減価償却費の主な計算方法を解説!定額法or定率法、どっちがいい?

今回は減価償却費の計算方法をご紹介します。

減価償却費の計算方法はいくつかありますが、その中でも一般的に利用されているのは定額法・定率法の2つになります。

この記事では定額法・定率法の計算方法について、実際の例をもとにみていきます。

減価償却費の計算方法ー定額法・定率法・級数法・生産高比例法

減価償却費の計算方法には主に、定額法・定率法・級数法・生産高比例法などがあります。

定額法とは、毎期一定(定額)の減価償却費を計上する方法です。いつも同じ金額を減価償却費として計上します。

定率法はその時点の資産の帳簿価額に償却率をかけて減価償却費を算出します。そのため、償却初年度の償却費が高く、使用年数が進むにつれ償却費が減少していく点が特徴的です。

級数法は、主に車両等の減価償却費計算で用いられる方法です。取得価額を総走行可能距離で除し、当期の走行距離をかけることで求めます。

生産高比例法は主に採掘等で用いられ、取得価額を見積もりの採掘量で割り、実際の採掘量をかけることで求めます。

一般的に利用されているのは定額法と定率法の2つ

上記4つの算出方法のうち、級数法は税法上法定の償却方法とは認められていません。そのため、実務で使用している会社はあまりないでしょう。

また、生産高比例法は主に鉄鋼業や石油鉱業で使われている償却方法。関連のある業界に勤めている方以外は利用する機会がありません。

そのため、一般的な事業形態の会社では定額法・定率法のどちらかが適用されていることがほとんど。ここから先では、この2つの算出方法について具体的にみていきます。

 

定額法

定額法では毎期定額の減価償却費が計上されます。会計上は資産の取得価額を耐用年数で割って算出します。

しかし、税務上は資産の取得価額に法定償却率をかけて算出した償却限度額(=減価償却できる上限額)をもとに計算をします。資産ごとの償却率は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」にて確認することができます。償却率は資産の取得年度によって異なっていますので、必ず最新の情報を確認してください。
参考:e-GOV法令検索|減価償却資産の耐用年数等に関する省令

定額法:減価償却費の計算式

会計上の計算方法
減価償却費=取得価額÷耐用年数

税法上の計算方法
償却限度額=取得価額×法定償却率

 

定額法で減価償却費を計算してみよう

例)取得価額100万円の設備について、定額法を選定して減価償却を行う。

  耐用年数5年、法定償却率0.200であった場合。

 

会計上の減価償却費の計算では
100万円÷5年=20万円
となり、4年間にわたって毎年20万円ずつ減価償却費を計上することになります。

税法上の償却限度額
100万円×0.200=20万円

よって、20万円まで損金経理可能となります。1~4年目までは毎年20万円を減価償却費として計上します。

なお、税制改正に伴い、平成19年4月1日以降に取得した減価償却資産は簿価1円まで償却できることになりました。そのため、5年目には簿価1円を残す必要があり、199,999円が減価償却費・償却限度額となります。(平成19年4月1日以前に取得した資産の場合は残存価額を控除して計算する必要があります)

参考:国税庁|No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)

 

定率法

まずは定率法の会計上の計算方法についてです。

資産を取得した初年度は、資産の取得価額に償却率をかけて減価償却費を算出します。償却率は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」にて定められています。

翌年以降は帳簿価額(取得価額-減価償却累計額)に償却率をかけて減価償却費を計算します。そのため、初年度の減価償却費が高く計算され、以降毎期の減価償却費は減少していきます。

このことから、パソコンや電子機器など次々と性能の良い製品が販売され既存の製品の価値が年々下がっていくような資産の場合、定額法より定率法を適用した方がその実態に合った償却ができると考えられます。

 

また、税務上も事業供用開始年に多くの経費を損金算入できます。

税務上は、事業供用1年目に取得価額に償却率をかけた金額を償却限度額とします。2年目以降は、期首帳簿価額に償却率をかけた金額を償却限度額として減価償却。

その後、償却限度額が償却保証額に満たなくなった場合、改定取得価額に改定償却率をかけた金額を償却限度額とて減価償却費を計算します。

償却保証額とは、資産の取得価額に当該資産の耐用年数に応じた保証率をかけた金額のこと。また、改定取得価額とは、償却限度額が初めて償却保証額に満たなくなる年の期首未償却残高を指します。

改定償却率・保証率はともに「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」にて定められています。ここまでみてきた通り、定率法の計算にはさまざまな数値を「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」を元に調べて行う必要があります。

定率法:減価償却費の計算式

会計上の計算方法
減価償却費=帳簿価額×償却率

税法上の計算方法
償却限度額=未償却残高×償却率
【償却限度額が償却保証額に満たなくなった場合】償却限度額=改定取得価額×改定償却率

 

定率法で減価償却費を計算してみよう

例)取得価額100万円の設備について、定率法を選定して減価償却を行う。

  耐用年数6年、定率法償却率0.417、保証率0.05776、改定償却率0.500であった場合。

 

会計上の計算方法
1年目:100万円×0.417=417,000円
2年目:(100万円-417,000円)×0.417=243,111円

 

税法上の償却限度額
1年目:償却限度額 100万円×0.417=417,000円
償却保証額 100万円×0.05776=57,760円
償却限度額>償却保証額のため、417,000円が損金算入限度額となります。

2年目:(100万円-417,000円)×0.417=243,111円
償却限度額>償却保証額のため、243,111円が損金算入限度額となります。

3年目:(100万円-417,000円-243,111円)×0.417=141,733円
償却限度額>償却保証額のため、141,733円が損金算入限度額となります。

4年目:(100万円-417,000円-243,111円-141,733)×0.417=82,631円
償却限度額>償却保証額のため、82,631円が損金算入限度額となります。

5年目:(100万円-417,000円-243,111円-141,733円-82,631円)×0.417=48,173円
償却限度額<償却保証額となるため、改定償却率を用います。
(100万円-417,000円-243,111円-141,733円-82,631円)×0.500=57,763円

よって57,763円が5年目の損金算入限度額(=減価償却費)となります。なお、法定耐用年数の最終年度となる6年目は定額法と同じく簿価を1円を残す必要があります。そのため、57,763円-1円=57,762円が償却限度額となります。

参考:国税庁|No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)

 

定額法と定率法、どちらを使うべき?

減価償却の計算方法として、定額法と定率法が一般的なことがわかりました。ではこの2つのうち、どちらを選べばいいのでしょうか?

下記4つに該当する資産については、定額法を適用することが税法にて定められています。
・建物
・建物付属設備及び構築物
・無形固定資産
・生物

上記以外の資産については、原則的に法人は定率法、個人は定額法が適用になります。原則以外の償却方法を選択する場合は、事前に税務署に届け出る必要があります。

中古資産の場合は新品と計算方法が変わってくる

中古資産を取得した場合は、新品を取得したときとは耐用年数の算出方法が異なってきます。上記でご紹介の方法は新品の場合に該当します。中古資産の減価償却についてはこちらの記事を参考にしてください。

関連記事

事業に必要なものを購入するとき、新品ではなく中古品を選ぶこともあります。中古車がその代表的な例です。 このような場合、その中古資産の耐用年数はどのように決めればいいのでしょうか?今回は中古資産の耐用年数の決め方を実際の計算例も含めてみ[…]

 

まとめ

減価償却では定額法・定率法を使って減価償却費を算出することが一般的。定額法は毎年定額の額を、定率法は年々少なくなる額を減価償却費として計上します。

定額法と定率法、どちらを使うかは原則的に決められています。原則以外の方法を利用する場合は、事前に税務署へ申請を行う必要があります。忘れないように注意しましょう。

請求書の受け取りはsweeepで自動化

【AI請求書処理】従来の請求書OCRでは対応できない非定型帳票や

自動会計仕訳も、sweeepなら対応可能!最短で即日導入、

面倒な設定不要。手軽に導入して請求業務を効率化。