今回は「青色申告の帳簿のつけ方」で触れた現金主義・発生主義・実現主義について詳しくご紹介します。
現金主義・発生主義・実現主義とは、それぞれ古くからある会計学の概念で、費用・収益をどの時点で計上するか、という考え方を示した概念です。
決算または申告にあたっては、一会計期間の収益から費用を差し引いて、利益(損失)を計算する必要があります。そこで、計算の基となる収益・費用はどの時点で計上(認識)すべきかを明らかにする必要があります。その原則的な基準となるのが上記の概念です。現行の制度会計では、費用の計上は発生主義、収益の計上は実現主義、の考え方をとっています。
それでは、それぞれの内容を見ていきましょう。
1.現金主義とは
まず、現金主義についてですが、これは、収益と費用をそれぞれ現金の受領・支払いの時点で認識する考え方をいいます。一見シンプルで分かりやすい基準なのですが、商売が膨らんだ際の掛けによる信用取引について対応ができないため、現行の企業会計では用いられていません。但し、税務会計では白色申告において同様の処理が認められています。
2.発生主義とは
次いで、費用の認識基準となる発生主義ですが、これは費用を現金支出の時点ではなく、財またはサービスが費消された (費用が発生した) 時点で計上することをいいます。
例えば、光熱費や家賃。通常、光熱費は使った月の翌月に支払いがあると思います。れを現金主義で捉えれば、支払いのある月に光熱費という費用が認識されます。一方、発生主義では、支払月ではなく使用した月に費用が認識されます。
家賃については、通常前月までに支払いますので、現金主義であれば前月に家賃という費用が認識され、発生主義であれば、当月に(7月分家賃であれば7月になってから)費用として認識されます。
3.実現主義とは
最後に、収益の認識基準となる実現主義ですが、これは収益を、財またはサービスを提供し、現金または現金同等物を取得した時期に認識することをいいます。上述の発生主義と現金主義が合わさったような概念といえます。
実現主義によれば、押し売りのように商品を送り付けただけで売上を計上することはルール違反となりますし、現金や現金同等物を受け取ったからといって何もしていないのに売上を計上することも出来ません。きちんと商品の販売・サービスを提供し、その対価として代金を回収した時点で売上が計上できる、という事になります。
財またはサービスを提供したと認められる段階は、商品の販売の場合、出荷した時点で計上を認める出荷基準、相手方に到達した時点で計上を認める納品基準、相手方の検収が完了した時点で計上を認める検収基準等が主なものとしてあります。