化
契約書類や会議資料など、これまで紙媒体として扱われることが多かった情報が、多くの組織で次々にデジタル化されていることもRPAが注目を集める一因です。ITインフラの普及やクラウドシステムの登場、またパソコンをはじめとする情報通信機器や大容量メディアの低価格化など、中小企業でもデジタルデータを扱いやすい環境が整備されたことによって、RPAの活躍機会が一気に拡大したと言えます。
3.RPA技術の高度化
RPAには次の3つのクラスが存在します。
クラス1:RPA(Robotic Process Automation)
- 定型業務を的確にこなす
- 複数アプリケーションの連携を必要とする単純作業が得意
クラス2:EPA(Enhanced Process Automation)
- 非構造化データ(※)を扱う作業のシステム化が得意
- RPAが苦手としていた非定型業務を任せることが可能
※紙媒体によるアンケート用紙の集計や自由記述式による問い合わせ内容など
クラス3:CA(Cognitive Automation)
- 情報の整理や分析だけではなく意思決定まで行うことが可能
- 作業プロセスの分析や評価、改善方法の検討、再実施なども可能
このクラス2となるEPAが誕生したことにより、決められたルールに則ってデジタルデータを処理するだけではなく、紙媒体などの手書き文書を正しく読み取り、デジタル化した上で処理を行い、予め用意された複数の対処方法から適切なものを選択して実行できるようになったことで、RPAの対象業務範囲は一気に拡大し、多くの需要が発生しました。